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テトラ123

 ヒヅキが油断なく光の剣を構えながら守護者に近づくと、両者の距離がおよそ5メートルまで近づいたところで守護者が動き出す。

 溶けた彫像。そんな印象だった守護者は、手足を動かし動き出す。手には細い棒を持っているが、他には何も持ってはいない。勿論、防具もつけていないが、女性が守護者は金属の塊だと言っていたので、身体自体が硬質なのだろう。

 動きはとても滑らかで、創られた存在だとは思えない。それでいて、動き出してから醸している気配は不気味なもので、動かない時に感じた儚さは、今では得体のしれない気味の悪さに変わっていた。

 滑るように横に動く守護者を目で追い、ヒヅキは知らず喉を鳴らす。この守護者に関しては、この階層のどの魔物よりも明らかに上であった。それこそ、スキアよりも上かもしれないほど。

(得体の知れないというのは厄介だな)

 少なくとも相手が生物であれば、ある程度は動きも予測も出来るだろう。骨格や筋肉の付き方なんかが見た目と極端に違うなんて事はそうそうないだろうから。

 しかし、今相手にしているのは魔法道具。生き物ですらない。仮に生き物であればまず出来ないであろう挙動をしたとしても何ら不思議ではない存在。

 今までもそう言った存在が居なかった訳ではないが、それでも無いと言えるぐらいには数が少なかったので、ヒヅキはこういった手合いとの戦闘経験は乏しい。

(念のために身体強化を強めに掛けておくか。あまり長期では戦えなくなるが、この場においてはその方がいいだろう)

 部屋の中には守護者以外の敵は居ない。階層の魔物は女性が倒しまくったのでほぼ居ない。その女性は同じ部屋で見守っているが、現在はヒヅキの味方だと思われるので、動けなくなっても何とかなるだろう。女性がその気であれば、たとえ万全の状態でもヒヅキでは敵わないのだから。

 守護者が回りこむように動いているのに合わせて身体を動かしながら、ヒヅキは準備を終える。

 その瞬間、守護者はヒヅキの準備が終わるのを待っていたかのように距離を詰めてくる。それは瞬きするよりも早い出来事だった。

「くっ!!」

 一瞬で距離を詰めてきた守護者は、手に持つ細い棒を上段からヒヅキの脳天目掛けて振り下ろす。それに何とか反応したヒヅキは、即座に避けるのは難しいと判断して急いで光の剣を頭上に掲げると、相手の細い棒をそれで受け止める。

「その棒は気になるね」

 光の剣と打ち合っても切断されずにせめぎ合う守護者の持つ細い棒。見た目と違い、切断力が異様に高い光の剣でも切断出来なかったその細い棒に、ヒヅキは大いに興味を抱く。しかし、今はそれどころではない。

 上からヒヅキを押し潰すように細い棒に体重を載せる守護者。それを何とか耐えつつ、ヒヅキは次の手を模索する。

 間近で見る守護者は、体表がツルツルとしているのか、なんとも艶めかしい輝きを放っている。

 深く澄んだ湖のような美しさがある青白いその顔には目鼻は付いていないのだが、ヒヅキは不思議とこちらを見ているというのが分かった。

「これ、ぐらい……なら!!」

 じわじわと押されていた剣先を身体を捻って共に傾け、光の剣の上を守護者の細い棒を滑らせていなす。

 ヒヅキの横を細い棒が振り下ろされたところで、捻っていた身体を戻しながらヒヅキは守護者に斬りかかる。

 しかし、その時には守護者は大きく飛び退いていた。空を斬る光の剣。だが、これで仕切り直し。

 ヒヅキは斬りかかって少し沈んでいた身体を持ち上げる勢いのままに、今度は守護者へと襲い掛かる。

 それを察した守護者は、先程の守護者同様に一瞬で距離を詰めて襲ってきたヒヅキの横薙ぎの剣に棒を合わせるが、まだ体勢が整っていなかったからか、守護者は僅かに飛ばされる。

「思っていた以上に厄介な相手だ!」

 万全では無い状態でも無傷で凌いだ守護者に、ヒヅキは疲れたように呟いた。まだ準備運動のようなモノとはいえ、今までの敵であればそれで既に終わっていた。

 飛ばされながらも構えた守護者は、棒を槍のように構えて腰を落とす。

 それに対処しようと、ヒヅキはいつでも横に跳べるように足に力を入れる。沈黙は一瞬、直ぐに両者が動いた。

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