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テトラ127

 形に関しては、正直邪魔にならなければ何でもよかったので、話に出たついでに選んだ腕輪でもよかったのだが、それでもそこに組み込む魔法となると話は別だろう。

 ヒヅキは難しい顔で思案するも、それで妙案が浮かぶ訳ではなし。そもそもどんな魔法が組み込めるかも大まかにしか分かっていない。

 そうして悩んでいるヒヅキを眺めていた女性は、頬に手を当てて僅かに考える仕草をした後、ヒヅキに1つの魔法を提案する。

「そこまで悩まれるのでしたら、転移の魔法は如何でしょうか? 組み込めるのは短距離移動になってしまいますが、便利ですよ。魔法道具でしたら魔力消費量が抑えられますし」

 どうしようかと悩んでいたヒヅキは、女性の提案に勢いよく顔を向ける。

「出来るのですか!?」

「その金属でしたら可能ですよ。少々複雑ではありますが、その金属はそれだけ優秀な素材なので」

「そうですか……えっと、1度の起動でどれぐらいの距離を移動が出来ますか?」

 女性の提案に驚愕したヒヅキだったが、直ぐに落ち着いて性能について質問する。転移魔法の組み込みはとても魅力的な提案ではあるが、使い難ければせっかくの転移魔法も無用の長物だ。

「腕輪の大きさにもよりますが、目安としましては最長で1キロメートルほどでしょうか。この辺りは込める魔力量により調節が可能ですよ」

「消費魔力量は?」

「最大まで魔力を籠めて転移魔法を起動させたとしまして、ヒヅキが光の剣を数秒顕現させた程度ですかね」

「そんなに少ないのですか?」

「ええ。魔法の大部分を陣に担わせればそれぐらいですよ。その分寿命も短くなりますが、この金属でしたらその心配も不要でしょう。毎日転移魔法を数回起動させたとしましても、エルフの寿命よりも長く保てるでしょう」

「そんなにですか……」

 仮に一般的な金属で作った腕輪に転移魔法を組み込めたとしても、おそらく1度の使用に耐えられるかどうかといったところだ。それを毎日のように使用しても100年以上は問題ないなど、破格もいいところだろう。

 その事にヒヅキが驚愕していると、女性は近くに置いていたヒヅキが棄てた金属の塊に手を伸ばし、それを片手で持ちあげる。ヒヅキでも両手で抱えるようにしてでないと持てないような重い金属だが、女性にとっては軽い物らしい。見た目は細腕なのだが、何処にそんな力があるというのか。

「本来この金属はそれだけの価値が在るのですがね。まぁ、それを鍛える技術が失われているのであれば、こうして精製されていても無意味でしょうが……これを鍛えられる優秀な技術者が居れば、もしかしたら更に倍は移動距離を稼げたかもしれないですね」

 残念そうに呟かれた女性の言葉に、ヒヅキは何と返せばいいのか困ってしまう。そんな技術はとうの昔に途絶えている事だろう。

「それにしても微量とはいえ、夢の欠片が入っている金属ですか。これは今代の神が手を加えたのでしょうが、一体何処から?」

 指の背で軽く金属を叩きながら、女性は難しい顔で思案する。だが、情報が無いのに答えに行き着きようがない。それでも幾つか予測は立てられるが。

 それから少しして、驚きから戻ってきて思案したヒヅキは、女性に腕輪の製作と魔法の組み込みを依頼した。

 その依頼を女性が了承すると、二人して立ち上がって下の階層へと下りる事にした。

 守護者が護っていた階段は、見た目以上に中が狭く暗い。高さはそうでもないのだが、階段の幅だけは人一人通るので精一杯だろう。

 直ぐに部屋からの明かりが届かなくなり暗くなると、ヒヅキが光球を出して周囲を照らす。

 それから何事も起きないまましばらく下りたところで、次の階層に到着する。第3階層は第2階層と違って真っ暗であったが、地下では本来そちらが普通なので、それは気にせずヒヅキは周囲に目を向けた。

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