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英雄達14

「ええ。そして、これから向かう神殿を建てたのがその宗教の者達なのです。龍を神殿の守護とする為に、わざわざ危険を冒してまで龍の巣の奥に神殿を建てたのです」

「なるほど……ん?」

 そこまで女性の説明を聞いて、ヒヅキはふと何かに引っかかった。それが何だろうかと僅かにそちらに意識を向けると、直ぐにそれに思い至る。

「龍を守護にする為に巣の奥に神殿を建てたという事は、龍は世界の消滅から生き残っているという事ですか?」

 そう、女性やウィンディーネの話が事実であるとすれば、この世界は幾度も消滅しているのだ。それを越えて残っているのは、遺跡とヒヅキ達が呼んでいるような建物だけ。そうヒヅキは思っていたのだが、もしかしたら違うのかもしれない。

「ええ。伊達に神の敵対者と呼ばれた訳ではないのですよ。余裕で、という訳ではありませんが、世界の消滅から巣を護る程度の力は持ち合わせているのですよ」

「そうなんですね。……では、もしも龍の力を借りる事が出来たならば、神とも戦えるのでしょうか?」

 神の力に抗えるというのであれば、可能性はあるのではないだろうか? そう思ったヒヅキは、女性にそう問い掛ける。協力が得られるかどうかは仮定の話なので一旦横に措く。

「それは無理ですね。確かに龍は強いのですが、それでも神の前では他と変わりません。数を大量に揃えてその力をひとつ纏めたのであれば、神に対しても有効でしょうが」

 そう言った後に女性は「まぁ不可能でしょうが」 と苦笑めいた笑みを口元に浮かべた。その何処か諦観を滲ませている雰囲気から、ヒヅキは女性が過去にそれを試した事があるのではないだろうかと推測した。

 とはいえ、無理ならばそこに拘る必要はない。元より可能性の話をしてみただけなのであって、ヒヅキはそこにあまり期待はしていなかった。もしも龍が神の力ではなく、神そのものに抗えるのであれば、未だに健在ではなかったかもしれない。以前神が反抗勢力を潰したという話を女性がしていた事を思い出したヒヅキは、そんな事も考えていた。しかし、本当にそうであれば、女性以外にはもう神に抗える存在は居ないという可能性が高くなってくる。

 これから行う予定の戦力増強案であるヒヅキの中の英雄達を引き出すという方法は、もしかしたら最後の希望なのかもしれない。ヒヅキの見立てでは、女性一人では神には勝てないと思うから。

「そうでしたか。龍も強そうですが、神はやはり神という訳ですか」

「ええ。腐っても神と呼ばれるだけの強さを有していますよ。何せ、神とはこの世界に於いての頂点ですから」

「……そうですね。中々に厳しいものです」

 そんなヒヅキの呟きに、女性はふふふと小さく笑う。

「?」

 それに自嘲めいた響きを感じたヒヅキが首を傾げると、女性は少し冷えた声でヒヅキに応えた。

「そんなに簡単であれば、既に神は討滅されていますよ」

 まるで独り言のようなそれに、ヒヅキはそれもそうかと頭を掻く。それと共に、重くなった空気を変えようと話題を少し変える。ヒヅキは場の空気などあまり気にしない質ではあるが、近くを歩く女性から僅かに発せられている暗い雰囲気は、流石のヒヅキでも堪えた。

「そういえば、龍は強いという事でしたが、もしも戦ったら勝てますか?」

「神殿の前に巣を作っている龍は、幼龍から老龍まで全て合わせて数10体ほど居ますが、それを全て同時に相手しても問題ないでしょう。数が多いので少々時間は掛かりますが、1分以内には殲滅可能です」

「……それは凄いですね」

 女性の言葉にヒヅキは素直にそう思った。とはいえそれは女性に対してではなく、今まで数々の敵を瞬殺してきたこの女性相手に1分近くも使わせる龍の実力に。数が多いとはいえ、それでも個々の強さも相応になければそれほど長くは稼げないだろう。

 そんな龍でも、神の前では物の数にもならないというのは、ヒヅキにとっては頭が痛い話であった。

「ふふ。ヒヅキでも複数体同時に相手に出来ると思いますよ」

 そんなヒヅキの考えを察したのか、女性は困ったような笑みを一瞬浮かべた後、続けて付け加えた。

「それどころか、範囲殲滅攻撃を使用すれば一瞬で終わるでしょう」

 女性の言葉に、ヒヅキは僅かに考えこむ。一瞬何を言われたのか分からなかったのだ。しかし、直ぐに魔砲の事を言っているのだろうと思い当たると、次は魔砲を女性の前で披露しただろうかと疑問を抱く。

 しかし、相手は規格外の存在である女性なので、それぐらいは知っていても不思議ではないような気もしてくる。

 それに、遺跡探索では光球や砲身を現出させたので、そこから推測したのかもしれない。砲身は他人には見えないといっても、それは常人相手の結果なので、仮に女性に当てはまらないとしてもおかしな話ではないだろう。

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