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テトラ115

 水筒の中身を乾して空にすると、ヒヅキは水瓶を空間収納から取り出して水筒に魔力水を補充していく。

 その後に容器を取り出して魔力水を2杯ほど飲んでから、水瓶と容器を空間収納に仕舞う。

「回復は出来たようですね。もう少し休憩は必要ですか?」

 そんなヒヅキの様子をちらと確認した女性は、巨人が消えた方向に顔を向けながら問い掛ける。その声音は、普段と比べてやや硬いような気がした。

「いえ、問題ありません」

 体力的にはそこまで消耗していないので、魔力を回復出来ただけで休憩は十分ということで、ヒヅキは先に進んでも大丈夫だと伝える。

 それに了解の意として頷いた女性は、巨人達が出てきた通路へと進む。

 広い部屋の中を二人は静かに進み、巨大な入り口から通路に入る。

 通路内も部屋同様に明るく、壁の岩肌表面のざらざらした細かな部分まではっきりと視認出来るほどの明るさをしている。

 先へと視線を向けると、通路は緩やかな曲線を描いているようで、奥の様子まで見通すことは出来ない。ヒヅキの感知範囲に魔物を捉えてはいるが、離れた場所なので別の部屋か通路に居るのだろう。今ヒヅキ達が通っている通路には魔物は居ないようだ。

 特に会話も無く二人は通路を進む。

 移動速度は速いが、通路自体が長いようで中々終わりが見えてこない。ぐるぐると円を描くように続く通路に、ヒヅキはただ一周しているだけのような気がしてくる。

 しかし、女性はそんな事など気にしていないとばかりに先へと進んでいくので、ヒヅキも大人しくついて行く。どうも女性は遺跡の内部構造を把握しているようなので、同じ方向にばかり曲がっている通路とはいえ、女性が進むという事は道は間違っていないのだろう。

 それからに更に時が経ち、相変わらず同じ方向にばかり曲がっている通路を進んでいると、唐突に通路の終わりに辿り着く。

「やっと次の部屋ですが……魔物も居るようですね」

 通路から見える部屋には、奥の方に何やら石碑のように加工された大きな石が鎮座している。その部屋にはまだヒヅキ達からは見えないが、数体の魔物が居るのをヒヅキは感知する。それも上の階層の魔物や巨人よりも強そうな個体。

 それを感知すると、緊張した面持ちでヒヅキはいつでも光の剣を現出させられるようにしておく。

 しかしそれとは反対に、女性は変わらず気楽な様子だ。女性に限って魔物の存在を察知出来ていないなどという事はないだろうから、女性にとっては気負う必要もない相手という事なのだろう。

 そうして見えてきた通路の終わりに出る。

 通路の先に在った部屋は、上の階層の最初に在った荘厳な教会のような朽ちた部屋に似ていた。ただ、こちらは手入れが行き届いているかのように綺麗だ。

 奥の方に鎮座する石碑への道が広く取られ、その道の両側には、まだ使われているような長椅子が石碑と向かい合うように並んでいる。

 それはまるで先程まで使われていた無人の教会といった様子ではあるが、その長椅子の更に外側には、犬のように床に尻をつけて座り、ヒヅキ達が入ってきた通路の出入り口を眺める魔物が両側に一体ずつ確認出来る。しかし、ヒヅキ達が入ってきても襲ってくる様子はない。

「ここは?」

 そんな急に別の場所に出たかのような空間に、ヒヅキが呟く。

「遺跡ですよ。ただ、ここは他と違って管理者が居るだけで」

「管理者?」

 女性の言葉にヒヅキは奥の方に視線を向ける。それは石碑の更に奥。壁の向こう側ではあるが、確かに魔物が一体動いているのを感知している。それも両端で座っている魔物とは1段格が違う強さを秘めているようだ。

「ええ。ほら、隅の方に扉が在るでしょう?」

 長椅子が作る道の前で立ち止まった女性は、道の奥で石碑が鎮座している場所の隅の方に指を向ける。

 その指先に視線を向けると、確かに人一人が通れそうな扉が確認出来た。今までが大きい造りばかりだったので、それがかなり小さく見えた。

 ヒヅキが確認したのを確かめた女性は、扉を指していた指をすっと横にずらして石碑の方に向ける。

「あの扉からあの壁の向こう側へと繋がっているのですよ。休憩室のようなモノですね」

 そう告げると、女性は手を下ろす。それにやや遅れて、扉が音もなく開かれた。

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