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英雄達17

 恐る恐るといった感じの手つきで触れた壁は、ざらざらとした感触を手に伝えるだけで通り抜けるような事はない。外の崖とは違うのか、触れても崩れるように削れる事はなかった。

 女性がここから顔を出した事を思えば、確かにもう通り抜けられなくなっているようだ。

 ヒヅキはそれを確認した後、女性の方に顔を向ける。

「確かに戻っているようですね。これはどうなっているのでしょうか?」

 詳しいし仕組みは不明ではあるが、魔法ではあるのだろう。もしかしたら魔法道具だろうかと考えたヒヅキは、とりあえず女性に尋ねてみた。

「その壁の部分だけ人工的に用意した物で、下にある仕掛けを起動すれば僅かな時間だけ幻影に変わるのです。分類としては魔法道具でしょうかね。少々特殊ではありますが」

「魔法道具……ふむ」

 女性の返答はヒヅキの予想を肯定するものではあったが、それでもヒヅキに少なくない驚きを与える。思わずもう1度壁に触れて魔力を通してみるほど。

 そうしてみると、なるほど魔法道具のようだと解る。ただし、本当に女性の言うように特殊なようで、ヒヅキでは完全には読み解けそうにはない。この壁だけでも魔法道具として成立しているのだが、それだけではないのは調べて何となく解った。もっとも、あくまで何となくでしかないが。

 後は先程の女性の話に、実際に見て感じた情報を合わせて考えると、下に在るという魔法道具と連動しているというのは解る。しかし、その仕組みがいまいち解らない。若干転移魔法陣に近しい陣があるので、それがもしかしたら似た系統のモノだろうと推測はするのだが、似ている部分はわずかなので自信は無い。

 それでもヒヅキの推論としては、下の魔法道具が起動すると、ここまで何かしらが飛んできてこの魔法道具を起動させるのだろう。というものだ。

 ヒヅキはそう思うのだが、今までの魔法道具とは異なるのでやはり自信は無い。

 あまり時間も掛けられないので少し調べただけで終えると、ヒヅキは女性の方を向く。このまま先に進んでも問題ないが、気になっているので女性にこの魔法道具について質問する。

 まずは先程調べて解った部分と、それから思い浮かべた推論を口にする。そのうえで不明な部分の質問を行った。

 女性は時折頷きつつそれを黙って聞いた後、説明を始める。

「ヒヅキの推論は大分合っていますよ。その魔法道具は下に設置されている起動の為の魔法道具と連動していまして、物質を転移させる場合に用いる魔法、所謂転移魔法と同じ働きをする魔法が組み込まれています。もっとも、こちらは物質ではなく起動の信号代わりに特定の魔力を送っていますので、魔力版の転移魔法といったところですか。当時の製作者たちは転送魔法と呼んでいたと記憶していますね。これを知る者は昔から多くはなかったので、呼んでいる者は少なかったですが。それはそれとしまして、その魔法道具の起動には、下の魔法道具を2つ起動させる必要があります。それも順番と時間が正しくないといけません」

「なるほど」

「この起動の為の魔法道具ですが、そこから転送されてくる魔力は特殊な魔力で2種類あり、そのどちらもが揃わないと起動しないのです。因みに、この魔法道具は個人で作るのはほぼ不可能です」

「個人では無理なのですか?」

「ええ。この魔法道具と言いますか、物質を一時的にでも幻に変化させる魔法がですね。これを個人で組むのは難しいのですよ。複雑すぎるというのもありますが、これを組もうとすると死んでしまいますので」

「はい?」

 突然のその言葉に、ヒヅキは眉根を寄せる。それは今までの話が急に胡散臭くなりそうな話であった。

「死んでしまうのですか?」

 なのでヒヅキは、確認を籠めて問い掛けてみる。

「ええ。調べたり書き記したりする分には問題ないようですが、陣を組もうとするとその者は亡くなってしまいます。陣を組まずとも、発現させようとするだけでも死んでしまいますが」

「……何故ですか?」

「それは何故死ぬのかですか? それとも死因ですか?」

「えっと、両方でお願いします」

「分かりました。死因は血が体内に溢れた事によるものです。原因は心臓が一時的に消失したから。何故そうなるのかは、遥か昔に神々が禁止したからと言われていますが、本当のところは不明です」

「なるほど。何故心臓が一時的に消失を?」

「その魔法道具と同じですよ。物質を幻に変える魔法を行使または陣として描こうとすると、直ぐに心臓が一時的に幻となってしまうようです。それ以外は変化がないので、心臓に送られていた血液が体内に溢れるという事です」

「………………」

 女性も止めなかったし、実際問題なかったとはいえ、それは何とも恐ろしいなと、直ぐに調べるという行動をとってしまった自分を振り返って思ったヒヅキは、ではこの壁の魔法道具はどうやってそれを組み込んだのだろうかと疑問に思った。

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