その15
神羅威が彼らの後姿を見送りながら立ち上がると、羽宮亜も同行することに賛成した。
日も暮れてきたが、街道は一本道なので見失うことはない、しかし、日が落ちれば、灯りなどなく、歩く者もないので危険このうえないのだ。辺りの 暗さが増すごとに羽宮亜と神羅威の顔を不安という翳りが覆い始めていた。
先に小さく灯りが見え、人の声も聞こえてきた。
「こんなところで野宿するのはさっきの一団に違いない」
二人はその灯りに向かってさらに歩みを早めた。
「旅の途中で日が暮れてしまいました。御一緒させてもらってもよろしいでしょうか」
火を囲む集団に二人は声をかけた。
「それはお困りでしょう、どうぞこちらへ」
二人は火のそばに招かれた。
やはり先ほどの集団、紫羅義の一行であった。
「やあ、あなた方は町外れで釣りをしていた人だね」
紫羅義がにこやかに声をかけた。
「あ、え、いえ、ええ、見ていたんですか?」
二人は返事にならない言葉を吐いた。
「あなた方は釣りをしていたようだが、竹だけを延ばして、どうやって魚を釣ろうとしていたんだい?」
紫羅義が続けて尋ねると、隣にいた趙士雲が、あっ! という顔をした。
「あ、あのときか、そうだったのか、そういうことか」
趙士雲は頷きながら声をあげた。
「竿の先に何も付いていないのに気が付かれていましたか」
神羅威が怪訝そうな表情で聞いた。
「はっはっは、俺はけっこう目がいいんだよ」
紫羅義は笑いながら答えた。




