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  作者: 湯城木肌
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 それからは何事も無く学校に着いた。

校庭の花壇周りでは真知子さんとその他数人が竹箒で掃いていた。あたしに気付いたらしい彼女があたしに大きく手を振ってきたので、軽く手を振って返し、教室へ向かった。

教室にいる生徒は十人にも満たなかった。しかも三年二組でない生徒も入っているのでクラスメイトはあたしを含めて四人しかいない。ただ人数が多かろうが少なかろうが関わらなければ数に大した違いは無く、あるとすれば密度が大きくなることによる熱気くらいだ。

あたしは自分の席に着いて、右隣の席を一瞥した。宇賀さんが友達から借りたであろうプリントを横に置き、彼女のプリントに書き写している。普段は彼女が所属するバドミントン部の早朝練習のため、ホームルームが始まる直前まで席には鞄しか置かれていないので、少し不思議に思った。ちなみに高校まで義務教育下となったために卒業まで部活動は続けることが出来るようになっている。

文武両道を体現している彼女は部活が忙しいからといって勉強面をおろそかにしておらず、宿題を人に見せてもらうことは、少なくともあたしが知る限りでは一度もなかった。ただ多少気にはなりはしたが、それだけであり、その理由を訊いてみようという意欲がわくほどではない。

そうこう考えているうちも手は動いており、鞄の中身を取り出して教材を引き出しにしまった。鞄は窓側の壁にたてかける。

「どう? 写し終わった?」

 宇賀さんの友達が彼女の前に来て、机に手をかける。

「ごめん。あとちょっと、あとちょっとで終わるから!」

 友達の登場にシャープペンシルを持つ彼女の手の動作が加速した。

「いやいやいいよ、まだまだ時間はあるんだし。それにいつもは私が助けられてるほうなんだから」

「確かにね。よし、終わった!」

 彼女は筆記用具を机に置き、息を吐いた。彼女の友達は自身のプリントを机から回収する。

「ご苦労様。今日はどうしたの? いつもやってくるカンナが宿題を私に見せてもらうって相当末期だよ」

「よっちゃん、それ自分で言ってて悲しくならない?」

「だって事実だし」

「そ、よっちゃんがいいならいいんだけど。でそうそう、宿題やれなかったのはね、怖い夢見ちゃって手につかなかったからなの」

「怖い夢?」

「うん。帰宅してお風呂入ってご飯食べるとさ、部活の疲れもあるからすぐに眠くなっちゃうの。それで一旦寝てから勉強するのいつもは。でも怖い夢見ちゃってうまく寝れなくてね、眠いから宿題に手をつけられなくて。それでさ、羊を数えながらどうにかしっかりと睡眠時間を確保できたんだけど、起きた時には」

「朝になってたって?」

「うん」

 ははは、と彼女の友達は声をあげて笑った。

「中学生にもなって、怖い夢で眠れないって。おもらしはしなかった?」

「してないよ! だって本当に怖かったんだもん。よっちゃんも怖くなるよ、きっと」

「ほーう、それはどんな夢だったの?」

 彼女は首を捻り、唸った。

「あんまり覚えていないけど、何かに追いかけられてたの。それはもう凄く怖かったんだから!」

 夢か、とあたしは隣の話を聞きながら思った。

 予知夢というものもあるし、夢から未来がわからないだろうか。


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