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小説作法の本について 1


     1


 早速お読みいただいてありがとうございます。

 まずは、自己紹介をさせていただきます。月見うどんと申します。名前だけおぼえていただければけっこうです。私は、話を進めるための、言わば人形でございます。傀儡と傀儡師がいるみたいなものですね。作者が操っているのですが、たまに暴走しまして、私自身の考えが入ることもあるやかもしれません。血肉のない人形が、なにをたわけたことをとお笑いのことでしょう。が、それは大変なあやまちです。私どもは、常にじっと物事を観察しておりますし、逆に主をあやつることもございます。どうぞそのへんのことを、お含みおきください。

 では、その私が、なぜここに登場するかの説明を少しさせていただきます。ひとつはいま申し上げましたように、主とはべつな考えを述べることがあるからです。つまり、ここで述べることイコール作者の考えでは、ないこともありうるからです。ぶっちゃけると、そのための保険みたいのものですね。逃げを作っているのですよ。それと、そのことにいささか関係しているのですが、上から目線の、えらぶった文章になるからです。なに講釈たれているんだよと思われる方もいるかもです。ただですね。この手の内容は、上から目線の文章でないと、読んでいて面白くないんですね。××と思いますの文章ばかりではつまんないんです。××だと決めつけ、こうだと言い切ったほうが面白い。しかし作者も、自分がえらくないのは百も承知。そのへんで突っ込まれたら、どう仕様と抵抗があるんです。それで私、月見うどんの登場というわけです。つまり保険ですね。ぜんぶ私に押しつけようという魂胆。そういった事情で、私がここにいるというわけでございます。えらぶった講釈、上から目線、となりますことを、これは、作者でなく月見うどんなんだとご理解いただき、ご無礼・失礼のほどを、どうぞお許しください。

 あと、タイトルについてご説明させていただきますと、最初は「朝までミステリ」というものでした。言うまでもなく「朝まで生テレビ」のパクリですね。ああいう感じで読んでもらいたいと。つまり討論するつもりで。ま、その考えはいいとしましても、なんだか美しくない。それで私のほうから「夜明けまで」を提言させてもらった次第です。これも、瀬戸川猛氏のミステリ評論集の名著「夜明けの睡魔」からのパクリです。私、この本にたくさんのこと教えてもらいました。で、「夜明けまでミステリ」となったわけです。もちろん、瀬戸川氏に追いついていませんよ。背中すら見えてません。敬意を表してですね。それと、憧憬。瀬戸川氏にはご迷惑かもしれませんが、そこは大目に見ていただきますようお願い申します。


 すでに、言い訳前置きのなんと多いこと。いやになりますね。


 エヘン。それでは、気を取り直しまして、小説や小説の書き方に関することを書いてみたいと思います。これをいくぶんなりとも最初のほうで押さえておかないと、このあとが続きそうにないように感じるからです。

 で、小説の書き方ですが、ノウハウに関しては他のユーザーさんたちがすでにされていますので、月見うどんのほうでは、別な方面からアプローチすることにし、巷に溢れている小説作法なる本を取り上げてみます。

 その手の本は、役に立つのか、役に立つならどれがいいのか、どうやって使えばいいのか、そういうことに関して月見の私見を述べてみたいと思います。


 小説を書いてみようかと思ったら、一度は手に取るのが、書店で売っている「小説の書き方」とかいうタイトルの本ではないでしょうか。月見うどんはそうでした。最初に買ったのは丹羽文雄著の、書名もそのものズバリの「小説作法」。これは発表当時、昭和二十九年ですが、ベストセラーとなった名著です。買ったのは中学か高校生のころ。記憶で書いていますが、ためになった。しかし古い本で、それに読み返してないのではっきりとは言えませんが、いまとなっては時代にそぐわなくなっているのではないかと思います。が、いまでも読むと、小説作法の古典的名著ですから、有意義な箇所が多々あるのではないかという気もします。

 で、話を先に進めさせてもらうとして、ためにはなったものの、それで小説が書けるようになったかというと、それはべつな話になります。小説というものを、うっすらと理解したような、ちょっとだけ小説を書く世界に足を踏み入れたような感じでした。

 世にある小説作法の本には、そこに最大の難点があります。つまり、読んでも書けやしないじゃないかというわけです。プロ作家の方たちも、小説作法なる本を読んだが役には立たなかったという意見の方が多い。こんな具合です。


 小説の書き方という本を数冊読んでみたものの、読んだときはわかったような気がしたが、実際に書きだすとなにもならなかった。


 また一部の方を除けば、小説作法を書いている先生ご本人が、これを読んだからといって小説が書けるようになるわけではないとか、または、小説に作法なるものは存在しない、なんて本の中で断言しているのだから、そりゃないでしょう先生、こちとら小説を書けるようになるために読んでいるんだよって言いたくなります。

 つまり、小説作法の本は読んでも役にたたない。お試し程度で読んでおけば十分。それで、明日から小説が書けるようになるわけじゃない。というのが結論。


 しかし――それはわかっちゃいるけどで、月見うどんは恥ずかしいぐらい小説作法の本を読みました。だって、どうやったら小説書くのうまくなるのか知りたいじゃん、秘訣あるなら教えてもらいたいじゃん。そして一向にうまくはならないものの、そういう小説作法の本との付き合い方が少しはわかってきたような気がしています。それをいまからここで書いてみて、そしてお勧めの本をあげてみることにします。


 さて、小説作法本との付き合い方です。多くの人がここで間違っているので、役に立たなかった意見ばかりになるのではないかと思っています。二つほどコツをあげてみます。


 第一のコツです。多大な期待はしないということです。おわかりの通り、読んだらあなたも明日から作家の仲間入りなんて本はないのです。あるのなら、ぜひとも教えてもらいたい。即行買いに走ります。ね、ないでしょう。ですから、それをまず頭に入れて小説作法の本は読むべきです。そしてひとつでも役に立つことを見い出すことができたら、それでラッキーと思わなくてはならないのです。ひとつでも役に立つことを教えてもらったのですから、それでよしとすべきです。なぜなら、それをあなたはいままで知らずにいたのですよ。そのひとつのことで、あなたは一歩前進しているはずです。小説を書くことのコツを学べたわけで、ほんとラッキーじゃないですか。

 たとえば、「××小説作法」の本があって、その本から月見は、「説明するな見せろ」を学びました。いいですか。見せろです。見せなくてはいけないのです。描写ですね。だらだら説明しちゃいけない。会話部分すらも見せるつもりで。そう、言葉で映像作るぐらいのつもりで、ですね。

 で、なぜ「××小説作法」と表記しているのかというと、それがどの本に書かれていたのか、じつは忘れてしまっているからです。記憶を辿って本棚を調べましたが、いまだに見つかっておりません。ま、それはいいとして、月見が言いたいのは、どの本に記されていたのか、また、その本に書かれていたはずのほかの内容も忘れているのに、「説明するな見せろ」だけは、しっかりとおぼえているということです。それが、小説作法の本との上手な付き合い方です。私が申し上げております、ひとつのことでも教えてもらったら、それでよしとする意味がおわかりいただけますでしょうか。多大な期待をもたず、ひとつだけでも得てやろうという気持ちで読むべきだということです。

 寄り道になりますが、「説明するな見せろ」について少し述べたいと思います。それをどう活用しているかをです。そのことを学んでから月見は、それを意識するようにしています。しかしなかなか思い通りにはいかない。頭ではわかっていても、実現させるのは難しい。しかしそれでも、書いた文章に目を通しては、ちゃんと説明せずに見せているだろうかと、チェックをしております。また、説明調になっていないかと、手直ししたりしております。じつはこの文章にしても、考えを述べたエッセイではありますが、ある程度見せようとしています。私が、みなさんには少しは見えているでしょうか。月見の顔が、声が、人柄が、見えていますでしょうか。それに考えが見えてますか。ま、それはみなさんのご判断にお任せするとして、小説作法の本でひとつでも学んだことは、実際に活用し、いろいろと試してみる。それも、上手な付き合い方のひとつです。


 さて二番目のコツは、読んだだけではダメだということです。前記のことに関連していますが、仮にあなたが、ヨガなりストレッチをやってみたいと思ったとします。それでその手の教本を読んで、これでヨガやストレッチができたと思う人は一人もいないはずです。やはり、本を見ながら手足を動かさないとですね。それと同じことで、小説作法の本も、読んだら書かないとダメです。書いてはまた読む。それの繰り返し。そうやって活用しないと、小説作法の本の効果は出ません。つまり小説作法の本って、体育会系教本なんですよ。知識を高めるものでなく、実用書。ざっと読んでみてわかったような気になって、それで書いてみる。で、思うように書けなくても、役に立たないとぼやくのはやめて、書けなかったら、その経験をもとにまた読んでみる。実践と読むのを繰り返して技術を習得していく。それが教本の有効的な使い方です。そうやって、ある程度書く経験を積んでいくと、それまで頭でわかっていたけどほんとうはわかっていなかったことが、不思議と見えてきたりします。あっ、そうかという感じです。本を片手に修練を重ねていく、これが小説作法の本の正しい使い方です。書きながら読む。これが二番目のコツです。読んだだけじゃなんにもならないことを、必ずおぼえておいてください。小説を書くという行為は、頭だけでは学べません。体、使わないとですね。


 以上の二つのことが、「小説の書き方」なる本を読む際のコツです。わざわざ言わなくてもいいようなことでもあります。しかし、案外このことしていない人多いんです。読んだけど、わかったようなわからなかったような気分という感想が多い。それは知識を得ようとだけ考えているからです。実技なんですよ。小説を書くというのは。それと、一冊の本ですべてをわかろうとするから。この本ではこの箇所が、あの本ではあの箇所が役に立ったというのが、月見の場合の実体験です。多読しろといっているわけではありませんけど、一冊でというのも無理な話です。

 それと、「小説の書き方」本で学べるのは、基本的に技術だけと思ったほうがよろしいです。テーマのつかみかたなる章もあったりしますが、あまり期待しないほうがいい。学べるのは、どうやって書くかで。なにを書けばいいのかは、べつな話です。そのへんを区別して読まないと、混乱してしまいます。


 1、多大な期待をせず、ひとつだけでも得てやろうという気持ちで読む。

 2、書きながら読む。


 これが月見の考える、「小説の書き方」の本との上手なお付き合いの方法です。

 次回は、これを踏まえたうえでの、月見のお勧め本を紹介してみたいと思います。  

                                            つづく


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