表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1072/1509

英雄達5

「寒さを和らげる魔法は使えますか?」

「使えますよ。迷宮内に入る前には掛けておきましょう」

「ありがとうございます」

 ヒヅキの質問に、意図を察した女性は頷くと、そう告げる。それにヒヅキは礼を言いつつ、これぐらいは自分でも出来ればなと思う。

(教えてもらえるだろうか?)

 もしかしたら難しい魔法かもしれないし、秘伝の類いかもしれない。それでも訊くだけ訊いてみるかと思い、続けてヒヅキは声を掛ける。

「お尋ねしたいのですが、その魔法は私でも修得出来るのでしょうか?」

「そう難しいものでもないので可能ですよ。何でしたら寒さだけではなく、暑さを和らげる魔法もお教えしましょうか? 完全に周囲の温度を遮断する魔法は少し扱いが難しいですが、まぁ……ヒヅキなら問題ないでしょう。望むのであれば、そちらもお教えしますよ?」

「いいのですか?」

「構いませんよ。別段秘匿すべき技という訳でもありませんし。これぐらいであれば、おそらく探せば現在の世界にも使い手は居ると思いますよ」

「そうなのですか」

 女性の説明に納得したと頷いたヒヅキは、新しい魔法に少しワクワクする。ヒヅキにとって魔法とは、やはり少し特別なのだろう。

「ただ、まともに効果が発揮出来るかどうかはヒヅキ次第ですが。そこまで強い影響は受けないとは思いますが……これは実際に使えば分かりますね」

「そうですね」

 威力減衰について思い出し、ヒヅキは苦い雰囲気で頷く。魔法に憧れるのに上手く使えないというのは、やはりいい気分ではないようだ。

 そんなヒヅキの様子に、女性は何とも言えない表情を一瞬浮かべた後、早速移動しながら魔法についての講義をしていく。

 周囲の温度を和らげる魔法はどちらも根本は同じなので、片方を理解出来るのであれば、もう片方も理解出来たに等しい。

 なので、そちらの方は結構早くに取得出来た。ヒヅキは早速とばかりに使用してみたものの、そもそも現在居る場所が暑くもなく寒くもなくという程よい気温であったので、効果はよく分からなかった。しかし、その様子を見ていた女性は僅かに眉根を寄せる。

(これにも干渉してきますか。干渉する力が以前にも増して強くなってぎている?)

 女性の見立てでは、今し方ヒヅキが展開した魔法の効果は、本来発揮すべき効果の半減ほど。それでも効果はあるのだが、十分とは言えないだろう。それに。

(あれだけ巧みに魔法を操って半減という事は、普通に使用場合はそもそも効果が無いかもしれませんね)

 魔力の流れを視る事が出来る女性は、ヒヅキの魔力操作の巧みさに舌を巻くが、それでも本来の半分の効果しか発揮出来ないという結果に、ヒヅキの中で渦巻く相殺する力の強さの一端が窺えた。

(それにしましても……)

 魔法を解除しても変化がほぼ無い事に何とも言えない表情を浮かべたヒヅキを横目に見ながら、女性はやや苛立ち混じりに内心で呟く。

(芸術的いえ、神域と褒め称えるべき技能だというのに、それを阻害して損なおうとは、なんとも無粋な力ですね)

 女性は魔力の流れが視えるだけに、ヒヅキの魔力操作の技能の高さを誰よりも理解していた。

 まるで清流の如く淀みなく流れる魔力はとても美しく、それでいて無駄がない。それどころか効率よく魔力を流すことで、本来必要な魔力量未満で魔法を構築してしまっている。

 今まで女性が視てきた無数の存在の中でも、魔力操作の巧みさのみで評すればヒヅキは2番目だ。その中には女性が視た事のある神々も含まれているので、それだけでヒヅキの技能の高さが解るというもの。

 だからこそ、それを阻害する要因に女性は不快感を覚えた。しかし、それは女性がどうこう出来る事ではない。出来るとすればヒヅキの中の力ぐらいだろう。

 なので、女性は内心でもどかしげに息を吐き出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ