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テトラ118

(まぁ、人が造った物ではないのだから、そこまで労力は掛かっていないのかもしれないが)

 人と神を同列に語るのは流石に無理があるので、ヒヅキは神がする事だと考えるのを止めた。

(それにしても、わざわざご丁寧にこの先について書かれているのか。これが読める者は限られているだろうから、ただの嫌がらせなのかもしれないが)

 ヒヅキには知識がないので、石碑に刻まれている文字を読む事が出来ない。しかし、一緒にやってきた女性は石碑の文字を読む事が出来た。

 だが、どうやら女性はこの遺跡について詳しいようなので、この先の事など書かれていても既に知っている内容であろうから、それに意味はない。それを考えれば、やはりただの嫌がらせなのだろう。

(後は封じられていた女性についてか。確か、神々が惚れた女性だったか?)

 石碑の内容について思い出したヒヅキだったが、かつて封じられていた女性については興味が湧かなかった。既に封印が解き放たれた過去の存在であるし、神々の惚れた腫れたなど心底どうだっていい話なのだ。

 それよりも、石碑の内容について説明した女性がその部分だけ一瞬言い淀んだのが気になった。しかし、そこに触れていいものか判断に迷うところ。

 少し考えたヒヅキは、別に知る必要もないかと訊かない事にする。この遺跡の由来同様に、遥か昔に封印が解かれた相手の情報など価値が在るとも思えなかった。

 しばらくそうやって石碑を眺めていた二人だが、女性が「先に進みましょうか」 と声を掛けると、ヒヅキは頷き二人は石碑から離れる。

 石碑があった場所は、教会っぽい場所の1番奥。それより先に道はないが、少し手前の壁に魔物が出てきた裏側へと続く扉があるので、そこへと向かう。

 石碑からその扉まで然程離れていないので、直ぐに到着する。

 その扉は木製の普通の扉に見えた。しかし、こんな場所に在るのが普通の木の扉とも思えない。なので、ヒヅキは扉を通る際に軽く叩いて調べてみる事にした。

 ヒヅキが扉を軽く叩いてみると、ゴンゴンという木製とは思えない重い音が鳴る。音だけで判断するならば、まるで金属といったところか。

 だが仮に金属だったとしても腐蝕も見当たらないので、それでも普通の金属ではないのだろう。女性が何も反応しないところを見るに、この扉は遥か昔から存在していた可能性が在るのだから。

(魔法道具だろうか?)

 可能性の1つとしてそう思うも、見ただけでは答えは分からない。かといって調べる時間もないだろう。

 しょうがないので、先に進んでいる女性を追いかけると、女性に質問してみる。

「先程通ったあの扉ですが、何で出来ているのですか?」

「木金属とかつて言われた金属ですね。元々希少でしたので既に存在していませんが、確か材料は世界樹の樹脂を基に、夢の欠片や妖精王の鱗粉、冥界の闇などを混ぜて造ると聞いた事がありますね。まぁ、私は鍛冶についてはそこまで詳しくないので聞きかじりですが」

 少々恥ずかしげに肩を竦めた女性だが、女性が口にした素材に、ヒヅキは首を捻る。妖精王ぐらいは解るが、他はよく解らなかったのだ。

(妖精というのは居ると聞いたことがあるから、それの王は解るが……えっと、世界樹というのは樹というだけに木なのだろう。どんな木かは知らないが。夢の欠片は何かの金属片か何かか? 冥界の闇とは瀝青のようなものなのだろうか?)

 名前の感じからヒヅキなりに推測してみるも、やはり知らないモノは考えてもよく分からない。なので、ヒヅキは女性に問いを重ねる。

「その素材はどんな材料なのでしょうか? どれも聞いた事のない名前ばかりなのですが」

「そのままの材料ですよ。かつて存在した世界樹という大樹の樹液に、神器さえ造れると謳われた希望という名の虹色に輝く金属の粉末、妖精達を束ねる長の羽から得られる鱗粉に、世界の血液と呼ばれ、地中深くを流れる魔力が具現化したかのような高濃度の魔力を含んだ液体の名称だったかと。どれも程度の差はあれどかなり希少で、私でも世界樹や妖精王ぐらいしか見た事はありませんね」

「貴方でもですか。それはまた凄い」

「……まぁ、ここは神が創造した地ですからね、おかしな物があっても不思議ではありませんよ」

「なるほど。それは確かに」

 女性の口から語られる物語の中のような素材の説明にヒヅキは驚くも、それに対して女性は、多分に呆れの含んだ言葉を漏らしたのだった。

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