3
今日の全ての授業を消化し、ホームルームも終わる。そうなれば学校に留まる必要はなく、帰宅の途についた。部活で競い合い友情を深め合い自分を高めることはしない。そもそもそれが出来る友達はあたしにはいないのだ。ただし、仮にいたとしても部活をすることはないだろう。
九月となってもまだ夏の日差しは残っている。九月から三ヵ月の季節は秋だと聞いたことはあるが、暑さからしてまだ夏だと言ってもいいだろうと思う。ただいくら季節の呼び方を変えようとも気温が変化するわけではないので特に気にはしない。暑い日や寒い日を判別できるぐらいの感覚さえあればいいのだ。
「ただいま」
住み慣れた我が家に帰宅する。あたしが家の中に投げかけた言葉に返事はこなかった。親があたしを冷遇しひどく扱っているわけではなく、両親は共働きで家にいないだけだ。けれども家は無人ではなく、その証拠に居間からテレビの音声が流れ聞こえていた。
居間にいたのはあたしの兄だった。五歳上の地元の大学生で、学業を修めているのかと疑問に抱くぐらい家の中でよく見かける。兄曰く「連係プレーだ」とのことらしいが、中学生のあたしには理解出来なかった。あたしも大学に通ったらその意味が分かるだろうか。
あたしが帰宅して居間に入ってきたことに気付いた兄は「おかえり」と気の抜けた調子で言った。ソファに座ったまま手招きをされたので、あたしはそれに従って兄の下へ近づき、ソファに腰掛けた。
テレビからは最近急速に発展している宇宙開発についての報道をしていた。ロケットで宇宙旅行に行ったり地球生物が生活できる第二の地球を探したりすることではなく、宇宙自体を地球と同じ環境にするという宇宙開発だった。人間が環境に適応できないのなら、環境を人間に合わせようということらしい。空想ではなく、実際に着実にその開発は進んでいるらしく、後は効率的にどう開発していくかが問題だという。
兄はテーブルに置いてあったコーラのペットボトルを掴み、あたしに手渡してきた。新商品のコーラを興味本位で買ったが、口に合わなかったのであげることにしたと兄は言う。兄は新味コーラをよく買ってくるが、よく見つけてくるものだと感心する。あたしにはどれもただの黒い炭酸飲料にしか思えず、味の違いは全く分からない。
宇宙開発の象徴である人工衛星の映像を眺めながら、ちびちびとペットボトルの中のジュースを味わった。
やっぱり、コーラの味はどれもコーラだ。




