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  作者: 湯城木肌
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 不明瞭さが加速したな、と思った。何の話をしていたのかがあたしにはわからなくなってきていた。世界の話を持ち出されるとは壮大すぎる。素直に彼の話に耳を傾けた。

 神様が死んだやら第二のビッグバンが起きたやら世界の背骨が抜けたやら、原因は様々に議論されているが、世界がおかしくなってしまったのは事実なのだという。おかしくなったというのは、あらゆるものの境界がゆるくなってしまったことを指すらしい。ある人間は生と死の境界が分からなくなり、またある人間は恋人との一つになる等の事件が少ない事例ではあるが起きているのだ、と言った。

「まあ大抵のヒトが自身の境界を越えることを望んでいるので、いいことなんでしょうね。僕は嫌ですけれど」

 顔をしかめて呟き、説明を続けた。

 境界がゆるくなったのは何も人間に限らずあらゆるもの、時間も含まれていた。そうでなければ科学技術だけで過去に戻ることは不可能だ、と言った。二十二世紀現在に行われている宇宙開発も科学技術のおかげではなく、境界がゆるんだためだと付け加えもした。

「そういうわけでありまして、あなたが考えているようなパラドックスはまず起こりえません。考えてもみてくださいよ。僕が過去にやってくるだけでも影響は少なからず出るわけですし、間接的に死を勧めなくとも未来に影響が与えられる。そうしたら僕が同じタイミングで過去に来ることはないでしょう? 過去に戻れる時点でタイムパラドックス問題は解決しているってことです。おわかりですか?」

 これがドヤ顔か、とも言うべき表情で彼は構えた。

 タイムパラドックスや過去改変を題材とした物語はメジャーな部類に入るだろう。あたしもそれらをいくらか見聞きし、兄の考察や持論をいくらか聞かされていたので、男の稚拙な言い分でも理解することは出来た。タイムパラドックスが起きるならそもそも過去に戻ること自体が不可能であり、そうでなければ過去に戻ること自体があらかじめ決まった上で時間が流れていかなければならないことになる。しかしあたしが死ぬ場合目の前の男が存在しなくなるため、未来が決まった上で時間が流れているわけではなさそうだった。そうでなければ男が過去に来る意味がなくなってしまう。男は過去改変が出来ると考えて未来からやってきたのだから。ただし、妄想でなければの話であるが。

「タイムパラドックスが生じないということで考えられるのは、過去が改変された時に別の未来が生じるから。あなたが存在しない平行世界が生まれるということね。平行世界が生まれたところであなたの元の未来には何の影響もないわよ。別の未来を作って、何がしたいの?」

 不思議と自分の言葉に熱があることに気づく。少しだけ興奮している、と自覚した。あたしが今口にしているものの殆どが物語や他人の考察、兄の持論の受け売りである。それでも自身の口で発することで、あたかも自分が言葉を産み出したような錯覚を覚えるのだ。自分には何もないと知ってはいるものの、少しだけ満たされ、すぐに寂しくなる。


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