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テトラ129

 ヒヅキは次の通路を進みながら、集中して周囲を探る。少し前から魔物の気配が近くから感じられるが、どうも壁の向こう側のようだ。そちらにも通路か部屋があるのだろう。

 魔物の方もヒヅキ達に気がついたようで、ヒヅキ達と同じ速度で一緒の方向に動いている。魔物との距離が壁の厚さであれば、壁は結構分厚いようだ。なので、壁を抜けてやって来るなんて可能性は低そう。仮にそうなっても感知は容易なので問題ないが。

 ヒヅキは前を進む女性の様子を窺うように後頭部に視線を向けるも、女性がそれを気にしている様子は無い。気づいていない訳がないので、問題視していないのだろう。もっとも、女性であれば奇襲されても心配ないだろうが。

 壁の向こう側から感じる魔物の気配から判断すると、やはり身体は小さいようだ。だが、その分濃密な気配のようで、魔力で形がはっきりと浮かび上がっている。

 あまりの密度に壁を越えて影響してきそうな感覚さえするほどだが、そのおかげで難なく捉える事が出来た魔物の形は、やはり上の階層に居た魔物よりも小さく、形としては丸みを帯びてはいるが、手足のような突き出している部分があるので人型に近い気もする。しかし、それでも幼児程度の大きさしかない

 とはいえ、判るのはそれぐらい。細かい情報はもっとゆっくり出来るところからでなければ分からない。

 通路は相変わらずの木目調で、触れたり軽く叩いてみたがやはり木で間違いなかった。ただ、第2階層に在った教会の扉のように木のような金属である可能性もあるので、ヒヅキは女性に問いかけてみる事にした。

「ここの階層の壁や床や天井は木で出来ているのですか?」

「そうですよ」

「木金属とかいうのではなく?」

「ええ」

「何か特別な木なのですか? あの世界樹? とかいう樹のような」

 上の階層で聞いた話を思い出しながら、ヒヅキは女性へと問いを重ねていく。

「いえ。ここの木は遺跡の上、地上部分に広がっていた森に生えている木々と同じですよ」

「同じ? 普通の木しか生えていなかった覚えがありますが……」

「ええ。ここで使われている木は普通の木ですよ。この階層内に限り、腐敗しないように施されてはいますが」

「そうなんですか。ですが、何故わざわざ木で覆っているのですか? 他の階層では見ませんでしたが」

 上の階層で見た木は、椅子や本棚などの家具類ぐらい。扉は木ではあったけれど、同時に金属でもあったようだし。

 その木製の家具も、大半は腐っていたり風化して形を保っていなかった。しっかりと形が保たれていたのは、あの魔物が居た教会ぐらい。

 なので、わざわざ腐敗を防止してまで木を使用する意味が解らなかった。それも階層中だと思われる広範囲に。

「それは他の階層では必要ないからですよ」

「何故です?」

「この階層に住まう魔物が木以外を溶かしてしまうので、木を敷かなければ遺跡が崩壊してしまいますから」

「木以外を溶かす?」

 聞いたことのない特性に、ヒヅキは訝しげに問い掛ける。事実であれば非常に厄介そうな特性であった。

「知らないのも当然ですよ」

 ヒヅキの様子から考えを察したらしい女性は、その魔物について話す。

「その魔物はここにしか生息していませんから。この魔物に限って言えば、この階層から出る事はありませんので」

「そうなのですか?」

「先程も言いましたが、この階層以外に出すと遺跡が崩壊しかねないので」

「なるほど。それは確かに」

 女性の説明に納得するヒヅキ。木以外を溶かしてしまうのであれば、この階層以外に出してしまうと穴が開いてしまう。大きさにもよるのでそれで崩落が起きるとまでは言わないが、下までの近道が出来てしまう事になりかねない。

「それはどんな魔物なのですか?」

 壁を挟んだ向こう側に居るであろうその魔物について、ヒヅキは女性に説明を求める。厄介そうな相手なので、対峙する事になった場合の注意点も知っておかなければならないだろう。

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