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テトラ108

「ッ……」

 色鮮やかな通路の先に出たヒヅキは、急に変わった空気に息を呑む。それと共に、背筋に走る嫌な冷たさ。

(魔力が濃い。それにこの感じ、森で女性が魔物を倒した時に少し似ているが、それよりも随分と懐かしいな。ということは、通路の効果は既に表れているという事だろう)

 ヒヅキが森で感じたのは女性の殺気であったが、現在ヒヅキが感じているモノはそれに近い。しかし、その時感じたモノと比べると、今回感じているモノは纏わりつくような陰湿さがある。それもかなり濃い。

 それもまた殺気ではあるが、ヒヅキにはこちらの方が懐かしくあった。というよりも女性の方の、殺気でありながら爽快ささえ感じてしまうような淀みの無い方が珍しいのだが。

 そして、この陰湿な殺気の正体は、ヒヅキ達が居る場所へと向かってきている大量の魔物。どうやら本当に女性が言っていたように、あの色鮮やかな通路は魔物を呼び寄せる効果があったようだ。

 ヒヅキは警戒しつつも周囲に目を向ける。

 色鮮やかな通路の先は広間になっているで、遠くにぼやっと壁が光っているのが見える。それは天井も同様のようだが、光自体は壁や天井を闇の中に浮かび上がらせる程度の弱いものなので、部屋自体は真っ暗だ。

 それでも部屋の広さは解る。床は光っていないので、不気味なまでの黒色が敷かれているだけではあるが、壁までの距離や天井の広さは把握出来た。

 それから推測するに広間はかなり広いようで、目測で500メートル四方ほどあるように思えた。

(大量の魔物と戦う為の場所といったところか)

 魔物を呼び寄せる通路の先に在るというそのいかにもな広間に、ヒヅキは苦笑を浮かべる。道が他にないのであれば、ここは強制的に魔物と戦わせる場所なのだろう。

 よく見れば、反対側の壁の光っていない場所、通路と思われる部分はかなり大きい。人が何人分など鼻で笑うほどの幅と高さだ。

 床が見えないのが不安ではあるが、戦う分には問題ないだろう。

 そう思い背後の通ってきた色鮮やかな通路の方に目を向けてみると、そこには壁しかなかった。

「また通路が隠された、という事ですか?」

 入り口での出来事を思い出してヒヅキがそう口にすると、女性は通路があった部分を一瞥してから呆れたように首を横に振る。

「隠されたというのは間違ってはいないですが、また通路を開けるにはこの階層の魔物を全て倒さなければいけないようですよ」

「それはつまり……」

「ええ。ここを乗り越えなければ戻れないという事です。ほら、早速出迎えが来たようですよ」

 そう言って女性は反対側の通路の方に目を向ける。

 ヒヅキの目には壁の光を遮る影にしか見えなかったが、確かに魔物がやってきていた。それも十体ほどは居るだろう。更に追加が次々とやってきているのをヒヅキは感知範囲に捉えている。

「さて、それではさっさと片づけるとしますか」

 光の剣を現出させて構えたヒヅキの横で、女性は気楽な調子でそう呟いて前に出る。といっても、数歩歩いたところで立ち止まってしまったが。

 ヒヅキは何をするのだろうかと、魔物を警戒しながら女性の方に視線を向ける。そうすると、突如として女性の手に暗闇の中でも輝く剣のような物が現れる。

 それは何の前触れもなく現れ、ヒヅキでもどうやって取り出したのか理解出来なかった。それにその剣をよく見てみると、それは光っているというよりも、何処かの風景を切り取って持ってきたかのように何かを映しているようにヒヅキには見えた。

 直ぐに剣が振られたので、それが何かは分からない。

 女性が横薙ぎに剣を振るえば、闇に残した光の軌跡を伸ばしていくかのように斬線が拡がり、対していた魔物に襲い掛かる。

 ただそれだけで、十体は居たであろう魔物はあっさりと全滅してしまった。

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