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英雄達26

「ええ。と言いましても、そのものの魔法を纏めるのではなく、同じ効果を持つ別の魔法を組み込むのですが」

「なるほど。しかし、そんな都合の良い魔法があるのですか?」

 寒暖差に騒音対策。それら全てを賄う魔法というのは何だろうかと、ヒヅキは女性に問いながら考えてみる。しかし、答えは出ない。

「ありますよ。ついでにある程度強度のある防御結界にもなる魔法です」

「ほぅ、それは凄い。それで、それほど色々と効果のある魔法というのはどんな魔法なのですか?」

「風の魔法です」

「風の魔法ですか?」

 女性の返答に、ヒヅキは知識にある風の魔法について探ってみる。しかし、魔法について初歩的な部分しか知らないヒヅキの知識では、その答えに辿り着けそうもない。

「ええ。周囲に風の膜を張るとでも言えばいいでしょうか。それにより外部と内部を遮断。それに伴い、外界の温度や音も遮られるという事です。攻撃についてもある程度は防いでくれるので便利ですよ。ただまぁ音が遮られるので、誰かと行動する場合は会話が出来ませんが」

「なるほど」

「ああそれと、水も弾くので雨の日にも便利ですよ。泥濘に嵌っても大丈夫ですからね」

「それは便利なものですね」

 そもそもヒヅキは移動中にほとんど喋らないし、現在一緒に旅をしている女性も同じだ。であれば、欠点よりも利点の方が大きいような気がしてくる。ただ、それでも会話が必要な時は魔法を切る必要があるというのは考えものだ。その間は外気温がそのまま伝わってくるのだから。

「欠点の方は、流す魔力量を減らすことで今のヒヅキの魔法みたいな感じで運用も可能ですよ」

 ヒヅキの懸念を理解した女性はそう説明する。しかし、環境が厳しくなるとそれでも厳しい。現に今でヒヅキはギリギリといったところ。

 そこを考えると、利点が一気に霞むような思いがしてくる。これが一人旅であれば問題ないのだが。

 そうしてヒヅキが悩んでいると、女性が解決策を提示してくれる。

「でしたら、人の声だけは内部に届くようにしますか?」

「そんな事が可能なのですか?」

「少々難しいですが可能です。ただそうすると、多少大きめでないと無理ですので、渡した装飾品の中では腕輪にしか組み込めませんが」

「そうなのですね」

 音に関しては人の声さえ届けば問題ない。ヒヅキには気配察知や感知魔法があるのだから。

 それとは別に、腕輪の用途が決まってしまうというのは少し考えてしまう。腕輪は女性が作った装飾品の中でも最も大きいので、その分複雑な魔法が組み込めるようになるのだ。

 複雑な魔法という事は、それは上位の魔法という事。攻撃魔法では威力がより高かったり、防御魔法だと護りがより固かったりなどするので、そう簡単に決められるものではない。

 転移魔法もその部類に入るので、人の声を通すだけでかなり複雑な陣になるということだ。どうしようかと考えるも、代案は自力で解決するか、複数の魔法道具で元々組み込む予定だった魔法を組み込むかぐらいだろう。

 自力で解決するのは直ぐには難しいので、残す案は複数の装飾品を使って魔法道具を作る事になる。

 腕輪を使うか、複数個の装飾品を使うか。質か数かどちらを選ぶべきかと、ヒヅキは悩んでいく。

 しばらく悩んだ後、ヒヅキは取り出した腕輪を女性に渡して魔法道具作製を依頼する。おしくはあるが、必要な魔法だと判断したのだろう。

 腕輪を受け取った女性は、1度ヒヅキに魔法を組み込むことの確認を行った後、さっさと魔法を刻んでいく。

 その様子を眺めながら、ヒヅキはなるほどと呟いた。全ての職人が女性と同じ方法を採っている訳ではないだろうが、それでも初めて見た魔法道具作りに、ヒヅキは少しだけ感動していた。

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