テトラ147
体調が悪い原因は魔力の濃さなので、それをどうにか出来ればいい。
そもそも、どうして魔力濃度が濃い場所では体調が悪くなるかと言えば、生き物は呼吸をするように魔力を体内に取り入れているのだが、魔力濃度が高いとその際に多く魔力を取り入れてしまう。そして、何者にも魔力を受け入れられる許容量というモノが存在しているのだが、体内の魔力量がその上限に近すぎると体調を崩してしまうのだ。
体調を崩してもそのまま魔力濃度の濃い場所に居ると、いずれ許容量の上限を越えて魔力を取り込んでしまい、最終的には内部から壊れて死んでしまう。
早々内部から壊れる事はないが、それでも現状で放置は愚策。解決策としては、その取り込んだ魔力を消費してしまうか、取り込む量を減らせればいいという事になる。取り込みを阻害して魔力を取り込まなくするのは不可能ではないが、現実的ではない。
魔力を使用するにも、ヒヅキは魔法をあまり使えない。しかし思い返してみれば、ヒヅキがまともに使用可能な魔法は、どれも魔力消費量多いものばかりではなかったか。そこまで思い至ったヒヅキは、意外と身近に簡単な解決法があったなと小さく笑う。
その後にどの魔法を使用するか思案する。継続的に魔力を消費するのであれば光の剣ではあるが、武器を出しっぱなしというのは女性に要らぬ誤解を与えかねない。ヒヅキの予想では気にしないとは思うが、だからといって試すつもりはなかった。
(まぁ、必要であれば確認を取ればいいだけだからな)
他にまだ手はあるので、それについては後回しにする事にする。
次に考えたのが魔砲。というよりも光球だ。あれは本来明かり取りではなく魔砲の弾なので、最小の出力で現出させている普段の光球でも、それなりの魔力消費がある。現在地は水晶からの明かりのおかげでそこまで暗くはないのだが、それでも最も無難な魔法なので、とりあえずそれを使用することにした。今はまずは体調不良を少しでも改善させるのが先決だろう。
そう考えて光球を現出させるヒヅキ。今回は魔力消費が目的なので、結構な量の魔力を籠めて現出させる。
現出した光球は、かなりの量の魔力が込められた為にもの凄く明るい。青白い光が満ちる空間に在っても、その明かりは確かな存在感を放っているほど。
周囲はより一層明るくなる。それによる不都合は特に無いので、ヒヅキは光球の取り扱いにだけは注意する。一応、光球自体に一定以上の魔力を注ぐと自動的に結界を張って防衛する術式が組み込まれているようなので問題はなさそうだが。
しかし、それを見たヒヅキは、このまま弾として使用しても大丈夫なのだろうかと疑問に思う。
だが、試す訳にもいかないので、元から魔法の一部として組み込まれていた事を思えば、問題ないのだろうと思うことにした。それに、今まで気がつかなかっただけで、もしかしたら今までも魔砲の弾として使用していた時には結界が張られていたのかもしれない。そう思えば、安心も出来るというもの。
魔力をかなり込めた光球を出した事でヒヅキの体内の魔力量が激減し、体調が大分よくなる。体内の魔力量が少なくなりすぎるのも問題なのだが、今回はそこまで減らなかったようだ。それに、周囲から魔力を取り込む事で、既にどんどん魔力量が戻ってきている。
まだ余裕があるが、また増えたら2つ目の光球を出さないとなとヒヅキは考える。光の剣で魔力を外に放出し続けてもいいが、こちらもかなり魔力を籠めなければならない。やはりそうなると、女性の存在が困ってくる。
とはいえ、現状でも問題なさそうなので、今は他に方法がないかと思案していく。しかし、ヒヅキが使える中でとなると、あとは過去視か治癒か身体強化といったところか。
治癒は怪我していないので、精々疲れを少し緩和する程度。ヒヅキの身体強化はほぼ魔力消費無しなので論外。わざわざ形を崩してまで魔力消費はしたくない。
となればあとは過去視だ。こちらであれば光の剣を出さずとも継続的に魔力が消費されるので問題ないだろう。




