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テトラ139

 階段を下りて直ぐの場所では、光球の明かりだけでは部屋の全容は窺えない。気配を探ってみても近くに魔物は居ないようだが、女性は立ち止まったまま周囲を警戒するように見回している。

「どうかされましたか?」

 そんな女性に、ヒヅキは声を掛ける。何か気になる事でもあったのだろうかと思いながら。

「この階層から罠が仕掛けられているのですよ」

「罠?」

 女性の返答にヒヅキは、それならば第1階層の時に魔物を集める罠があったようなと思ったものの、あれとはまた趣が違うやつなのだろうと思い直す。

「落とし穴や槍が飛び出してきたりなどの、魔物とは関係なく命を狙いに来る罠ですね」

「なるほど」

 その説明に、ヒヅキは納得したと頷く。

 思い返してみても、今のところそういった罠はなかった。女性が避けていたという可能性もあるが、女性の言葉通りならば仕掛けはなかったのだろう。

 程なくして周囲を見回していた女性が歩き出す。ヒヅキはその後に続き、念のために出来るだけ女性が通った道をそのままなぞって進む事にする。

 女性は上の3層の時と変わらず迷いない足取りなので、おそらくこの階層の道も知っているのだろう。

 真っ直ぐ順路を進む女性の後に続き、ヒヅキは光球が照らす範囲で周囲を確認していく。

 第4階層は、第1第2階層同様に広い場所のようで、光球の明かりだけでは全てを把握する事は叶わない。

 天井は高く、光球の明かりがギリギリ届くかどうかといった高さ。通路の天井は明かりが届くのだが、部屋の天井は通路の天井よりも高いらしい。

 壁は部屋も通路も蔦のようなモノが一面覆っており、岩肌がほとんど見えない。だというのに、床や天井には蔦は全く覆っていないようだ。

 その蔦が何の蔦かは不明だが、色は明るい灰色をしているので、まるで石の蔦のようであった。

 気になったヒヅキが蔦の事を女性に問うと、どうやら植物ではあるらしい。その際に触らないように注意されたが、何でも毒を持っているとか。よく見ると、細かな刃物が張り付いているかのようにささくれた表面が確認出来た。触れたらこの鋭利な部分で細かな傷を付けて、相手の体内に毒を混入させるのだろう。

 先頭を歩く女性は、時折蛇行するように進み、足下を指して罠がある事を告げてくる。

 ヒヅキはそれを避けながら指摘された部分を観察するも、岩肌そのままの凸凹とした床が目に映るばかりでよく分からない。見た目には周囲と異なっているようには思えないが、女性には何が見えているのだろうか。

 そうして幾つもの通路と部屋を進む。造り自体はどの階層も同じらしい。確かに事前に聞いていた通り横道が少なくて複雑な造りではないようだが、しかし大きいというだけで簡単とは言えない。

 どれだけの時間が経過したかは地下では分からないが、それでもそれなりに進んだ事だろう。しかし、この階層ではまだ魔物と遭遇していなかった。ヒヅキの感知魔法には反応があるのだが。

「魔物が居ませんね」

 疑問に思ったヒヅキは、思いきって女性に問い掛けてみる。困った時に問い掛ければ大抵答えが返ってくるというのは有難い。

「奥の方で固まっていますからね。ですが、何体かは遭遇しましたよ? 戦闘にはなりませんでしたが」

「そうなのですか!? 気づきませんでした……」

 女性の返答に、ヒヅキは普段よりも大きな声を出してしまう。警戒していたのに知らぬ間に魔物と遭遇していたなど、それぐらいの衝撃があった。

「壁や天井に床。そこに隠れていたり、擬態していたり。もっとも、これらは罠が起動しなければ活動を停止したままですので、感知は非常に難しいかと」

「そうですか……しかし、活動を停止ですか?」

「この遺跡ならではですね。仮死状態で保存されているのですよ。罠が起動するのを合図に、目を覚ますといきなり襲い掛かってきます。結構強いですが、戦ってみますか? 興味があるのでしたら、そういった類の罠を起動させますが」

「いえ。その必要はありませんよ」

「そうですか」

 前を歩きながら女性は淡々とそう口にするが、ヒヅキとしてはそんな面倒事は避けたいので直ぐに拒絶する。

 女性も強要するつもりはなかったようで、それにあっさりと引いてくれた。

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