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テトラ121

 ヒヅキの言葉に女性が先へと進むと、その後に続くヒヅキは周囲を警戒する。感知範囲に入る魔物の数は増えたものの、現在地からはまだ距離がある。これがスキアであれば一瞬で間合いを詰められる事もあるのだが、遺跡の中に居るのはどれも魔物なので、移動速度は速くとも、スキアのように一瞬で眼前に現れるなんてことはない。

 その分余裕はあるが、魔物の場合は行動している数が多いのが困りもの。しかもここの遺跡の魔物は、他の場所の魔物よりも強力な個体ばかりというおまけつき。

 現在探索中の階層に居る魔物であれば、ヒヅキでもまだ一人で相手取る事が出来る。しかしその場合、休憩の回数は格段に増えるだろうが。

 それでも女性にかかれば、階層中の魔物を同時に相手取っても物の数にもならない。なので、ヒヅキは女性の心配は一切せずに、後方の、自分の身を護る事だけに集中していた。

 そうしながら、ほとんど休むことなく遺跡内を進んでいく。現在探索中の階層は第2階層と言えばいいのか、第2階層は地下だというのに何処も真昼のように明るいので、隅々まで部屋や通路の様子を確認出来る。

「この階層は全体的に奇麗ですね」

 遺跡というのは野晒しという訳ではないが、それでも忘れられた地であるので、程度の差はあれ内部は結構汚れている。それに風化も進んでいて内も外もボロボロというのも珍しくはなかった。それは何者かが管理している遺跡でも同じ事。

 しかしこの遺跡、というよりもこの階層は、それを感じさせない程度には奇麗であった。壁や床に多少の風化はみられるも、それでも蔦が覆っているとか、元の色が分からないぐらいに汚れているとかは無い。それこそ、この階層に誰かが住んでいると言われても納得出来そうなほど。

(まぁ、あの神官のような魔物はこの階層に住んでいた訳だが、この階層を管理していたのか?)

 あの神官は知性もありそうだったが、他の魔物では流石に管理は無理だろうと思いヒヅキはそう考えるも、直ぐにそれを否定する。そもそもあの教会からこちら側までは神官の魔物を倒さなければ来られないのだ、であれば全体の管理も難しいだろう。

 もっとも、侵入者が居ない場合は扉が開いているという可能性もあるが。

(管理しているというだけでこうまで奇麗な訳もないか)

 仮にそうだとしたら、それはどれだけ徹底した管理なのだろうか。この遺跡はかなりの時を刻んでいるはずなので、掃除だけではなく、補修用の道具だって必要だったであろう。それ以前に、この遺跡の防衛機能が再び稼働を始めたのは遥か昔の事ではないので、以前封印が解かれてから間が空いているはずであった。

「ここは試練の階層ですからね」

「試練の階層?」

「ここの階層は奥の方で守護者が階段を守護しているのです。それを斃せるかどうか、という遊びですね」

「守護者? 遊び?」

「ここは封印の祠ではありますが、宝の間までは神々の退屈を紛らわせる遊び場としての側面もありますから。まぁ、結局ここまでの利用者は踏破した者だけでしたが」

「そうなのですか……」

「この遺跡の入り口は昔から魔物が守護していましたからね。それも今以上に強力な個体が何体も。なので、結局踏破者以外は誰も近寄れなかったのですよ。ここの魔物は特別強力ですから………………神々のせいで」

 余程神々に思うところがあるのか、女性は最後に何処か恨みがましく一言付け加えた。

「………………」

 それにヒヅキはどう答えたものかと、困った顔を僅かに浮かべる。

「それで守護者の事でしたね。ここの守護者は魔物ではなく魔法生物、いえ魔法道具です」

「魔法道具が守護者?」

 女性の説明に、ヒヅキは頭に首飾りや腕輪や剣などを思い浮かべて、どういう意味かと首を傾げる。空飛ぶ剣とかでも襲ってくるのだろうかと想像しながら。

「ええ。ここの魔法道具は、巨人のような鉄塊だったような?」

「?」

「まぁ、行ってみれば分かりますよ」

「そうですね」

 説明が面倒になった女性の言葉に、ヒヅキはまぁ確かにと頷く。どんなに説明されようとも、結局は直接見た方が早い。それに階段を護っているのであれば、最終的には相対することになるのだから。

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