表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1034/1509

テトラ132

「まぁもっとも、通常であれば取り込んだ魔力が限界に達する前に外に放出されますがね。許容量を越えて内から破裂なんて事は、余程一気に体内の魔力が増えた時ぐらいでしょう。余剰分の魔力を外に放出するにも時間が掛かりますから」

「そうですね」

「ただ、この階層の魔物にはそういった知能も制御も無いので、食べたいだけ食べるのですがね。しかし、それは魔物で溢れた場合で、通常であれば同種の魔物は捕食しませんよ」

「別の魔物であれば捕食するのですか?」

「ええ。遺跡内部の魔物の数が減った場合はその限りではありませんが」

「それは上に魔物が移動するからですか?」

「そうですよ」

「それはどうやって判断しているのですか?」

 遺跡内部で魔物が減った場合に限り他の魔物を食べないというのは、遺跡全体として見た場合は理解出来るが、しかしそれを個別に判断するには、明確な命令系統が存在しているか、遺跡内部の情報が直ぐに判るようになっていなければならないだろう。

 そして、今まで遺跡内部を探索した限りではあるが、そういった設備は発見出来ていない。なので、何かしらの命令系統が存在しているか、遠話のような方法で情報の共有がなされていると思われた。

(神が創った遺跡。であれば、命令系統が存在していてもおかしくはないが……)

 女性に問い掛けながらも、ヒヅキは自分でも思案してみる。

「魔力濃度の変化を感じ取っているのです」

「魔力濃度の変化ですか?」

「ええ。魔物は濃い魔力を帯びています。歪な魔力ではありますが、魔物は魔力を放出して周囲を自身と同じ環境に変化させるのです。変化の規模はとても小さいですが、魔物と対峙した事があるヒヅキなら理解出来ると思いますよ」

「あの重たいような魔力ですか?」

「ええ、そうです。あれは魔物が存在している場合は魔物の周囲にしか展開されていないのですが、魔物が消失した場合に周囲に拡散してしまうのです。ここのように区切られた場所でも数体程度であればそこまで大きな変化はありませんが、それ以上となると変化が大きく、魔力濃度が上がると直ぐに近くの魔物に伝わり、その魔物が移動した後は魔力が魔物の居る方へと吸われてしまうので、今度は逆に魔力濃度が下がってしまうのです。それを察した魔物が移動して……といった感じで遺跡全体の数を維持しているのです。下の方まで伝われば、時の挟間にある魔物創造の装置が補充してくれますから、一定数に保たれるという事です。そして、ここは上や外の変化が伝わりやすい場所なので、魔物が察知しやすいという訳です。それに、面倒な事にここの魔物は他の魔物を呼ぶ事も出来ますからね」

「魔物が魔物を呼ぶのですか?」

「ここの魔物は魔力も捕食しますので、緊急時は魔力を大量に捕食して魔力量を減らすのです」

「なるほど。それは厄介なものですね」

 ヒヅキは頷きながら、では、上で魔物を大量に消滅させたのは不味かったのではないかと思う。それを察したのか、女性はひとつ頷いた。

「もう少ししたら下から魔物が上ってくる頃でしょうね」

「それは不味いのでは?」

 上に居た魔物は結構な数を斃している。であれば、下からやって来る魔物の数もかなりの数になると予測出来た。もしそんな大軍に遭遇してしまうと、女性であれば問題ないだろうが、また大量に魔物を滅する事になる。

「いえ、逆にこれでいいのです」

「?」

「先程の説明に戻りますが、魔物の移動には順序があります。魔物の数が減り、それを察して他所の魔物が移動する。そうして魔物が移動した後、更に他所から魔物が移動していく。そして最後に、時の狭間から魔物が補充されるのです。なので、魔物の移動後は、一時的にその場の魔物の数が減少しますので、下からやって来る魔物を避けさえすれば、下の魔物の数を減らす事が可能なのですよ」

「なるほど」

「もっとも、移動してくる魔物は大抵その階層でも弱い魔物なのですが」

「そうなのですか?」

「ええ。魔力濃度の変化に敏感なのは、周囲を特に警戒している個体ですからね」

「なるほど」

「それでも少ない方が探索が楽ですから」

 そう言うと、女性は小さく笑って移動を再開した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ