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  作者: 湯城木肌
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「ねね、芽衣ちゃんが怖いって思うもの、何かある?」

 宇賀さんはあたしに顔を向けて語りかけてきた。彼女の友達もあたしに視線を向けているのを感じる。

 宇賀さんはあたしのことを下の名前で呼ぶ数少ない一人だ。だが向こうがどう思っていようとも友達の関係ではなく、ただのクラスメイトの関係である。あたしの兄と彼女の姉が友達であることや兄の趣味と合うこと、また彼女の明るい性格のために話す機会は多いけれども、友達という枠組みの中にはいない。

 そもそも友達が出来たことのないあたしにとってどういうものを友達と呼ぶのかが分かっていないことも原因に含まれる。ドラマや漫画で触れてもいまいちピンと来なかった。

「そうね、刃物、かしら」

 刃物。ギラギラと光り、鋭利な部分で傷をつけようとする刃物が、怖い。あたしを傷つけるものを具象化したように感じるのだ。

「刃物かあ。……そうだ、思い出した!」

 彼女は顔を明るくし、白い歯をこぼした。

 彼女にとってあたしは触媒のようなものでもあるらしい。彼女が何かしら問題に詰まった時あたしと話をすると、あたしの返答自体で問題は解決されないが、それきっかけで問題が解決することが多いのだという。以前そのことについて感謝の言葉を述べられたが、実際に問題を解決したのは彼女であり、あたしは特に何もしていない。今回もそれが起こったのだろう。

「追いかけてきたのは死神さんだった! なんか、こう、白いお面を被って、そのお面っていうのには所々に黒い穴があったかな。それで、全身は黒くてふわふわ浮いていて、こう、おっきーな鎌持ってたの」

 身振り手振りをしながら宇賀さんは彼女の友達に伝えようと必死だ。一方でその説明を聞く友達は苦笑いを浮かべている。

「死神ねえ」

「別にその人、ああ人と呼んでいいか分からないけど、まあその人が『我が死神だ!』って名乗ったわけじゃないよ。ただこう、黒くておっきな鎌持っていたらもう間違いなく死神だと思うの。うん、あの人は死神!」

「そーね。まあどちらでも構わないわよ。カンナが死神っていうなら、死神じゃない?」

「信じていないなーその顔は。芽衣ちゃんはどう思う? 死神って思わない?」

「実際に見ていないから判断は出来ないわね」

「そっかー」

 それからクラスメイト達が徐々に教室内を埋めていき、掃除をさせられていた真知子さん達も教室に入ってくる。チャイムが鳴り、ホームルームの時間になった。

 今日も一日が始まる。

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