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テトラ149

 同じ魔法を短期間で現出しては消失させてを繰り返すと、その魔法が使えなくなる事がある。その原因はまだはっきりとは判っていないが、その魔法を使用する際に使う魔力の経路が傷つくからではないかと言われている。

 なので、実際はどうかは知らないが、そういう現象が確認されているという事なので、ヒヅキとしてもそれは避けたかった。ただ、同じ魔法を継続して使用する分にはそういった事は起きていないという話も聞くので、やはり原因は不明なようだ。

 何にせよ、現状はどうしようもないというほど追い詰められている訳ではないので、危険な真似はしたくない。

 どんどん奥へと進んでいるが、まだ終わりは見えてこない。魔力の方は消費し続けているので、問題なさそうだ。これで無理なら女性に断ってから光の剣を使用すればいいかとヒヅキは考え、今は横に措いた。

「最奥は後どれぐらい先でしょうか?」

 それよりもまずはそちらだろうと考え、ヒヅキは女性に問う。

「そうですね……今の速度で後数時間といったところでしょうか」

「結構あるのですね」

 広い空間だとは思っていたが、長さも結構あるらしい。第1から第4階層に比べれば狭いが、それでもちょっとした都市ほどの広さがある。

 女性の説明によると、最下層は別世界らしいので時間の概念がどうなっているのかは不明だが、それでも1日ぐらいは経過していると思う。それぐらい歩いていると思うのだが、水晶の明かりは何処までも続いているので、果てがないのではと疑いたくなるほど。

 それは魔力濃度の影響で、ヒヅキが普段以上に疲弊しているのも関係しているのだろう。

 それでも、女性はあと数時間で最奥に辿り着くと言っているので、やはり果てはあるらしい。

 ヒヅキは歩きながら、魔族の村で仕入れた燻製された干し肉を取り出してそれを齧る。空腹な訳ではないが肉体の疲弊が強いので、何か口に入れておこうかと思ったが故に。

 そうして干し肉を食した後、魔力水を少し口に含む。

 奥に行けば行くほど魔力濃度は増しているのだが、今のところ魔力消費の方が多く、それでいて体内の魔力量の残量が若干心許なくなったのだ。干し肉の濃い味を軽く洗い流したかったというのもあるが。

 移動しながら食事を終えると、休憩を挿むことなく歩き続けたおかげで、女性の言葉通りに数時間ほどで最奥に到着する。奥の方からもの凄く濃い魔力が溢れており、視界には赤黒い見た目の魔物の姿があった。

 禍々しさを形にしたようなおどろおどろしい見た目は、既存の動物とはかけ離れている。微かに面影はあるのだろうが、第1階層で見た混成獣だと言われた方が納得しそうだ。

「あれが真なる魔物ですか」

 明らかにスキア以上の存在感に、ヒヅキは喉を鳴らす。見た限り1対1ならまだ何とかなるかもしれないが、ヒヅキの視界には既に複数体の姿を捉えている。

 見た目や大きさは違うものの、どれも禍々しく赤黒い身体をしている。それでいて、身体のところどころが光を反射しているのが分かった。

「ええ。私が全て処理しますが、いいですか?」

「はい。お願いします」

 1体ぐらい戦ってみる? とでも言いたげな女性の視線を無視して、ヒヅキは全ての魔物を女性に任せる。

 それは最初から決めていた事なので、特に何か言われる事もなかった。

 ヒヅキは女性が魔物を処理するまで離れた場所で待機しておく。水晶以外に何も無いので、離れた場所からでも戦いの様子は確認出来る。

 女性はヒヅキが離れたのを確認した後、警戒している魔物へと悠然と歩いて近づいていく。

 歩いて近づいてくる女性へと魔物達も動き出す。

 取り囲むように動く個体もいれば、小動物のように威嚇しながら少しずつ後退する個体。気配を消して襲撃しようとしている個体に、逃げようとしている個体もいた。共通するのは、どれもが女性の強さを理解して警戒しているという事か。

 そして、最初の魔物が女性へと襲い掛かった瞬間、例の如く全てが終わっていた。

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