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テトラ133

 移動を再開した女性の後を付いていくと、程なくして部屋に到着する。それと同時に、道が通じていたらしくヒヅキ達の移動に付いてきていた魔物も部屋の中へと入ってきた。

 ぽよぽよと跳ねるようにして入ってきたのは、球状の柔らかそうな物体。その後から這うように似たような魔物も入ってくる。

 数は全部で4体。跳ねようと這おうと速度はそれほど変わらないらしい。

 その魔物を光球が照らし出したところで、ヒヅキはああと小さく声を漏らした。女性の話を聞いた時に覚えがあるようなと思ったのは、正しかったようだ。

 姿を現した魔物は、女性を救出した洞穴に出てきた神の残滓で創られたとかいう相手によく似ていた。もっとも、目の前に居る魔物の方が愚鈍なようだが。

 しかしそうなると、疑義が生じる。何せ女性はこの魔物についてこう説明したのだ、『この階層以外には存在しない」 と。だが、ここは神の創った遺跡である。洞穴の相手も神の残滓らしいので、あながちありえない話ではないのかもしれないが。

(そうなった場合、これを創造したのは神という事になるのか?)

 そう考え、間違ってはないような気もしてくる。いや、おそらくそれも正解なのだろう。

 とはいえ、今はそんな事を考えている時ではないと思い直し、魔物に集中する。

 魔物の移動速度は、赤子が這うぐらいの速度。決して速くはないが、油断していると足下まで接近を許している、なんてことになるだろう。それに女性の説明では、この魔物は木以外は何でも溶かす体液を飛ばしてくるという話であった。

 光の剣を構えて戦闘体勢を取りながら油断は出来ないと思いつつも、前に居る女性の方に視線を向ける。

 その背をどう出るのかと見詰めていると、女性は両手を胸の高さまで持ち上げ、そのままぱちりと両手を合わせる。そうすると、近くまで迫ってきていた魔物が全て同時にべちゃりと潰されたように弾けてしまった。

 体液はほとんど飛び散らなかったので問題ないが、女性は一体何をしたのか。似たような光景を何度か見た覚えがあるヒヅキとしては、なんとも言えない表情を浮かべてしまう。

 便利なものだと思いつつ、現出させていた光の剣を消して一息つく。

「先程の魔物ですが」

「はい?」

 周辺にもう魔物の反応がないのを確かめた後、ヒヅキは女性に声を掛ける。

「以前にも見た覚えがあるのですが」

「何処でですか?」

「貴方が動かなくなっていた洞穴でです」

 ヒヅキがそう説明すると、女性は1拍間を置いて思い出したようで、「ああ」 と頷く。

「それでしたらおそらく同じではなく、こちらの方が下位の存在ですね。向こうは神の魔力に強く影響されていたでしょうから、強くなっていたでしょうし」

 どうやら女性はあの場に居たが相手は見てはいないらしい。あの時の女性は弱っていたので、感知系も今ほど機能していなかったのだろう。

「という事は、あれは魔物だったという事でしょうか?」

「それはまぁ、難しいところですね。例えば今倒した魔物ですが、あれでも核となる存在が居るので魔物と言えますが、あの場で発生した存在は神の魔力が固まって出来たという可能性もありますから」

「そうなんですか。ですが、さっきの魔物の上位存在なのでは?」

「ええ。成り立ちを考えればそう言えるかと。ただ、核の有無がありますので、上位存在だからと魔物と括るのも如何なものかと。上位個体の中には、進化した場合その前の種とは異なる存在になる場合もありますから」

「なるほど」

 進化、つまりは元の種から変化するのだから、そうなってもおかしくはないのだろう。あまり細かなところまで聞いたところで役に立つとも思えないので、ヒヅキはこの辺りで話を切り上げる事にした。

 女性の方も他に話す事も無いようで、会話はそこで自然と終了した。

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