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 その翌朝。

 朝食の席に着いたヒヅキは、ほぼ徹夜明け同然であったが、護衛任務の際は幾度も不寝番を務めていたし、旅の途中では野営をすることもあり、そういう時にはぐっすりと眠ることが出来るという事の方が珍しいぐらいであった。そのため、ヒヅキは二三日ぐらいなら、寝ないで活動可能な程度の寝不足耐性は保持していた。

 しかし、ヒヅキが窺うような眼差しを向けた先で元気に朝食を摂っているアイリスも、ヒヅキ同様に徹夜明けであるにも関わらず、そんなことは微塵も感じさせないしっかりとした居住まいをしていた。

 そのアイリスの様子に、ヒヅキは徹夜には慣れているんだろうか? と考えるのだけれども、お嬢様であるアイリスが徹夜に慣れるような用事に思い当たる節が無かったために、睡眠時間は人それぞれかと、自分を納得させる。もしかしたら、朝方までヒヅキの話を興味深げに聞いていたので、未だに興奮していて眠くないのかもしれない。



 シロッカスたちとの朝食を食べ終え、食器が下げられた後、その日のヒヅキは用事がなかったために、宛がわれた自室で睡眠を取ろうと立ち上がる。

「あ! ヒヅキさん!」

 部屋の外に出ようとしたヒヅキの背中を止めたのは、アイリスのそんな声だった。

「何でしょうか?」

 その声にヒヅキが振り返ると、アイリスはにこやかな笑みを浮かべて問い掛けてくる。

「今日は、何か御予定が入っておられますか?」

 その問いに正直に答えていいものかと、僅かな間悩んだヒヅキだったが、どうせ直ぐに分かることだと諦めて、正直に答えることにする。

「いえ、今日はこれといった用件は無いですね」

 ヒヅキのその返答に、アイリスは嬉しそうな笑みを見せる。

「では、私との買い物に御一緒願えませんか?」

 拝むように両手を顔の前で合わせると、可愛らしく小首を傾げたアイリスの、半ば強制に近いお願いを聞いて、ヒヅキは護衛任務に出る前の出来事を思い出した。

 アイリスの買い物は何件もの店を回る事になるのだが、基本的にアイリスは大量に物を買うということは好まないのか、何かを購入するでもなく、ただひたすらに、何件も何件店先を冷やかして回ることをするのだ。

 それこそ、1日でガーデン中の店を回るのではないか? という勢いなので、さすがのヒヅキも、それに付き合うと疲労を覚えたのだった。主に精神的なものではあったが。

 そんなアイリスの買い物の仕方を思い出したヒヅキは、アイリス自身はよく体力が保つものだと不思議に思うのだが、好きな事だから大丈夫なのだろうかと、納得しておくことにした。

 このアイリスというお嬢様は、見た目は深窓の令嬢然とした儚い雰囲気を持っているのだが、肝心のその中身は意外と活発で、色々と謎に満ちている存在であった。

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