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英雄達21

 ヒヅキは女性に続き階段を上っていく。

 壁を掘りだして階段にしたそれは、横向きであればすれ違えるぐらいの横幅は在り、奥行きもギリギリ足がはみ出ないぐらいは在る。

 それでも片面を壁に接しているというのは妙な圧迫感があるもので、自然と壁から離れるように足が動く。しかし、そちらはそちら側で吹き抜けになっているので、階段を上れば上るほどに床が離れていく。

 幸い、と言っていいのかは微妙なところではあるが、暗いので直ぐに床が見えなくなりはしたが。とはいえ、柵などの落下防止の物は何も無いので、気をつけなければならない事には変わりないが。

 円柱形の空間をぐるぐると大きく螺旋を描きながら、上へと上へと進んでいく。どれだけ階段を上ろうとも上に薄っすらと見える光は遥かに遠く、どうにもそれが頂上へと近づいているのかどうか不安を煽る。

 それでもヒヅキは、女性の後に続いて粛々と階段を上っていく。

 最近はスキアやら魔物やらを警戒してばかりであったけれども、ここはそういった存在とは無縁のようだ。もっとも、それで警戒を怠る事はないが、気持ち的には楽であった。

 それからどれぐらいの時間階段を上っただろうか。

 ヒヅキが浮かべている光球以外に光源の無い中、ひたすらに階段を上り続けると、上部に見えていた光も大分はっきりと見えてきた。

 それでもそれが何かまでは見えないので、まだまだ階段は続きそうだ。崖の高さを思えば、この程度まだまだだとは思いはするが。

 ぐるぐるぐるぐる。円周が大きい為に緩やかながらも、ぐるぐるぐるぐると螺旋を描きながら階段を上る。外界と隔てられているので、今が朝なのか夜なのかも分からない。

 途中、1度だけヒヅキを気遣った女性が休憩を提案したので、それぞれ足下の段に腰を下ろして休憩した。

 そんなこんなで大分上まで階段を上ってきたヒヅキは、とうとう上部に輝いていた光の正体を視界に映す。

「あれは…………虫?」

 上部で光っていたのは、大きな半球状の甲殻に覆われた虫のような何か。その甲殻が光っており、甲殻の下部には小さな脚が無数に確認出来る。

 見た限りでは、やはり虫だろう。生理的嫌悪を抱きそうな無数の脚が、時折波打つように動いている。しかし、ヒヅキはそんな虫を知らない。

 そもそも一向に動く気配がないが、本当に生きているのだろうか。いや、脚が動いているので死んではいないと思うが。

 そんなヒヅキの呟きを拾った女性は、ヒヅキの方を見た後に上部の光に目を向ける。それで疑問について理解した女性は、視線をヒヅキに戻した。

「あれは光虫ですね」

「光虫? 聞いたことのない虫です」

「まぁ、昔に絶滅してますからね。あれも正確には光虫の化石のようですし」

「……動いているように見えるのですが?」

「脚の部分は別の何かですからね」

「別の何か?」

 何だかとても気味の悪いその響きに、ヒヅキはつい復唱してしまう。それに女性は頷いて視線を光虫の方に向ける。

「ここが作られた時代の技術ですね。私も詳しくは知りませんが、あれは光虫の化石を背に乗せて、あの場所に張り付いているだけですよ」

「光虫の化石が光っているのは?」

「光虫の甲殻は、壊れない限りどのような状態でも光るのですよ。勿論化石になっていても」

「それは凄いですね。でも、何故あの場所に?」

 強い光というほどの光量でもないので、少し階段を下りただけで足下が怪しくなるほど。大きさだけは大したものだが。

「あれでこの階段の終点を報せているのでしょう。頂上にはまだ遠いですが、この階段では途中までしか行けませんからね」

「なるほど」

 女性の言葉に、ヒヅキは頷く。もしもこのまま頂上に辿り着ければ非常に楽ではあったが、それでは女性の話にあった龍の巣とやらは通らない事になるので、そう上手い話もないという事だろう。

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