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英雄達16

 ヒヅキ達は崖のすぐ近くまで到着する。近くで見る巨大な崖は、壁という以外に言葉が出てこない。

 崖の表面は凹凸はあるが小さく、手足を掛けて崖を登るには些か心許ない。更に近づいてヒヅキが実際に触れてみると、ポロポロと表面が崩れていく。どうやら随分と脆いようで、これでは登る事は不可能だろう、

 上を見てみると、雲の中まで崖が消えていっていて果てが見えない。こんな凹凸が少なく脆い崖肌を直接見て登ると考える時点で、その者は頭がおかしいと思えてしまう。

 ヒヅキはどうするのかと女性の方へと顔を向ける。そもそも龍の巣さえ、この崖の何処に在るというのか。周囲を見渡してみてもそれらしい物は何もない。

 そんな事を考えながらヒヅキが向けた視線の先では、女性が背を向けて崖に沿うように更に進んでいる姿であった。

 何かを探すように崖と地面とに視線を彷徨わせながら歩いているので、移動速度はとても遅い。

 直ぐにその後に追いついたヒヅキが何をしているのかと女性に問えば。

「道を探しているのです」

 という答えが返ってきた。どうやら崖を登るという訳ではなさそうで、ひとまず安心といったところか。

 しかし、道など在るのだろうかと、ヒヅキは遠目に崖を見渡した時の光景を思い起こす。そこには垂直に立つ壁のような崖しかなかった。

 ただ、この場合は何処かに隠してあるとか、転移魔法陣でも設置されているのだろう。前回も含めた幾度もの遺跡探索でヒヅキはそれを学んでいた。

 なので、しばらく黙って女性に付いていくと、不意に女性が足を止める。道とやらを見つけたのかもしれない。

 そう思い、ヒヅキは女性の横から先の様子を確認してみるも、そこには今までと変わらない崖と地面があるだけ。少なくともヒヅキにはそう見えた。

 女性は足下を少しの間見つめた後、足先で地面を確かめるようにトントンと軽く叩く。そのまま少しずつ進んでは同様の方法で地面を調べる。

 そうして少しずつ進んでいたところで、不意にキンという澄んだ音が一瞬響く。ヒヅキは素早く周囲に目を向けた後に女性の足下に視線を向けるも、そこには変わらない地面が在るだけ。

 幻聴だったのだろうかとヒヅキは不思議そうな顔をしながら女性へと顔を向けると、今度は崖肌を指先で撫でていた。何かを探すように崖の表面を指でこするようにしている女性。それを眺めていると、再度先程と同じ澄んだ音が鳴り響く。

「これは一体……?」

 その正体不明の音にヒヅキが首を傾げると、今度は古い木戸でも開いたかのようなキィという小さな音が耳に届いた。

「あまり時間もありません。さぁ、行きましょうか」

 意味が解らず首を傾げているヒヅキを置いて、女性がそう告げてくる。

 ヒヅキはまだ状況が把握出来ていなかったが、女性が時間が無いというのであれば、おそらくそうなのだろう。そう思い、疑問は一旦横に措いて女性の後に続く事にした。

 それを確認した女性は、数歩進んで崖の方へと軽く跳ぶ。そうすると、女性は崖をすり抜けて中へ入ってしまう。

「こちらです」

 崖の中に入った女性が中から顔を出して大きく手招きする。その場所を確認したヒヅキは、女性が直ぐに顔を中に引っ込めた後にその場所目掛けて跳び上がった。

 そうすると、目的の場所に在った崖を通り抜けてするりと中に入る。崖の中は洞窟のように空洞になっていて、先に中に入っていた女性が待っていた。

「仕掛けを起動すると、そこの部分の崖が30秒ほど幻影に変わるのですよ」

 中に到着したヒヅキへと、女性がそう説明してくれる。

 その説明に振り返ったヒヅキは入ってきた部分を凝視するも、流石に違いは解らなかった。

「ああ、今はもう普通の崖に戻っているので、見ても解りませんよ」

 そんなヒヅキに女性はそう付け加える。

 ヒヅキは女性の方を一瞥した後、入ってきた場所に手を触れてみた。

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