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テトラ155

 他にもここについて、というか元々棺に封印されていた存在についても書かれていた。残念ながらここも大部分を読むことは出来なかったが、読み取れる単語を拾う限り、女性の説明通りのようだ。

 だが、最後の方でその封印されていた女性は死んだと書かれていた。死因については読めなかったが、封印されていたのはどうやら死体だったらしい。

(だから棺、なのか?)

 封印されていた長細い箱に目を向ける。重厚な色合いで厳かな雰囲気の外見は、どう見ても棺だ。封印されていたのが遺体だというのであれば、それも納得出来た。

(女性が同じような棺に封印されていたが、あれは人を入れやすいからだろう)

 この遺跡最下層の最奥で遺体を封じていたという棺。それはかつて女性が遺跡で封印されていた棺に非常に似通っていたが、棺の形などどれも似たようなものなので、そこはおかしくないだろう。高そうな棺なのも、どちらも神が用意したと思えばおかしな話ではない。それに、棺は本来死んだとはいえ人を納める為の箱なのだから、人を入れるには最適とも言えた。つまり、それほど疑問に思うほどではないかとヒヅキは結論付ける。

 他にも石碑には長々と何かが書かれているが、ほとんどが読めないうえに、読める部分を拾っても何について書かれているのかヒヅキには理解出来ない。

(そもそも、この石碑は誰が用意したんだ?)

 第2階層に在った石碑は、女性の反応から今の神が用意したようだと推測出来るが、ではこれは誰が用意したというのか。わざわざ封印を破りに来た者に対して、それについて懇切丁寧に説明する為に神々が残したとでも言うのだろうか?

(それでも、まずは棺をどかす必要が在るからな。元々同じように置かれていたとは限らないが)

 ヒヅキはそんな疑問を抱きつつも、石の表面にびっしりと刻まれた文字を読み取っていく。

 しかし、やはり読める部分が少ないというのが致命的で、読み終わっても解った部分はほぼ無かった。読める部分もほとんどが封印されたモノについて書かれている部分に集中していたのも原因だろう。

 女性に訊けば何か分かるだろうか。ヒヅキがそう思ったところで、ふと疑問が湧いた。

(読める部分の単語は他の場所には使われていなかったのだろうか?)

 思い返してみても、同じ単語が出てくる回数がかなり少ない。何度も出てきそうな言葉もあったのだが、結局はそこまで頻出することはなかった。

 そのことに疑問を覚えたヒヅキは、もしかしたら読めない部分にも読めた言葉があったのではないかと考えた。なにせ読めるようになったのは突然なのだ、何かしらの力が作用したと考えてもおかしくはない。

(その力が判読可能部分について取捨選択していたとしたら、この読める部分が重要という事だろうか?)

 そう疑問に思うも、しかし、封印されていたモノについても虫食い文字のように飛び飛びにしか読めない。それで何を伝えたいというのか。

(解ったのは、封印されていたのが女性で、封印時には既に死んでいたというだけ。それが一体なんだというのか)

 何者かの意思が働いたのではないか、というのも推測でしかないので、単純にヒヅキが考えすぎという可能性も大いにある。結局のところ何も解っていないのだから、何が真実なのか解らないのもしょうがない。

 とりあえずその考えを横に措いたヒヅキは、女性に読み取れた事について尋ねてみる事にした。

「この石碑が少し読めたのですが、ここに封印されていた女性は死んでいたのですか?」

 ヒヅキの問いに、女性は僅かに驚きながらも頷く。

「ええそうです。ヒヅキが何処まで読み取ったのかは分かりませんが、女性は死後ここに封印されたのです」

「神々は遺体を封印したのですか」

「それでも誰の目にも触れないように、という事ですよ」

「はぁ。なるほど」

 その考えがいまいち理解出来なかったヒヅキは、曖昧な感じで頷きを返した。

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