護衛任務12
帰りは移動速度が速いとはいえ、一度通った道だからか、あっという間にガーデンに到着した。
ガーデンに到着した後は、そのまま人足の人たちとは別れる。報酬は後日払うという取り決めらしい。
護衛の四人は人足の人たちとは別に、シロッカスの家に招かれ直接報酬を渡される。
ヒヅキはもう少しシロッカスの家で厄介になる事が決まっていたので、そのままシロッカスの家に残り、他の三人はギルドハウスに戻っていく。
その帰り際に聞いた話だと、三人は同じギルドに所属しているということであった。
「さて、今直ぐにという訳ではないのだが、まだ武器輸送の仕事が幾つか残っていてね。それで、その時の護衛の依頼なのだが、請けてはもらえないだろうか?」
シラユリたち三人を見送った後、シロッカスの部屋に移った所で、ヒヅキはシロッカスにそう乞われた。
それにヒヅキは少しの間考えるも、急ぎの旅ではないために、それを請けることにする。
「おぉ! 請けてくれるか、それはありがたい。他の護衛の者も探しているんだが、まだ見つかってないのだ。あの三人が都合がつけばよかったんだがね」
シロッカスは疲れたようにそう言葉にすると、困ったように頭を掻いた。
「まぁそれでも、ヒヅキ君が引き受けくれただけでも良かったよ」
シロッカスはホッとした声を出すと、ヒヅキに軽く頭を下げる。
そんなシロッカスに、ヒヅキは手を身体の前で振ると、「こちらこそ、仕事を頂けて感謝しています」 と頭を下げた。
ヒヅキ自身、こんなに簡単に仕事にありつけるとは思っておらず、それも中々に好条件の仕事であるために、事実シロッカスには感謝していた。
そのきっかけになったアイリスにも内心で感謝していると、扉を叩く控えめな音と、よく通る可愛らしい声が聞こえてくる。
聞き覚えのあるその声の主は、丁度ヒヅキが感謝を向けていた相手であった。
シロッカスが扉を隔てた向こう側の人物に入室許可を出すと、浮いているのかと思うほどに静かに扉が開かれる。
「失礼致します。おかえりなさいませ御父様、ヒヅキさん」
室内に一歩足を踏み入れると、アイリスは入り口で優雅な所作で挨拶をする。
「ただいま、アイリス。良い子にしてたかい?」
「はい。御父様」
にこやかに笑うアイリスに、シロッカスはとろけるように相好を崩していく。
そんな二人の様子を見て、ヒヅキは懐かしさを覚えた。
(この家に居たのもほんの数日だというのにな)
アイリスに会うのも約1ヶ月半ぶりとはいえ、その前に数日一緒に時を過ごしただけの相手でしかないはずなのだが、アイリスにデレデレになるシロッカスという構図を目にして、昔からそれを見てきたような懐かしさを感じて心にじわりと熱が広がる。
そんな自分の心の動きに、ヒヅキは二人を眺めながらも、密かに驚きを覚えたのだった。