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小休止2

 アイリスと共にガーデンの街へと買い物に繰り出したヒヅキは、まず目抜通りへと足を運んでいた。

「わぁ、相変わらずここは賑やかですわねー」

 広い道を埋め尽くす人波を眺め、アイリスは目を輝かせて感心したような声を出す。

 しかし、そんなアイリスとは対照的に、ヒヅキはこれからその人混みに足を踏み入れることを考えて、既にげんなりとしていた。というより、目抜通りの入り口から少し離れた場所に居る今でも、周囲には沢山の人が往き来していて、ヒヅキは今すぐにでも帰りたくなったのだが、本日のアイリスのお供はヒヅキだけの為に、そういう訳にもいかなかった。

「さぁ、行きましょう!」

 アイリスはヒヅキの手をしっかりと掴むと、半ば強引に引きずるようにして人混みの中へと入っていく。

 今までは常に人混みを避けていたヒヅキにとって、前回アイリスの買い物に付き合った時以上に人が(ひし)めきあう中を突き進むというのは、未知の体験であった。

 前回はガーデンの端の方の店を中心に回っていたので、人混みといっても、せいぜいが店前に少し人が溢れているぐらいであった。

 故に、どこを向いても間近に人が迫り、どんな体勢で移動しようとも人と接触してしまう現状は、ヒヅキにとって苦行のようで、出来ることなら今すぐにでもこの場所から逃げ出したかった。

 それを見越してという訳ではないのだろうが、逃がさぬとばかりにアイリスに手を引かれたまま最初に着いた場所は、一件の小洒落た雑貨屋であった。

 少し細めの丸太を幾重にも組み上げて造られたその店の佇まいは、まるで山小屋をそのまま持ってきたかのようで、店内に入ると、まだ新しい木の香りが鼻を擽り、少し落ち着いた気分になれる。

 ヒヅキは、その香りを体内に取り込んで少し落ち着いたところで店内を見渡す。

 十人でも入れば窮屈そうな広さの店内には、まず入り口近くに会計の為の場所があり、そこには店員さんが一人立っていた。

 店中央と壁際には商品棚が設置され、そこに商品が整然と並べられている。

 その商品の数々を目にして、ヒヅキはこの雑貨屋が少々専門性が高いという事を理解する。

 店内の商品の大半は、手のひらサイズから赤ちゃんぐらいの大きさまでの、様々な人形であった。

 アイリスはその商品を一通り眺めただけで満足したのか、一度も人形を手に取ることもせずに店を後にする。

 アイリスは店を出る前にヒヅキの手を掴むと、そのまま再度人混みの中へと入り込み、流れに乗って次に進みだした。

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