護衛任務7
ガーデンを改めて進発したヒヅキは、今度はガーデンの北西にあるロック城塞へと向かう。
途中までは前回と同じ道を通り、途中で道を分かれ、前回とは別の道を進む。
その道中、ヒヅキはシロッカスにロック城塞について簡単に説明を受ける。
ロック城塞はガーデンの北西に位置する城塞で、現在は第5王子のハーミットという王族が指揮を執っているという話だった。
スキアの襲撃は他の砦に比べると少ない方で、ロック城塞自体も高い防御力を有しているため、その城塞の高い防御力も手伝って比較的スキアによる人的被害の少ない場所でもあるらしい。
その話から派生して、そのままハーミット王子の話も少しされる。
ハーミット王子は、良く言えば心優しき王子らしく、率直に言えば単なるお人好しなのだとか。
そのハーミット王子が現在のロック城塞の指揮を執っていると言ってもそれは建前で、実際にはロジーという王子の側近である将軍が執っているらしかった。
それに、執務はまた別の側近が執り行っており、年若いハーミット王子はただのお飾り同然の存在だという話であった。
それを踏まえての注意事項は、ハーミット王子に無礼を働かないのは勿論のこと、側近の存在をしっかりと念頭に入れて行動するように。ということであった。
そして最後には、「前回同様、交渉や報告は私がするので大丈夫だとは思うが、念のためにね」と、いつぞやのように締めたのだった。
そんな話から幾日かの時が経ち、予定通り行けばロック城塞には明日には到着するという前日の夜。
夜営の設置も夕食も終わり、人足の人たちは就寝し、ヒヅキたち護衛の四人は半分づつ不寝番で夜間の警戒を行っていた。
そして、今宵はヒヅキとシラユリが当番の日。
ヒヅキは、夜営のすぐ近くの地面に下敷きを引いてその上に腰を下ろしながら周囲を警戒する。
反対側はシラユリの担当なので、ヒヅキは独りで昼間の賑やかな喧騒が嘘のような夜のしじまを満喫しつつ、油断なく周囲を警戒する。
そんなヒヅキの下に、何故だか反対側に居るはずのシラユリが顔を見せる。
「ヤッホー。ヒズッキーしっかり警戒してるー?」
楽しげな声と共に現れたシラユリは、座って周囲を警戒しているヒヅキの隣に腰を下ろす。
そんなシラユリに、ヒヅキは不審げな目を向けた。
「もー、そんな目をしなくても、警戒はちゃんとやってるから大丈夫だよー。少し暇だから警戒しつつ遊びに来ただけだってー」
パタパタと手を振りながら、悪びれもなく笑うシラユリの相変わらずのその態度に、ついついヒヅキは諦めにも似た溜め息を溢してしまうのだった。