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英雄達3

「そういう訳ですので、魔力効率の高さとヒヅキの魔法が弱くなる事については別ですね。その足の引っ張り合いは私ではどうすることも出来ませんので」

「……そうですか」

「ええ。たとえ力を封じたとしましても、その魔力干渉は封じようがないでしょうし」

 残念そうなヒヅキに、困ったように女性は言葉を零す。何か進展があった訳ではないが、それでも気になっていた事が知れたのはよかったのだろう。

 ヒヅキはそう思うと、どうしようもないのだから気にしてもしょうがないかと、腕輪の方に視線を戻す。光の魔法だけは問題なく使えるのだから、結局今まで通りということなだけだ。

 腕輪の方は、想像以上に高度な造りだったようで、罠こそないがヒヅキ専用と言っても過言ではないらしい。

(消費魔力激増というのがどれぐらい増えるのかは分からないが、それでも一部は少しだが使えるという魔族の魔力量はどうなっているのだろうな)

 ヒヅキは自身が転移魔法を使った時の事を思い出した後、一部の魔族であれば命懸けで魔法の起動を行い、成功すれば数メートルぐらいなら使用可能だろうと、女性が付け加えるように話していたのを思い出し、自分に当てはめて考えてみる。

(命懸けという事は、所有している魔力が完全に枯渇するぐらい使用するという事だろう。想定しているのは完全に魔力が回復している状態の魔族だと思うから、もしもそれを俺に当てはめて考えてみるとして、数メートルを実際に移動した際の使用魔力量と自身の魔力総量を比べて計算すると……消費魔力量が1000倍以上に跳ね上がるのか。俺の魔力量よりも魔族の魔力量の方が桁違いに多いだろうから、そうなると……10000倍以上という計算になるな。いや、それどころかそれ以上、か?)

 分かっている情報を基におおよその予測を立ててみたヒヅキは、その結果に言葉を失う。

 腕輪を見詰めたまましばらくして、確かに激増だなと、とりあえずは納得する。でなければ、腕輪が急に得体のしれない何かになったような気分になりそうだった。

 そうして夜が過ぎ、朝になる。まだ太陽は顔を出してはいないが、遠くに見える山の稜線が明るくなっているので、もうじき日の出だろう。

 空は朝と夜の混じった薄暗い色合いだが、足下は問題なく視認出来る。

 建物から出た二人は、まずは建物の撤去から始める。といっても、これは建物を建てた女性がさっさと終わらせた。

「建物が地面から出てくるような光景も凄かったですが、建物が地面に埋まっていくような光景も、また圧巻でしたね」

 女性が建築した時には、地面から建物が生えてきたかのように勢いよく完成したものだが、今回の建物の撤去作業は、その時間を戻したかのように、建物が地面に還っていった。

 溶けたようにとも違う、埋まっていく様子。いや、あれはやはり地面に還ると表現した方が適切だろう。

 その光景を間近で目にしたヒヅキは、やや興奮したように女性に感想を伝える。

 そんなヒヅキの様子を微笑ましげ見た女性は、「また機会があればお見せしますよ」 とヒヅキに機嫌よく応えた。

 やはりヒヅキは自分があまり上手く使えない分、魔法というものに憧れがあるのだろう。それはそう思わせるに十分な光景。

 少しして落ち着いたヒヅキは、これから向かう先の確認を行う。

「次の目的地は、水晶の欠片を所持しているという二人の場所ですか?」

「ええ、そうです。それさえ集まれば動力が元に戻ると思いますので、何としても手に入れたいものです」

「そうですね。であれば、どうやっても手に入れなければなりませんね」

 女性の口から最後の欠片だと告げられ、ヒヅキは重々しく頷く。普通の交渉で譲ってもらえればいいが、そうでなければやはり強硬手段に出なければならないだろう。

 そうヒヅキは考えた後、その後はどうするのだろうかと思考を巡らせる。神が何かしてくるのか、こちらから神の場所へと向かうのか。それとも別の何かを探すのか。

(女性だけでは戦力的には厳しいか?)

 ヒヅキは女性の実力を正確には知らない。それは神の実力もなのだが、それでも女性は1度神に敗れている。いや、話を聞く限り2度か。そんな女性だけでは、やはり戦力としては心許ない気がする。

 かといって他の戦力に当ては無いので、ヒヅキは無駄な思考かと首を振った。それについては女性の方が何かしら考えている事だろう。

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