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テトラ152

「あれは何をしているのでしょうか?」

 床に落ちては粘着質な音を立てている赤黒い物体を指差して、ヒヅキは隣に立っている女性へと問い掛ける。

「あれも魔物を創っているところですよ。まぁ、あれだけでは魔物は出来ませんが」

「では、あれからどうなるのですか?」

「あれは魔物の元のようなものでして、ここではああやってそれを濃縮しているのですよ」

「濃縮ですか?」

 女性の言葉に、ヒヅキは目の前の光景を凝視する。

 そこには相変わらず赤黒い塊が床に落ちているだけの光景があった。それはまるで捨てているようにしか見えないが、女性に言わせればそれが濃縮らしい。

 よく見れば、床に落ちた塊は床に染み入るようにして消えているが、それが濃縮なのだろうか。ヒヅキには解らなかった。

「それで、何故濃縮を?」

 ヒヅキには解らなかったが、女性がそう言うのであればそうなのだろう。そういうことにして、ヒヅキは話を進める。

「あれではかなり時間が掛かりますが、真なる魔物の創造を試みているところですね」

「真なる魔物ですか。それは可能なのですか?」

 真なる魔物とは、完全に魔力に飲まれた魔物の事だが、通常であればそこに至るまでには途方もなく長い年月を要すると言われている。それを最初からそういった存在を創造するというのは想像がつかない。いや、魔物を創造するというだけでもヒヅキは十分驚愕しているのだが。

 それに、もしもそれが事実であれば、目の前の魔物製造装置はかなり危険なものとなる。もしかしたら今すぐにでも真なる魔物が創造されるかもしれない。そう考えてしまうと、思わず身体に力が入ってしまう。

 そんなヒヅキの様子に、女性はくすりと小さく笑う。

「大丈夫ですよ。真なる魔物が生まれるにはまだまだ時間が掛かりますから」

「そうなんですか?」

「ええ。そもそもそんな簡単に生まれるような存在ではありませんからね」

「それもそうですね」

 女性の言葉に、納得がいったとヒヅキは頷いて力を抜く。ヒヅキでも苦戦するだろう相手がそうポンポン誕生するなど悪夢以外の何物でもないだろう。それに仮に簡単に創れるのだとしたら、遺跡内の真なる魔物の数は少なすぎた。最奥に数えるほどしか居なかったのだから。

「ここは真なる魔物が創られている場所という事ですか?」

「いえ、ここは真なる魔物も創っている場所です。普通の魔物も創られますよ。まぁ、こちらも真なる魔物ほどではないにせよ時間が掛かるのですが」

「なるほど。では壊しますか」

「ヒヅキが満足したならどうぞ。それを壊せば棺の封印は解かれますので」

 女性の言葉に了解したと首肯したヒヅキは、以前に女性から渡された剣を抜く。すらりとした剣身は相変わらず美しいが、それよりも今は装置の破壊をしなければならない。

 ヒヅキは警戒しながら装置に近づくと、剣を振るって装置を様々な角度から切断していった。

 剣の切れ味が鋭すぎて面白いほどに斬れるので、実は装置は薄い板で囲われただけで中身が空っぽだと言われても納得しそうなほど。

 そうして散々に装置を切り刻んだヒヅキは、剣を鞘に収めて女性の許に戻る。

「お疲れ様です」

「これで破壊出来たと考えていいのですか?」

 残骸の山と化した装置に目を向けたヒヅキは、迎えてくれた女性に念の為に確認を取る。どうみても破壊出来ているが、魔物を生み出すぐらいなので、もしかしたらまだ破壊出来ていなくて自動修復とかするかもしれない。夢物語のような内容だが、神が創った装置らしいので、その考えを笑うことは出来ないだろう。

「ええ。破壊出来ていますよ。あれも直に消滅するでしょう」

「それならばよかったです」

 女性の答えに、ヒヅキはほっと息を吐く。これで駄目であったらどれだけ細かく斬ればいいのかと問わねばならなかった。

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