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護衛任務8

 結局、ヒヅキの隣に腰を落ち着けたシラユリは、反対側に戻るでもどこかへ行くでもなく、ヒヅキに楽しそうに語りかけ続ける。

 とはいえ、語りかける内容は、内容何て全く無いような雑談ばかりで、あまりお喋りが得意ではないヒヅキは、その対応に苦慮してしまう。

 そのため、ヒヅキは自分自身でもあんまりだと思うほどにぎこちない返答ばかりを繰り返していたのだが、それでもシラユリは終始楽しそうに会話を続けていた。

 ヒヅキはそんなシラユリを見ながら、よく話が続くものだと心底感心しながらも、その話に時折相づちを打ちながら耳を傾ける。そのまま少なくとも八割以上はシラユリが一方的に話す会話を続けていると、気づけば空が僅かに白みはじめていた。

「もうすぐみんなが起きだす時間だねー」

 空を見上げたシラユリは、僅かに眠たげな声を出すと、静かに立ち上がる。

「それじゃそろそろ戻るねー。楽しかったよ、また後でー」

 ヒヅキに向けてにこやかな笑顔と共にそう言い残すと、シラユリは来た時同様に颯爽と戻っていった。

 その背を眺めながら、ヒヅキはシラユリの事を相変わらず騒々しい人だと思いつつも、それに慣れてしまったのか、別段それが嫌ではなくなっている自分に気がつく。

 それどころか、退屈を感じないシラユリとの時間を、ヒヅキは好ましくさえ感じはじめていた。

 そのおかげか、少し温かな気持ちというものを思い出したヒヅキは、僅かにではあるか、自然と頬が緩んだのを自覚したのだった。



 シラユリが持ち場に戻っていってからしばらくすると、本の文字が読めそうなぐらいに空が明るくなる。

 その頃になると、人足の人たちも続々と起きはじめ、朝の支度に取り掛かる。調理担当の人たちは特に早起きであった。

 すっかり辺りが明るくなった頃には全員が目を覚まし、朝食を摂っていた。

 ヒヅキは自分の分の朝食を貰うと、陣営の片隅に座り、地平を眺めながら朝食を食べる。

 本日の朝食は、干し芋と拳大の硬いパンが1つに、最近町で補充したばかりの野菜が少しだけ入った琥珀色のスープが少量だった。

 ロック城塞に着いて食料の補充が出来ればもう少し豪勢になるのかもしれないが、ヒヅキはこれだけでも十分満足であった。

 何せ、旅の途中の食事などもっと質素な場合も珍しくはないのだから。

 ヒヅキが硬いパンをスープに浸しながら食べていると、隣にシラユリがやってくる。

「やっと見つけたよー。お腹空いたのに捜させやがってー」

 シラユリは、ぷくっと可愛らしく頬を膨らませると、恨み節をヒヅキにぶつける。

「……一緒に食べる約束なんてしてましたっけ?」

「ううん、してないよー」

 記憶を辿りながらのヒヅキの問いに、シラユリは軽く首を振って呆気なく答えた。

「ただ私がヒズッキーと一緒に食べたかっただけだしー」

 シラユリはそれだけ言うと、ぱんっと勢いよく手を合わせてから、待ってましたと言わんばかりに元気よく朝食を食べはじめる。

 それをヒヅキは呆気にとられながらしばらく見つめていたが、自分も食事の最中であることを思い出すと、地平に目を戻しながら、のんびり手と口の動きを再開させたのだった。

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