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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

リストカット

作者: gem

――ただ、目が合ったんです。


その戦争の引き金となった少女はそう語る。


時は20XX年、果たしてこの戦争、"リスト・オブ・ウォー"が始まった。

始まりはそう、一つの学園から。


学園一の美少女が学園一のブサ男と校門で目が合った時にそれは起こった。

美少女は自分が美しいと知っていた。故にプライドが高く、醜いものが視界にはいるのが許せなかった。

常に取り巻きに先導させ、醜いものが視界に入らぬよう、細心の注意を払って生活してきた。


…しかし、とある晴れた下校の時間、それは起こった。


この学校には校門一礼という伝統がある。学校に、先生に、校舎に、ともに学ぶ生徒に感謝の気持ちをもって校門を通る際に学校へと一礼するのだ。

当然、振り返る。いつものように学校へと礼をしようとしたブサ男が顔をあげた瞬間、なんという不幸か…美少女が校門から出てくるところであった。


目が、合う。


美少女の視界にブサ男が入る。


――醜い


美少女はそう感じ取った。


――もぅゃだ、リスカしょ


美少女は徐にかばんからカッターを取り出す。ハッと気づいた取り巻きがそれを止めようと手を伸ばすよりも早くその腕を高く振り上げ――




――ブサ男の腕を掻き切った。


「え?」


何が起こったのかわからない、腕から鮮血が迸り、ゆっくりと視界がブラックアウトしていく。

悲鳴が響く、野太い男子の――


――最悪だ


――なんでこんなところで男の悲鳴に包まれながら死ななくちゃならないんだ


――死ぬときは交差点でトラックに轢かれて死ぬと決めているんだ


――こんなところで


ブサ男の強い意志が―なにがおこるのか、ダン!と地面を大きく踏みしめる。


「う、うおおおおおおおおおおおお!!!」


不衛生にも伸びたブサ男の爪が鋭く光る。再び、耳をふさぎたくなるような野太い悲鳴。

腕を大きく振りかざししたブサ男は美少女へと走る。

あわてて取り巻きが間に入る。美少女をかばうように大きく腕を広げる。

そしてゼロ距離へと近づいたブサ男は爪を使い、その――その手首を掻ききった。


腕から噴水のようにあふれ出る真紅の鮮血。取り巻きその一は呆然と目を見開いたまま倒れていく。

爪を振るって血払いするブサ男のその姿はまさしく獣。美少女の取り巻きが恐れをなし後ずさる中、美少女その本人は自分に降りかかったその血を眺め、キッと唇をかんだ。


「許さない、許されない。あなたみたいな醜いものが私の世界にはいってくるというの?」


ここにおいても彼女のプライドは変わらない。


「うるさい、うるさい、僕は礼をしただけだ。なのになぜ殺されなきゃいけない。」


その通りである。


「ふざけないで、あなたみたいなのが視界に入っただけでも極悪。ましてや私の大切なお友達を手にかけた罪、その腕で贖ってもらうわ。」


美少女はカッターを振りかざす、その圧倒的なカリスマに周りに生徒が集まる。


――そうだそうだ、お前が醜いのが悪い!

――気持ち悪いんだよ!

――美少女様の視界に入るな!


なんという理不尽だろうか。これが顔面格差社会であると痛感させられ、ブサ男の心が折れかける。


その肩をポンとたたく手があった。


「いや、どう考えてもあいつが悪いだろ。」

「んだ、そうだそうだ。」


――顔に騙されんな!

―ーあいつ頭おかしいぞ!


その手を筆頭に次々とブサ男の周りに人が集まりだす。


「みん…な。」


ブサ男の目から涙がこぼれる。世界はこんなにも暖かかったのか。

おのおのがその辺の鋭いものを手に取り、構える、狙うは相手の――手首。

何が何でもリストカットしてやる…と決意に燃える。


「・・・バカね、所詮は醜いものの集まり、さぁあんたたち、やってしまいなさい。」


「あんな顔だけの奴らに負けるか、こっちに正義があるんだ!」



――うおおおおおおおおおおお



そして、ここに、各々の思いをもった者たちの戦いが始まった。

これが後世まで長く語り継がれる戦争、リスト・オブ・ウォーの始まりである。



◆◇◆◇◆


「っていうのを今考えた」


「いや意味わかんねーし。そもそもなんだよリスト・オブ・ウォーって。ネーミングセンス無いかよ」


「なんかオブをつけとけばかっこよく聞こえそうな不思議」


「かっこよくないんだよなぁ」


「ちなみに裏設定に手首以外の場所を切ると、その返り血が毒になって侵食するっていうものがあってね」


「知るか!それじゃ適当に首切って相手の陣地にその血降らせれば勝ちじゃねーか!」


「なるほど、その発想はなかった」


「それになんで手首限定なんだよ、どうせ回り廻ってるだろ血なんて」


「それはあれだよ、きっと肩の辺りにフィルターかなんかあるんだよ」


「そもそも何を持って手首と定義するんだよ。二の腕は手首じゃないのかどっちなんだよ」


「さぁ」


「おい」


「いや、ラノベの設定なんてそんなもんでしょ、ガバガバ」


「全国のラノベ作家に謝れ」


「ごめんなさい」


そんなアホなことを話しながら帰ってた。

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