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テトラ146

 女性は、先程指し示した周囲よりも一層深い黒色の空間へと先に入っていく。

 残されたヒヅキは、離れないようにその後を追って闇の中へと入る。世界を移動するのもこれで何回目かなので、既にこれにも慣れていた。

 黒い空間を通って先へ進むと、そこは青白い光に満たされた広い空間だった。

 周囲を見回してみると、岩肌がむき出しの天井や床が在り、岩の床の上には土が堆積している。

 そして、そこかしこから水晶のような物が大量に生えており、それが青白い光を放っているようだ。ひとつひとつの光量は大した事ではないが、数が多いので周囲を目視できる程度の明かりにはなっている。

 周囲を淡く光る水晶が囲んでいる光景というのは、なんとも幻想的な光景ではあるが、興味のない者には単なる明かり取りの石でしかないようで、ヒヅキがその光景に目を奪われる事はなかった。

「ここが最下層ですか?」

「ええ。まぁ便宜上そう呼んではいますが、ここはこの階層のみしか存在しない世界です」

「ここのみの世界ですか?」

「ええ。この空間の外は何も存在していません。掘り進めたところで時の狭間に放り出されるだけですよ」

 壁の方に目を向けた女性は冗談めかしてそう言うが、おそらくそれは事実なのだろう。ヒヅキにはそれがなんとなく理解出来た。それに、ヒヅキにはこの階層が酷く窮屈に感じられたというのもあるのかもしれない。

 現在ヒヅキ達が居る場所はかなり広いのだが、それでもヒヅキは閉塞感を感じていた。それは周囲を囲われているから、というのとは違ったように思えた。

(おそらくその答えが、ここのみの世界という事なのだろう)

 外に広がりの無い世界。だからこそ、見た目と違って狭く感じるのだろう。何故そう感じるのかは不明だが、そう感じるのだからしょうがない。

 ヒヅキが感じている閉塞感は息苦しいとまではいかないが、それでもあまり長居したいと思えるほどではないので、さっさと奥へと進むことにした。

 ヒヅキは女性を促し、奥へと進んでいく。

 ここで巨大な魔物でも暴れるのかと言いたいぐらいに広い空間が何処までも続く。ここは洞窟のようで、部屋も通路も扉などで区切られていないようだ。

 そして、何処までも光る水晶が空間を照らしている。床から生えている水晶の数は多くないが、それでも四方から大量の水晶が生えている様子は、まるで口を開けた獰猛な何かの口内を想起させた。

 そんな場所を気にせず進む女性。ヒヅキもそれについては気に留めていないのだが、奥へと進む度にどんどん濃くなる魔力には参っていた。やはり最下層と呼ぶだけの場所ではある。

 ヒヅキは上限などないかのように濃度が増していく魔力に辟易しながらも、それを意に介さず進んでいく女性にしっかりとついていく。

 それからも奥へ奥へと進んでいき、あまりの濃度の高さに魔力が可視化されて靄のように漂い始めても、なお奥へと進む。その間、魔物は1体も現れなかった。

 魔力濃度が高すぎて、ヒヅキの感知魔法は役に立たない。気配察知で何とか不意打ちは防げそうだが、それも周囲の纏わりつくような魔力のせいで精度はあまり高くはない。

 不快感と共に、ヒヅキはここは自分が来る場所ではないなと理解するも、大分奥まで来てしまったので、ここから引き返すというのも難しそうだ。

 とりあえず進めるだけ進むかと、気分が悪くなりながらも歩みを進める。だが、そんな中でも女性は普段通りに軽快な歩みを見せていた。

 それが異様な光景なのはヒヅキも理解しているが、流石にもう慣れてしまって気にする事はない。いや、むしろ当然だとさえ思ってしまうほどには、今回の旅で格の違いを散々見せつけられていた。

 それでも、体調不良ぐらいはどうにかならないものかとヒヅキは考える。

 今向かっているのは最奥部。真なる魔物が複数体で水晶の欠片を守護しているという冗談のような場所。そんな場所で調子が悪いなど、是が非でも避けたいところであった。

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