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テトラ162

 魔法というのは、その場にパッと現出する。無論、それが全てではないし、大きい物の場合は特にその限りではない。例えば建築の場合は土を使うので、地面からせり上がるようにして出現したりする。

 つまりは派手なのだ。それに一瞬で現れるので、観ていて解りやすい。

 それに比べて普通に手作業で建築する場合、時間が掛かるうえに少しずつしか組み上がっていかない。

 その違いは大きいらしく、魔法での建築の方は娯楽としても楽しめるし、それに強く印象にも残る。その為に瞬く間に評判になるという事だ。

 魔法で建築する場合と人の手で建築する場合、時間や予算は横に措いて出来の良し悪しだけで判断すると、魔法で建てた方が少し設計と違う場合があるという程度。住み心地は然程変わらないので、やはり割高でも魔法で建築という方を選ぶ人も居るようだ。話のタネにもなる訳だし。

「やはり派手さは大事なのですね」

「人々は娯楽に飢えているのでしょう。商家などでは話題にもなりますし、それに値段が高いというのも成功者の証のようなものですから」

「ああ、なるほど。色々あるのですね」

 面倒なものだとヒヅキは内心でため息を吐く。自分とは縁のない話ではあるが、それでも話を聞くだけでも気が滅入りそうだと。もっとも、それももう昔の話だろうが。まだ都市が滅んでいないとしても、現状では貴重な魔法使いは市井の者だろうと関係ないだろう。

「いつの時代もそんなものですよ」

 そんなヒヅキの胸の内でも察したのか、女性はそう付け足す。その声は疲れたものながらも重みを感じた。今までそれだけ色々と見てきたという事なのだろう。であれば、この世界が滅んだとしても、次の世界でも見栄というのは無くならないのだろう。そう思わせるだけの説得力がその言葉にはあった。

 二人は歩き出すと、程なくして森の外に出る。転移魔法陣の出口は、森の出口にも近かったらしい。

 森の外には何も無い平原が広がる。人影もなく、大きな岩が幾つか散見出来るだけ。はるか遠くに山を背に何かしらの建造物っぽい物が見える気がするが、遠すぎてそれ自体が小さいので詳細までは分からない。

 感想としては、ただ広いとしか言えない場所であった。しかし荒野とは違うようで、黒茶色の土は生きているように見えた。実際、遠くには緑色が少し確認出来る。

「その辺りでいいでしょう」

 森を出て直ぐ、女性は近場を指差してそう告げる。そこは僅かな小石と土のみのほぼ平らな場所。広さもそこそこあるので、小屋より少し大きな建物を建てる程度であれば十分な広さだろう。

「では、ささっと終わらせましょう」

 ヒヅキが何も応えぬ内に前に出た女性は、一瞬の内に建物を建ててしまう。地面の下から押し上げられたかのように現れた、一瞬の出来事であった。

 一瞬で建てられた建物は、5、6メートル四方の窓の無い小屋といったところ。天井も平らなので、大きな箱にしか見えない。入り口は在るが扉は無いようだ。

 女性の後に続いてヒヅキは建物の中に入る。

 窓が無いというのに建物の中は随分と明るい。ヒヅキが天井を見上げてみると、天井の真ん中辺りに直径2メートルほどの円形の穴が開いていた。

 遮る物がないので、もしも雨が降れば室内は水び出しになるだろう。とはいえ、今は薄曇りといった天気だが雨は降らなそうだ。

 室内には、炉だと思われる物が建物の半分近くを占拠している。見た目は小さな山だ。上部の一部が天井とくっ付いているので、そちらも穴が開いているのかもしれない。

 その山のような炉の麓の方には、腰を軽く屈めれば中に入れるぐらいに大きな入り口があり、内部は広い空洞のようだ。

 そこに入っていった女性は、何かを何処からか取り出して中に置いていく。それも複数ヵ所。設置が終わると、女性は山の中から出てきてヒヅキに方に目を向けた。

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