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テトラ101

 そうしてヒヅキの準備が整ったところで、早速遺跡目指して湖へと近づいていく。

「ああ、言い忘れていましたが」

 もうすぐ湖の中へと踏み出すというところで、女性が思い出したように口にする。だがそこには何処となく含んだような何かがあるようで、なんとなくだがわざとらしく感じた。

「何でしょうか?」

「湖の中に入らなくとも、湖面を歩けるようにいたしますので問題ありませんよ」

「……そうですか。ありがとうございます」

「いえいえ。これから遺跡探索だというのに濡れるのは本意ではありませんので」

 その女性の言葉に白々しさを感じて、なんとも微妙な表情を浮かべるヒヅキ。言い忘れたのではなくて、この時まで言わなかったのだろう。ヒヅキがそう解る程度には、女性もあえて表情を崩していた。

 とはいえ、実際女性の言う通り濡れたままで遺跡探索というのも勘弁願いたかったので、水の中に入らなくて済むのであればそれに越した事はない。

 もしも遺跡の中が凍えるほどに寒ければ、濡れていくなど自殺行為だろうし、そうでなくとも水を吸って重くなった服で魔物の相手は遠慮したい。なので、女性の多少の悪戯など気にならないほどに感謝の方が強かった。

 先に女性が湖に近づくと、そのまま湖面に足を踏み出す。見た目は何も変わっていない湖面だが、女性が下ろした足は湖面の上に何事もなく載る。

 そのまま2歩、3歩とまるで地面の上でも歩くように湖面を進んでいく女性。足も水の中に沈んでいないので、透明な地面でもそこにはあるかのようだ。

 先行して湖面を歩く女性に、ヒヅキも続いて湖面に足を踏み出す。

 おそらく大丈夫だろうとは思うが、女性が解りやすく何かを行った訳ではないので、いくら女性が先行して湖面を歩いているといっても、それが自分にも適用されているかは不明なのだから。

 かといって、いつまでも畔でまごまごしている訳にもいかないので、ヒヅキは思いきって足を湖面に下ろす。

「………………ふぅ」

 問題なく湖面を歩めたことに、ヒヅキは小さく安堵の息を吐き出した。

 傍から見ればヒヅキは止まることなく湖面へと進んでいたのだが、ヒヅキにしてみれば少しはそんな迷いが浮かんでいたので、思わずといったところ。

 湖面を地面同様に歩けたことで、ヒヅキは変わらず女性の後を続いていく。ただ、女性が通った道と同じ道を進んでしまうのはしょうがない事だろう。

 そうして湖を渡り、遺跡の中に入っていく。

 大きく口を開けた竜のような入り口に軽く飛び込むようにして内部に入ると、入り口近くには大きな水溜まりが出来ていた。その周辺も少しぬかるんでいる。

 とはいえ、女性の魔法の効果なのかそれらに足を取られる事はなく奥へと進んでいく。

(これは便利なものだ。出来れば森に入る前に使って欲しかったが)

 森の中のぬかるんだ地面を思い出し、ヒヅキは内心で溜息をつく。あれはあれで苦労したので、もしも最初からそれを気にせず進める魔法を使ってもらえていたならば、もっと早く遺跡に到着していた事だろう。女性もヒヅキが泥濘に苦労していたのは知っていたはずなので、案外いい性格をしているのかもしれない。

 そんな事を思うと、ヒヅキは再度ため息をつきたくなった。それも盛大に。しかし、それは過ぎた事。そう思ってヒヅキは自制する。

 遺跡の内部は、入って直ぐは少し上り坂になっていたが、直ぐに階段に到着する。覗いてみると真っ直ぐ下に延びている階段で、少し傾斜がきつい。

 階段の前に立つと、壁際に魔法の光が歓迎するように灯り始める。それで奥まで見えたが、かなり長い階段のようだ。

 侵入者を歓迎するようなその仕掛けに、ヒヅキはその先に何が待ち構えているのやらと面倒そうに息を吐き出すと、先行して階段を下り始めた女性に続いて階段へと足を延ばした。

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