護衛任務10
朝食を終えて陣を引き払った一行は、一路ロック城塞を目指して歩みを進めた。しかし、直ぐにガラガラと鳴る荷車の音が鈍くなる。
ヒヅキたちが現在進んでいる場所は、半ば砂漠と化している荒野で、ここを抜ければロック城塞のある平野に辿り着く。
荒野自体はさほど広くはないのだが、如何せん日中の暑さが今まで進んでいた平野より少しだけキツく、休息を増やそうにも、干からびて所々砂と化している荒野では、木陰も水源となる場所も容易には見つかりそうもなかった。
一行は、貴重な手持ちの水を少しずつ少しずつ大事に飲みながら、途中で軽く穴を掘ったり、簡易天幕を張ったりなどして、陰を人為的に作ってはそこを休息場所として休憩を挟む。
そうやって進み、昼も大分過ぎた頃には何とか荒野を抜けて平野に辿り着く事が出来た。
そのまま小さく見えてきたロック城塞を目指して歩みを進める一行の速度は、さすがに目的地が見えているからか、それとも早く休みたいからか、荒野を抜けた後とは思えぬほどに速くなる。
そのままロック城塞を目指して進み、陽が完全に落ちる前には何とか予定通りにロック城塞に辿り着く事が出来た。
ロック城塞でもコント砦同様に軽く身体検査や荷検めを受けてから、城塞内に入ることを許される。
そして、そのまま城庭に通された一行は、ここでもシロッカスと武器輸送責任者、護衛兼護衛責任者としてムゲンが、ハーミット第5王子に報告を済ませるために城の中へと案内される。
コント砦と違い、これは直ぐに終わった。
その後は、ハーミット第5王子の指示で人足たちの宿泊用に解放された一画に連れていかれると、数人で一室を宛がわれ、部屋の中には寝具類のみが用意されていた。
どうやら明日には食料や消耗品などの補給も問題なく受けれるらしく、長旅で疲れていたヒヅキたちは直ぐに就寝したのだった。
◆
翌日。
朝早くに起きたヒヅキは、部屋の外で軽く身体を動かして、しっかりと目と身体を覚ます。
それに区切りをつけたタイミングで、ぞろぞろと部屋から人足たちが起きてきた。
そして、各自が朝の仕度を済ませた辺りで、見計らったかのようにロック城塞の兵が、ヒヅキたちの朝食が準備出来たという報告にやって来る。
「今回はちゃんとした寝床に朝食も付いてくるんだなー」
兵士に先導されての移動中、ヒヅキの隣に並んだシラユリが、どことなく皮肉めいた物言いで呟いた。
「そうですね。台所事情などもあるでしょうが、ところ変われば、というやつでしょうか」
「ところ変わればというよりも、頭変われば、じゃないー?」
にこりと微笑みながら見上げてくるシラユリに、ヒヅキは軽く肩を竦めてみせる。
それに若干気分を良くしたのか、シラユリは僅かに笑みの質を変えて前を向いた。
それから少し歩き、やっと食堂に着いた頃には、すっかり朝になっていた。