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英雄達23

 そんな相手との戦闘を想定するならば、この階段の段差は幅も奥行きも狭い。という事は、ここは避難場所も兼ねているのかもしれない。両側にそびえ立つ絶壁は、下手な城壁よりも頑丈そうだ。

 そう思ったところで気になり、ヒヅキは階段を上りながら壁際に寄って触ってみる。

 手触りとしては土が固まったような感じだが、それでもそこまでザラザラとはしていない。触れていると何処かホッとするような安心感を覚える頑丈さを感じた。

 反対側も確かめてみたが、似たようなもの。ここであれば籠城も出来るかもしれない。

(上から攻撃されなければ、だけれども)

 顔を上げて空を見たヒヅキは、狭い空にそう思う。いくら左右に頑丈な壁があるとはいえ、ここには天井が無い。空との視界を遮る物がない以上、上から石を落とすだけでも下の者は大変そうだ。

 それに魔法という存在も在る。ヒヅキは龍という存在がどんなものかは知らないが、神の攻撃に抗えるのだ、魔法のひとつやふたつ使えても不思議ではない。

 そう思えば、例えば上から水を流されたら、現在居る場所など低い位置に在るので直ぐに水没してしまう。

 他にも火で中を焼き尽くすとか土で埋めるなど、考えればいくらでも出てくる。なので、ここも安全とは言い辛そうだ。

(あの転移魔法陣はこちらからでも起動するのだろうか?)

 一方通行の魔法陣というのも存在しているので、あちら側からこちら側に移動出来たからといって、こちら側からあちら側に移動出来るとは限らない。

 こんな場所だ、入り口と出口が異なっていても何ら不思議でもない。それでいて、転移先の向こう側が同じ場所だったとしても驚きはしないだろう。

 なので、ヒヅキとしては転移魔法陣がこちら側から起動するのかどうかは興味があった。といっても、必要かどうかでいえば、龍すら敵ではないだろうヒヅキ達にとってはどちらでもいい話なのだが。それに、出口も女性が知っているだろう。

 何処までも真っ直ぐ伸びている階段を進みながら、ヒヅキはあれやこれやと思案する。その集中が途切れた辺りで、再度周囲に目を向ける。相変わらず何処までも似たような光景が続く。

(もう結構進んでいるはずだが、あの崖は一体どれだけの長さがあるというのか)

 そこらの連峰なんて目じゃない距離を進んでいるような気がして、ヒヅキは外からでも先の見えなかった崖の果てに思いを馳せる。視線の先にも、霞むほど真っ直ぐに伸びている階段。そんな光景を眺めていると、もしや世界の端から端まで横断しているのではないか。不意にそんな考えが浮かぶほど。

 それに何処まで上ればいいのだろうかとも思う。気づけば周囲は暗い。現在地は雲より上だとは思うが、それでも日が沈めば暗いらしい。

 それから、再度日が昇って周囲が明るくなっても歩み続ける二人。今見ている方角は正確には解らないが、左右の壁のどちらかが無ければ、もしかしたら日の出が拝めたかもしれない。

 ヒヅキが明るくなってきた周囲にそう思ったところで、遠くの方でグゥオという重々しい音が轟いた。

「今のは?」

 風の音のようにも何かの呻き声のようにも思えるそれに、ヒヅキは女性に声を掛けた。とはいえ、何となく予想はつくが。

「龍の声ですね。今から何か狩りにでも行くのでしょう」

「なるほど。大分近くなりましたが、それでもまだ距離がありそうですね」

「そうですね。龍の巣まではもう少し掛かりそうですね。小さいのでしたらそこまで離れてはいませんが、そこに行くにはこの壁を越えなければいけません」

「ああいえ、そこまでして見たい訳ではないので」

「そうですか?」

「はい」

 とりあえず聞いただけなのだろう。それだけ言うと、女性は口を閉ざす。

 ヒヅキは習って間もない寒さを軽減する魔法を行使しながら、そんな女性の後に付いていく。

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