表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1063/1509

テトラ161

「ですがまぁ、これにも裏技と言いますか、抜け道のような方法が在るのですが」

「抜け道ですか?」

 ヒヅキが女性の技量に感心していると、それを見た女性が悪戯っぽく笑んでそう言葉を発した。それにヒヅキは首を捻る。そんな話は今まで聞いた事も無かった。

「ええ。と言いましても、そこまで勿体つけるような事でもないのですが」

 そこで女性の笑みに僅かに申し訳なさそうな気配が混ざる。思った以上に期待させてしまったようだと思ったらしい。

「それでも前提としまして、ある程度の知識は必要ですが、例えば魔法で建物を建築する場合、これを単独で一気に創り上げるというのが一流の使い手でしょう。ですがそれは一般的には難しいので、通常は何人かで情報を共有して一気に創るか、精度を上げる為に一人の使い手に任せて周囲は魔力を供給する事に専念します」

 女性の説明に、ヒヅキはとりあえず頷いておく。理解は出来たが、知識としては知らなかった。

 魔法で建築出来る事は知っていたが、ヒヅキの周辺では大工が人力で家を建てるのが普通の光景で、魔力の少ない種族である人間でそれを行えるのは、数が揃えられる規模の大きな街ぐらいしかなかったし、それに頼むにも値段が桁違いに増える。

 そんな訳で、ヒヅキには魔法での建築というのは身近ではなかった。それに、人間では魔力の扱いに不安が残るので、精度でいえばそれなり。設計通りに創りたい場合は人力が当たり前という側面もあったが。

 因みに、人間界において魔法での建築などの魔法関連は冒険者のいい小遣い稼ぎの場となっていた。それぐらい人間での魔法使いというのは少なかった。

 もしも現在のヒヅキが建築関連の魔法を覚えて魔法で建築を行った場合、魔力量の問題で普通の平屋でも一人での建築は無理ではあるが、その代り魔力供給さえしっかり受けられれば、ほぼ設計図通りに建築が可能なほど魔力操作が巧いので、半減の呪いがあろうとも建築関係だけでなく魔法関連の各方面から引っ張りだこだったであろう。

「そして抜け道と言いますか、まぁ一部では知られている事ではありますが、建築の際に一気に創らずに小分けして創るという方法です」

「小分けしてですか?」

「ええ。例えば土壁を1面ずつ創っていくとかですね。そうすれば精度も高まりますし、魔力も一気に消耗しないので、時間を掛ければ一人でも建築可能です。もっとも、この方法では繋ぐ時に少しコツがいるので、多少の慣れは必要ですが」

「はぁ。なるほど」

「この方法のいいところは、先程言ったように精度が高い事と、1回1回の魔力消費量が少ないので、一人でも実行可能というところでしょう。悪い面でいえば時間が掛かる事と、継ぎ目の処理をしっかりと行わないといけない事でしょうか。とはいえ、魔法に拘らないのであれば、継ぎ目に関しては人力という方が楽ですが」

「なるほど。細分化して作業を行い、それを組み合わせて目的の物を築き上げるのですね。そちらの方がいいように思えますが、何故行われないのでしょうか?」

 先程の女性の言葉で、その方法が見つかってないという訳ではないらしい。では、何故それが主力ではないのか。ヒヅキにはそれが疑問であった。聞く限りそこまで致命的な欠点があるようには思えなかったというのもある。

「1番の理由は、やはり時間が掛かるという事ではないでしょうか。全て手作業で行うよりは早いですが、それでも何日も掛かるというのがいけないのかと。頼む側も直ぐに出来ると思っているでしょうし」

「ああ、なるほど」

「人数を増やせば1日で出来るかもしれませんが、それならば最初から人数を集めて一気に創った方が早いですし、何より見た目が地味ですし」

 女性は最後に肩を竦めるようにそう付け加える。

 それにヒヅキはどういう意味かと首を捻るが、直ぐに理由に行き着き「ああ」 と小さく声を漏らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ