贖罪
33章 「贖罪」
『春架、早く学校に行ってしまいなさい。
おにいだって、学校なんだから。』
おにい、あの人に会ってないの?
毎朝、写真を見るたびに泣きそうな顔をしている。
ねぇ、自分の幸せを大事にしてよ。
『おにい、写真の彼女さんに会ってあげて。
寂しいと思っているよ、きっと。』
春架は俺が振ったと思ってるんだろうな。
振られたのはこっちだよ。
あいつは一人で生きるって。
心当たりがあるから会いたいのに会ってあげてなんて言うな。
『相手と釣り合わないことぐらいわかってる。
柊学園学園長川瀬 尚一氏の愛妹美里嬢だ。』
これを言ってしまえば春架は黙ると思った。
ニヤリと意味深に笑って、わたしがおにいが美里さんの写真を部屋に飾ってるって学園長にばらしちゃおうか。
いやいや、ばらさなくていい。
いつからそんな性格になった。
『わかったよ。
1度だけ会ってくる。
確かめたいことあるし。』
根負けして家を出る。
尚一に連絡を取ればミサトに会えるだろうか。
今できることはそれしかない。
『美里ちゃん。いつまで尚ちゃんに隠すの?
もうそろそろ伝えないと尚ちゃん、卒倒しちゃうわよ。』
わかっている。
これがわがままなんだってこと。
シュウにも、尚一さんにもいずれ自分の言葉で伝えなきゃいけないって。
だけど、まだ、その決心がつかない。
『お母さん、あたしのこと那祇…、お父さんに
伝えるとき、どうしたの?』
あたしは話した。
シュウに話さないで別れを告げたこと。
今、後悔していること。
そして、シュウの生い立ち。
反対されそうだったから、祖父の毒牙にかけたくなかったから。
護りたかった。彼の平穏を。
『美里、シュウ君は後悔するわ。
美里のこと知ろうとしなかったこと。
美里に本当の想いを伝えていないこと。
別れを告げたときの彼の表情を覚えているでしょう。』
那月の言葉はもっともで受け入れられる。
会わないと。シュウに。
あたしがシュウが会いたいと言ってくれていると知ったのはこの日の夕方だった。
初めてあたしと周也がデートしたカフェを待ち合わせにする。
早速、明日会いに行く。
『ミサト、待ったか?』
待ち合わせの時間より早く来たつもりだったけどミサトは先に来ていた。
シュウと俺を呼んで立ち上がった彼女は立ちくらみがしたようだ。
倒れかかった身体を抱き起こすとその華奢な体躯が更に細くなったようだった。
ここまで、痩せ細っているなんて。
なぜ、別れを告げられたときに引き留めておかなかったのか、もっと早く会っていれば。
今更ながら、後悔と贖罪の思いに駆られる――――。




