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テトラ144

 女性が部屋に入ると同時に動き出した守護者は、一気に距離を詰めて女性を襲撃する。しかし。

「終わりましたよ」

 女性との距離を半分程詰めたところで何かに上から押し潰され、一瞬のうちに出来の悪い背の低い像のような歪な金属の塊に変貌を遂げた。

 それはヒヅキの目でも完全には捉えきれなかった一瞬の出来事。上の階層で同じ光景を見ているとはいえ、それでもヒヅキは驚き口元が引き攣る思いを抱く。

 守護者を一瞬で前衛芸術に変えた女性は、首だけで振り返りそれだけを告げると、部屋の中を進んでいく。

 その後を追いつつ、動かなくなった守護者に目を向けたヒヅキは、そういえば元から変わった像だったなと思い出した。氷が解けたような見た目の像というのも個性的であろう。

 守護者が居た部屋もそこそこ広い。それでも箱の在った奥の部屋に比べれば、半分の半分といったところか。

 部屋に入った女性は、守護者が立っていた部屋の中央へと歩いていく。

「………………おや?」

 部屋の中央で足を止めた女性は、ひざを折って軽く床を叩く。そうして返ってきた音に、僅かに首を傾げた。

 それから、少し場所を移しては軽く床を叩くという動作を何回か繰り返した後、女性は腕を組んで思案する。

「場所が変わった? いえ、違いますね。これは本格的に埋めたと言った方が正しいでしょう。となりますと……」

 やや俯いてぶつぶつと独り言を口にした女性は、しばらくして顔を上げる。

「面倒ですね」

 考えた結果、女性はそう結論を出した。

「あの神の事ですから、先へ進む何かしら別の方法を用意しているのでしょうが、いちいちそれに付き合う義理もありませんね。元から掘り返す予定だったのです、それが多少手荒になるだけ。何の問題もありませんね」

 頷き自分の考えを自分で肯定すると、女性は守護者が立っていた位置に戻る。

 その後でもう1度床を何ヵ所か叩くと、立ち上がってスッと床に手をかざす。

 やった事はただそれだけ。しかし、それだけで人一人が余裕を持って通れる範囲の石の床が砕け、土の部分が露出する。

「ふむ? また随分と粗い仕事ですね」

 露出した土を目にした女性は、呆れてそう零した。

「まぁ、作業が楽になる分には問題ないですが」

 女性がそう口にしたところで、露出した部分に1メートルほどの深さの穴が開く。いや、穴が開いたというよりも、その部分の土が消失したと言った方が正しいだろう。それぐらい奇麗な穴が唐突に開いた。

 ヒヅキには何をしたのかさっぱり理解出来なかったが、とりあえず穴掘りは予定通りに行うようで、それから同じぐらいの深さで穴が掘られていく。

 次第に底が見えなくなってくるも、女性は穴の縁に立ったまま見下ろして作業を継続する。

 真っ暗闇の穴の中。ヒヅキも女性の向かい側から覗いてみるも、もう底で何が起こっているのか確認出来ない。それでも女性が動いていないので、穴掘りは続いているのだろう。

 その間、ヒヅキはやることがないので部屋の中を見回してみる。部屋の中は守護者以外は何も無く、がらんとしている。

 ヒヅキが見た限り罠のようなものはなさそうだったが、それがそこまで信用出来ないのは自分で理解していた。理解しているが故に、動き回らずにただ見回すだけ。

 壁際の明かりはこの階層であれば何処も同じだが、あれもあれでヒヅキは興味があった。

(あの人形の男が居た場所の奴とは違うのだろうか?)

 ドワーフの国から魔族領の森に行く切っ掛けとなった場所。見た目は違うが、そこにも火のような明かりを灯し続ける物が設置されていた。それも観察したヒヅキだが、やはりしっかりと学んだ訳ではないので、見ただけでは分かりそうもない。

 今更ではあるが、何処かで魔法道具について学んだ方がいいのだろうかとヒヅキが考えたところで、女性がヒヅキに声を掛けた。

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