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英雄達15

「そんなものですか?」

「ええ。龍と言ってもその程度です。言ってしまえば、神の力に対する抵抗力だけ他の生物より強いというぐらいで」

「なるほど」

 女性の言葉にヒヅキは頷く。であれば、スキアよりは強いぐらいだろうか。そんな推測をしながら移動していると、遠くの方で何かが飛んでいるのが見えた。

 まだまだ距離があるのでヒヅキの感知範囲外ではあるが、それだけの距離でも何かが飛んでいるのが分かるほどに大きいというのは、一体どれほどの大きさだろうかと思うと同時に、あれが龍だろうなと推測する。

 実際、ヒヅキの視線に気がついた女性が、それが龍であることを教えてくれた。

「……ああ、そういえば」

 それから黙々と移動していると、女性は何かを思い出したように小さく言葉を零す。その言葉には、やや警戒するような響きが混じっていた。

「どうかしましたか?」

 そのまま考えこむように口を閉じてしまった女性に、ヒヅキは気になって問い掛ける。龍や神殿以外にこの先に何かあるのかもしれないと、僅かに警戒して。

 しかし、それに女性は紛らわしかったかと謝るかのように小さく笑うと、問題ないと軽く首を振る。

「少し思い出しただけですので、お気になさらずに」

「何を、か窺っても?」

「ええ。これから向かう先には龍の巣と神殿以外にもうひとつあったなと思い出したのですが、それは既に居なくなっていました」

「居なくなる? 何かが棲んでいたのですか?」

「ええ。この付近に亜神……あのウィンディーネと同格の存在が棲んでいたのですよ。ほら、前に神の乗り物が見えた時に話したやつです」

「ああ。確か住処が騒がしくなったから移動するのだろうという?」

「ええ。どうやら探ってみると居なくなっていたので、心配はないでしょう。おそらく今向かっている目的地の更に先に在った町が滅んだのが関係していると思われますね」

「こんな場所に町が?」

「ええ。龍人という、龍どもが人と番って生まれた種族が暮らしていました。ここに居た亜神は、そこを中心にこの周辺を護っていたのですが、護る必要が無くなったので移住したのでしょう。おそらく次はもっと狭い範囲を守護するのでしょうね。……やっと身の程を知ったのでしょう」

「はい?」

「いえ、なんでも」

 ヒヅキにそう説明した女性は、最後に小さくそう付け加える。そこには隠しきれない軽蔑の響きが含まれていたが、声音が小さすぎてヒヅキの耳には届かなかった。もっとも、ヒヅキにとっては必要のない情報なので、聞こえようが聞こえまいがどちらでもいい事ではあったが。

「ああ因みに、竜人と龍人では見た目からして異なり、竜人はあの洞窟で見たような爬虫類に近い容姿をしておりますが、龍人はどちらかといえば人に近いです。身体能力的にも竜人は素早く、龍人は頑丈ですね」

「なるほど」

 そんな話を時折挿みながらしばらく進むと、先に垂直に切り立った崖が見えてくる。離れた場所からでも見渡す限りにそれが続いており、ヒヅキはここが世界の果てだろうかと思う。高さも雲の上まであり、全容は全く分からない。

「………………ああ、あれが神殿が建っているという場所ですか?」

 あまりの迫力に停止しかけた頭で思案したヒヅキは、おそらくそこが目的であろうと思い至り、女性に問い掛ける。

「ええ。あの上に神殿があります」

「…………こんな場所によく建てられましたね」

 雲の上まで続く垂直な崖には、建物が建てられそうな場所はない。それに女性の話では、この上に神殿は在るという話であった。それを思い出したヒヅキは引き攣りそうな口元を意思の力で抑え込み、そう感想を漏らす。

 実際、右も左も上も何処を見ても崖以外何も見当たらない。そんな圧倒的な場所なので、壁の何処かに横穴を掘ってそこに建てたといわれた方がまだ信憑性があっただろう。これが女性の言でなければ、ヒヅキも信じなかったと思うほど。

「昔は今ほど高くは無かったのですよ。それでも雲には届いていましたが、ギリギリ届いていたぐらいだったので、地上からでも辛うじて頂上は見えていましたが」

「そうだったのですか」

 上空を見ながら、女性の説明にはぁと生返事をしたヒヅキは、これをどうやって登るのだろうかと考えていた。

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