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テトラ124

 飛び出すと同時に棒を突き出す守護者。それに反応してヒヅキは横に跳ぶも、それに反応した守護者は、突き出した棒の先端部分を直角に曲げる。

「なっ!」

 何でもありかと内心で舌を打ちながら、ヒヅキは追いかけてきた棒の先端に光の剣を合わせる。

 そのまま身体を捻って棒を弾くと、棒の動きが止まった一瞬の隙に守護者の方へと駆けていき、あっという間に守護者の懐に飛び込む。

 ヒヅキは姿勢を下げた状態で守護者の眼前まで潜り込むと、光の剣を左下から右上へと振り上げる。

「……本当に何でもありだな」

 口の中で転がすように毒づきながら、守護者が棒から離して振るってきた左腕を避ける為に、ヒヅキは思いっきり跳び退く。

 光の剣が通過した部分は奇麗に切断出来たのだが、守護者は上下で分かれても崩れる事はなく、それどころか上部に至っては浮遊していた。しかもそれだけではなく、徐々に上下を繋ぐように切断面から身体と同じ色の太い糸状のモノが引き合うように伸びている。

「斬るだけでは駄目という事か」

 光の剣で倒す為に考えられる事といえば、くっ付けないぐらいにバラバラにしてしまうとか、切断して各部位を隔離するとかだろうか。

「という事は、魔砲の出番となるが……」

 斬っても再生するというのであれば、身体ごと消し飛ばすしかないと考えたヒヅキは、素早く現在居る部屋の広さを確認する。

(広さだけでいえば十分だが、魔砲を放つと同時に部屋から出たいところ。とはいえ、奥の階段が瓦礫に埋もれてしまったら元も子もないか……)

 最小の威力であれば何とかなりそうな広さではあるが、奥に階段がある事を思えば、中々威力のある攻撃をするのも難しい。

 数秒で完全に上下がくっ付いた守護者を睨みながら、ヒヅキは必死に思考を巡らせていく。そうして考えた結果、1つの答えを出す。確実に成功するだろうが、出来れば選びたくなかった選択。それは即ち。

「守護者の相手をお願い出来ますか?」

 女性への丸投げである。ヒヅキでも倒せない訳ではないだろうが、相性があまりよくない為にかなり力を振るわなければならないと考え、それでは被害が大きくなりすぎると判断しての最善手。

 ヒヅキからの要請を受けた女性が「ええ、勿論」 と気楽に了承すると、今にもヒヅキの方へと向かってきそうだった守護者は、上からの見えない力によってぺしゃんこになってしまった。

 それは一瞬の出来事であった。女性が了承して1秒か2秒経ったかどうかという短さ。

「……………………」

 再生どころか動きもしない守護者を10秒程呆けるように眺めたヒヅキは、隣に歩いてきた女性の方へと顔を向ける。その顔には、一体何をしたのかという疑問が浮かんでいた。

 それを目にした女性は、困ったように肩を竦めてから、守護者だった金属の板を指差して口を開く。

「ただ潰しただけですよ」

 簡潔に述べられた説明に、ヒヅキは何と言えばいいのか分からなくなった。正直、直ぐにでもそんな事は見れば分かると言ってやりたかったが、混乱していたのだろう。呆れてもいただろうし、幾つもの感情が渦巻き、結果として上手く言葉に出来なかった。

 それを知ってか知らずか、女性は守護者だった金属の板へと近寄ると、それを見下ろしながらヒヅキへと声を掛ける。

「これ、どうしますか? 多少でも持って帰ります? 今回の守護者はちょっと特殊な金属が混ざっていたようですが」

「……特殊な金属?」

 唖然としていたヒヅキだが、女性の言葉に我を取り戻して首を捻る。鉄や銅などのありふれた金属ではないとは思っていたが、女性が言うほどの特殊な金属とはなんだろうかと。

「ええ。これは……少し夢の欠片が混入していますね」

「夢の欠片……」

 女性の言葉に、ヒヅキは教会に在った頑丈な扉を思い出す。確かその扉の材料のひとつが夢の欠片だと言っていた。

「それに粘菌金属に操糸の蜘蛛を粉にしたモノ。更に…………無駄に豪勢ですね。明らかにここに置くような性能ではないでしょうに」

 ヒヅキにはどうやったのかはまるで分からないが、女性は金属の板を見下ろしながらそれの素材を口にしていく。それも段々と呆れが混じり、最後には思いっきりため息を吐いて首を横に振っていた。どうやらおかしな性能を秘めた守護者だったらしい。その証拠に、女性はヒヅキの方へと首だけで振り返り、感心したように一言告げた。

「よく死ななかったですね」

 それは心からの賞賛の言葉なのだろう。ヒヅキが今まで聞いたことのない女性の声音に、知らず背中に冷たい汗が伝っていく。

「はは」

 ヒヅキはそれを理解して、思わず苦笑めいた乾いた声を漏らした。

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