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テトラ142

 階段はそれほど長くなかったようで、直ぐに第5階層に到着する。

 到着した第5階層は見るからに人工的な石造りの場所で、壁際には火のような見た目の魔法道具が一定の間隔で並んで階層内を明るく照らしている。おかげで光球は必要なかった。

 ヒヅキは光球を消した後、女性に続いて真っ直ぐ伸びる通路を進む。階段を下りて直ぐの位置からでも奥の部屋が確認出来るぐらいに、第5階層は明るく狭い。

 奥の部屋に行く途中に左右に部屋がひとつずつ在った。右側には、第2階層で戦ったのと同じ像が広い部屋の中央にぽつりと設置されている。見た目があまり変わらないので、それが守護者で間違いないだろう。違いといえば、手にしているのが棒から剣になっているぐらいか。それも深い青色で刃が鋭く光る、見るからに立派で美しい剣。

 それだけでも気圧されそうなほどの存在感がるので、これは第2階層に居た守護者よりも強いのかもしれない。と、自然と思わせるほど。

 見た限り部屋の中には他に何も無く、地下への道が埋め立てられたというのは、女性に話を聞いていなければ分からなかっただろう。

 そんな守護者が居る部屋の反対側、転移魔法陣が在るという左手の部屋には何も無かった。

 転移魔法陣は起動しない限り見えないらしいのでそれはしょうがないが、それにしても、仮にこんな何も無い部屋に不用心に入る者が居るのだとすれば、それは余程の考えなしか、好奇心旺盛な考えなしだろう。

 何にせよ、第5階層まで辿り着けたのは遺跡を攻略した者のみらしいので、この転移魔法陣の罠に嵌った考え無しは存在しないらしいが。

 この部屋は後でヒヅキが転移魔法陣の観察をする為に使用するつもりだが、その前に、まずは奥の部屋で宝を手に入れるのが先だろう。

 明かりで闇が隅に追いやられている通路を進み、直ぐに最奥の部屋に到着する。通路自体そんなに長くはなく、100メートルほどしかなかった。

 部屋の中は人工的に奇麗に整えられた石室で、部屋の広さは無駄に広い。一辺が通路よりも広いのではないかと思われる四角い部屋の中央には、縮尺を間違えているとしか思えない小さな台座が在った。

 いや、小さいと言っても石を積み上げて造られた5メートル四方の立派な台座なのだが、部屋が広すぎてとても小さく見える。

 その石で出来た台座の上には木製の箱が置かれていた。見た目が廃材を利用したような粗末なものなのは疑問に思うが、女性に案内されてヒヅキが近づいてみると、ところどころ金属で補強されていて、見た目に反して頑丈そうな造りをしていた。

 箱は上部が横に取りつけた扉のように後ろに開く仕組みになっているようで、罠が無いのを調べてからゆっくりと上部を持ち上げて箱を開ける。すると、中には女性の説明通りに1面の鏡が収められていた。

 その鏡は、手のひらほどの大きさの鏡面の付いた手鏡で、鏡面部分には鏡面を保護する覆いが取り付けられている。

 覆いは手鏡の上部に吊るすように取り付けられており、鏡を使用する際には裏側に捲るように動かして、簡単に固定出来るようになっていた。

 手鏡自体それほど大きくはなく、手のひらぐらいの鏡に、こぶし1つ分程の長さの持ち手が付いているだけ。鏡を嵌め込んでいる部分は余白が少ないので、大きさは鏡面とそれほど変わらない。

 持ち運ぶには不便というほど大きくはないので、背嚢に入れておいてもそこまで場所を取らないだろう。割れないように気をつけなければならないが。

 ヒヅキは鏡を手に入れると、早速自身の顔を覗き込んでみる。そこには何処か眠そうな黒髪の青年の姿が映る。つまりはヒヅキの姿なのだが、なんとなく違和感を覚えた。

 何だろうかと思い、鏡の中の自分を注意深く観察してみる。頻繁に自身の顔を確認している訳ではないから、変化があっても気づかないかもしれないが、それでも記憶に在る自身の姿と比較してみる。

 以前に見たヒヅキ自身の顔といっても、道中水に映った自分の姿とかで、はっきりと確認出来たのはガーデンでぐらい。なので、多少の変化ぐらいはあるだろうし、当時の記憶もあやふやだ。

 それでもジッと鏡の中の自身の姿を確認していると、違和感の正体に気がつく。

(輪郭が僅かにぶれている?)

 常時という訳ではないが、ジッと鏡を見ていると、時折顔の輪郭部分が水面をそよ風が撫でたかのように僅かに揺らぐのだ。

 最初は気のせいかとも思ったが、ずっと見ていると時折顔の輪郭部分が僅かに動いているのが確認出来た。

 ヒヅキはなんだこれはと思ったが、答えは分からない。女性の説明曰く、この鏡は真実の姿を映し出すという話だったが、輪郭が一瞬曖昧になるなんて効果は聞いていない。

 それが真実の姿だと言われても意味が分からないので、ヒヅキはとりあえず他も映してみようと思い、後ろに立っていた女性の方へと鏡面を傾けてみた。

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