表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1047/1509

テトラ145

「下まで開通しましたので、そろそろ下りましょうか」

「はい。……ですが、これはどうやって下りるのでしょうか?」

 穴の縁に立って見下ろすヒヅキ。視線の先には、底も見えない濃い闇が溜まっているだけ。女性の作業見ていた側としては、底を確認せずとも1度で開く穴の深さと時間を考えて、結構な深さになっている事が容易に想像出来た。

 そんな場所に下りるという。階段や梯子が在る訳でもなく、近くに縄を結べそうな場所もない。強いて言うなら守護者だったモノの残骸ぐらいだが、穴からは少し遠い。

「? 飛び降りるだけですよ?」

 ヒヅキの問いに、女性は不思議そうに首を傾げる。他に何か方法でもあるのかと言いたげなその表情に、ヒヅキは女性が本気で言っているのを理解した。

「結構深そうですが、大丈夫なのですか?」

 次いでヒヅキが口にしたその心配で、女性はヒヅキが何を気にしているのか理解したようで、「ああ」 と小さく声を漏らす。

「問題ありませんよ。この穴の底は時の狭間ですので、落ちたところで時の狭間に移動するだけです。時の狭間へはどう入ろうとも、前回のように横から出てくるだけですので安全です。まぁ、着地に失敗すれば捻挫ぐらいはあるかもしれませんが、それぐらいですね」

「そうなんですか」

「ええ。ですので、気にせず飛び降りてください。私が先に下りますので」

 そう言うと、女性はひょいと穴の中に身を投げ出す。そのまま落ちていった女性は直ぐに闇の中に消えていった。

「………………」

 女性が闇の中に消えるのを見届けたヒヅキは、若干躊躇しつつも、意を決して女性に倣って穴の中に飛び降りる。

 直後に全身を襲う浮遊感は、まるで魂を吸い取られるかのように感じた。

 しかしそれも一瞬で終わる。浮遊感は直ぐになくなり、投げ出されたというのが分かった。それと共に真っ暗な世界に女性の姿。ヒヅキは足下に気をつけながら、時の狭間の世界に無事に着地する。

「それでは最下層の在る世界に向かいましょうか」

「はい」

 ヒヅキが無事に着地したのを確認した女性は、そう告げて直ぐに背を向けて歩き出す。ヒヅキも慣れたもので、それに頷くと何事もなく後に続く。

 明かりの無い真っ暗な世界だが、歩くだけなら普通に地面を歩くように歩ける。周囲は真っ暗なので方向感覚がおかしくなりそうなのに、不思議と上下だけは理解出来た。

 相変わらず奇妙な世界だと思うも、ヒヅキでは理解出来ないので、そういうモノだと受け入れるしかない。今のところ害はないのだから。

 しばらく歩いていると、星が瞬き出す。前回女性の話していた別の世界というやつだが、今回ははじめから瞬いていなかったので、前回とは別の世界と言うのは本当なのだろう。

 女性は確かな足取りで進むので、こんなよく解らない世界でも道を知っているのだろう。そもそも道という存在がこの世界にも存在しているのかどうか分からないが。

 無数の光を横切り、ヒヅキは女性に案内されるがままに、先へ先へと進んでいく。

 時の狭間というだけに、この世界には時間という概念は存在しているのだろうか? などと益体もない事をヒヅキは考えながら進む。前回は外の方の時間も多少は経過しているような感じだったので、もしかしたら存在しているのかもしれないし、単に先の時間と繋がっただけかもしれない。

 つまりは分からないという訳で、やはり考えるだけ意味はないようだった。そんな無駄な事を延々考えていると、どうやら到着したようで女性が足を止めてヒヅキに告げる。

「この先が最下層です。では、行きましょうか」

 そう告げて女性が指で示した先に在るのは光ではなく、前回ヒヅキ達が出入りする時に通ったモノに似ているが、それよりかは黒い空間。

 それを見て、はてとヒヅキは一瞬思ったものの、しかし考えてみれば似ているのも当然なのかもしれないと思い直す。なにせヒヅキ達がこの世界を出入りする際に使用していたモノも似たようなモノだったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ