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護衛任務13

 ヒヅキがアイリスとシロッカスのやり取りを微笑ましげに眺めていると、一段落ついたのか、アイリスがヒヅキの方へと顔を向ける。

「ヒヅキさんも無事にお帰りになられてよかったです」

 そう言って、胸に手を当てホッとするアイリスに、横からシロッカスが得意げに声を掛ける。

「ヒヅキ君は大活躍だったんだぞ!」

 その言葉に、アイリスは興味深げな目をシロッカスに向けると、その話を詳しく聞きたいと先を促した。

 そんな嬉しそうなアイリスに、シロッカスはますます得意げになってスキアと戦闘になった際の話をする。

 それを、きらきらと瞳を輝かせて聞き入るアイリス。

 話題の当人であるヒヅキは、自分をそっちのけで盛り上がる二人に少々呆れたような視線を送る。

「やっぱりヒヅキさんは凄いんですね!」

 シロッカスから話を一通り聞いたアイリスは、ヒヅキの手を両手で力強く握ると、そう感想を述べた。

 尊敬や羨望など、負の感情を一切感じない好意満点なアイリスの視線に、ヒヅキは居心地悪そうに若干上体を仰け反らせる。

「そ、そう思ってもらえて嬉しいです」

 短い付き合いながら、アイリスに「そんなことはありませんよ」 などと謙遜でもしようものなら、物凄い勢いで圧してきそうだと判断したヒヅキは、ぎこちない笑顔を浮かべながらも、感謝を述べた。

 しかし、ヒヅキは自分の判断がまだまだ甘かったことをすぐに理解する ことになる。

「はい! あまりの凄さに私感激してしまいましたわ! 今宵は当家にお泊まりになられると伺っております。ですから、今度はヒヅキさんの口からお話をお聞きしたいですわ!」

 ぐいぐいと身体ごと顔を寄せてくるアイリスに、ヒヅキはたじたじになりながらも、ちらりと窓の方へと目を向けて、外の明るさから、今がまだ夕方になるかどうかという時間帯であると判断する。

 ヒヅキはその事実に、ひくりと一瞬頬を引き攣らせる。何せ、先ほどアイリスはこう言ったのだ「今宵は当家に泊まる」 と。ヒヅキが間違っていなければだが、おそらくそれが指すところは、一晩中という意味に等しい。

(どれだけ長時間話せばいいんだろうか!)

 内心で、そんなに話すこと何かないと頭を抱えながらも、ヒヅキは何か話題がないかと律儀に思考を巡らせる。

 そして、やけに乗り気なアイリスに、手始めにシロッカスがしていた武器輸送の護衛時にスキアと遭遇した話をすることに決める。視点が変われば話の印象も変わるだろうと考えての判断だった。

 熱心にヒヅキの話を聞いていたアイリスに丁度スキアとの戦いの話をし終えた頃、タイミングよく夕食の準備が整ったとの報せが届き、ヒヅキ達三人は、報せに来た使用人を先頭に食堂へと移動する。

 柔らかなパンに肉厚のステーキ、新鮮な野菜を使ったサラダに温かな湯気を立ち上らせる具沢山のスープ。それに瑞々しい果物と芳醇な香りを漂わす甘酸っぱい果実酒まで付いたシロッカス家の豪勢な食事は、相変わらず我を忘れてがっつきたくなる程にとてもおいしかったのだが、夕食を食べ終えると、ヒヅキはアイリスに早々に話の続きをねだられてしまう。

 それから、アイリスに連れていかれるままに場所をアイリスの部屋へと移すと、旅のきっかけとなった鬼との話から始まり、名も無き村までの話を、途中でお風呂休憩を挟みつつも、延々と、文字通り一晩中語らされたのであった。

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