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英雄達19

「ほら、あの白い城が建っていたではないですか」

「ガーデナー城ですか? 確かに在りましたが」

 カーディニア王国の首都ガーデンは、白亜の城ガーデナーを中心に築かれた都市。なので、女性の言うガーデンに建つ白い城というのは、ガーデナー城で間違いないだろう。そう思い、ヒヅキは頭の中にガーデナー城の偉容を思い浮かべる。

 そうして思い出してみるも、記憶は既に朧気で、あまりはっきりとは思い出せない。それでも、真っ白な外観が美しかったのだけは何となく覚えていた。

「あの城に施されていた防御魔法のひとつに大魔法が在ったのですよ」

「大魔法ですか?」

「数名で執り行う魔法の総称です。更に人数が増えると大規模魔法と呼ばれます。一般的にこの大規模魔法を儀式魔法と呼びますが、魔法を専門に研究している人によりますと、大規模魔法よりさらに規模が大きくなったのが儀式魔法らしいですよ。まぁ、儀式魔法は主に神にまつわる魔法に際して呼ばれることが多かったですが」

「そうなんですね」

 初めて聞く話に、ヒヅキは興味深げに頷いた。ヒヅキにとって魔法とは、個人で現出させる魔法か、魔力回路を組み込んだ魔法道具、それか陣を描いた魔法ぐらい。

 因みに、地面などに陣を描いて発現させる魔法を原初魔法と呼ぶ魔法使いもいた。それは陣を描いて発現させる魔法が最初の魔法だったという話があるから。

 そういう訳で、ヒヅキは大魔法以上の話を知らなかった。そもそも複数名で魔法を現出させるというのを初めて聞いた話。

 そんなヒヅキを見た女性は、一瞬思案げに視線を動かした後、話を続ける。

「あの城に施されていた魔法の中には、その大魔法が含まれていました。幾分か古くて効力が弱まっていましたが、それでもこの時代のモノであるのは確実です。そもそもあの城自体が今代に築かれている訳ですから」

「それはまぁ、確かに」

 女性の言葉に、ヒヅキはガーデナー城の歴史を思い出しつつ頷く。カーディニア王国は人間の国の中でもそれなりに歴史があるといっても、1000年も2000年も続いている訳ではない。精々が数100年ほどだ。そこからガーデナー城のみに焦点を当てると、更に期間は短くなる。ヒヅキの曖昧な記憶が正しければ、現在のガーデナー城は何10年か前に1度建て直されていた。

 それを踏まえて考えると、女性の言う大魔法とやらを施した存在は存命している可能性も無いとは言い切れないだろう。人間の寿命は50年程と言われているが個人差があるし、比較的裕福な者が多い魔法使いともなると、その寿命は更に延びる。

「ですので、今代にも大魔法程度は受け継がれているはずですよ。もっとも、大分粗い魔法でしたが」

「なるほど。完全には継承されていないのでしょうね」

「それか人間では難しかったか、でしょうか」

 人間は魔法に対する適性がそこまで高くはない。獣人のように稀に適性がある者が居るという程度に低い訳ではないが、エルフのように誰もが使えるというほどに高い訳でもない。生活魔法と人間が呼んでいる弱い魔法であれば、街でも使える者は比較的見かけるが、人力以上の結果を出せるような魔法ともなるとそれも一気に減る。

 なので、ガーデナー城に魔法を施したのが人間であれば、女性が指摘した完全なる継承が叶わなかったという可能性も十分にあった。

「とにかく、粗雑な魔法でも大魔法はまだ存在しているという事ですね」

「そうなりますね」

「それで、あの魔法道具に組み込まれている陣は、その大魔法を発展させていった先に在る儀式魔法でもって神を経由する事で組み込んだのでしょうね」

「なるほど」

「ああ因みにですが、大魔法は複数人の魔法を重ねて纏める魔法です。本みたいなモノですね。魔法ひとつひとつが紙で、合わさり纏まり本と成す」

「そうなんですね。しかし、それはそう上手いこと纏まるモノなのですか?」

「そこが奥義みたいなモノですからね。秘伝とかいって各派閥で密やかに受け継がれているらしいですよ。正直そんな大仰な部分でもないのですが」

 肩を竦めると、女性は参ったとでも言うように苦笑を浮かべた。

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