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テトラ131

 理解出来ないのであれば、今は後に回せばいい。それよりも情報が欲しいと考えたヒヅキは、変に口は挿まずに、まだ続きがある様子の女性の言葉に耳を傾ける。

「ですが、この階層に在る魔物を創造している装置は、時の狭間に設置されているのです」

「時の狭間ですか?」

「ええ。この階層の何処かの部屋がその場所に繋がっていまして、そこから定期的に魔物が生み出されているのです。もっとも、その間隔はそこまで短くはありませんが」

「そうなのですか。それで、その時の狭間と繋がっている部屋はご存知で?」

「いえ。この階層の部屋全てがそうであり、違いますから」

 その女性の言葉を吟味したヒヅキは、考えだした答えを口にする。

「……決まった場所には無いという事ですか?」

「ええ。この階層の部屋全てに所在が移動していますので、運がよくなければ中々見つけられないでしょう。それに、見つけても直ぐに移動してしまいますので、装置の破壊は難しいかと。それと、何処かの部屋で待ち構えていた場合、その部屋には移動してきません」

「では、数で探すしかないのでしょうか?」

「そうですね。しかし、一定数が部屋やその周辺を占領した時点で時の狭間への道が隔絶してしまうので、それも難しいですね。その場合は魔物は渡ってきませんので、魔物の封印は可能でしょうが」

「しかしその場合は、その場に留まり続けなければならないのでは?」

「ええ。でなければ、渡らずに溜まった魔物が溢れてくるでしょうね。まぁこの階層の魔物であれば、実害はここを通って下へ行けなくなる程度でしょうが」

 この階層の魔物は別階層へと移動しないという事は、いくら装置から大量の魔物が溢れてきたとしても、それはこの階層内に限る話なのだろう。

「その時はどうなるのでしょうか? 魔物が増えればどうしても下か上に溢れてしまうのでは?」

 注ぎ過ぎた水が溢れるように、魔物が階層一杯になった時についてヒヅキは疑問に思った。もっとも、今現在の階層の様子を思えば、何かしらの方法で一定数を保っているのだろうが。

「最初に話しましたが、ここの魔物は木以外は溶かしてしまうのですよ。それは捕食する為でもありますが、ただ魔物が存在するだけで触れたモノは溶かしてしまうのです」

 そう返した女性の言葉で、ヒヅキは納得する。つまりは、ここの魔物は同じ魔物同士でも溶かしてしまうという事なのだろう。なので、どんなに増えても魔物同士が接触しない範囲が保てる数になるという事らしい。

「魔物が魔物を捕食した場合はどうなるのですか?」

「普通は起きる現象ではありませんが、仮にそれがここの魔物ですと、捕食した相手の魔力を幾ばくか取り込む事になるでしょうね。もっとも何百と捕食しても、元からの数パーセントも増えないでしょうが」

「それでも、長年そうしていけば強い魔物になるのでは?」

「その仮説は正しいですが、魔物にも限界がありますからね。強くなると言いましても限度があります」

「限界?」

「まぁ、ヒヅキが無限に料理を食べられる訳ではないのと同じですよ。魔力にも内包できる限界というモノが存在しているのですよ」

「そうなのですか」

「普通はその器自体が大きくありませんが、余った魔力は世界に発散されるので、限界に達するような事態には陥りません。なので、そこがその魔物の限界という事です」

「なるほど。因みに、限界以上に魔力を溜め込んだ場合はどうなるのですか?」

「内から破裂するとか、身体が負担に耐えられなくて衰弱するとかですかね。基本的に限界まで魔力を溜めるという事を意識して出来る者は少ないですよ」

 ヒヅキを見ながら、女性は小さく微笑む。訳知り顔なその笑みが、ヒヅキはどうも苦手だ。

 しかし、女性は気づいているのだろう。ヒヅキが余っている魔力を少しずつ溜め込んでいる事を。

 それはヒヅキの器が大きいから出来ている事であり、そうしている理由は、勿論光の魔法を問題なく運用する為であった。

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