4.旅立ちの準備
ほんの1時間ほどで王宮が見えてきた。辺りは暗くなりかけている。
「なんだ?この気配…。」
王宮が大きくなるにつれ、アキラは濃い闇の気配を感じた。そんなに強いものではないが、なぜか不安を掻き立てる。
「あれじゃないか?」
マサキが指差した先…王宮の入り口の門の前に黒い生き物が見えた。
漆黒の毛並みの獅子のような身体に、闇黒の翼。鋭く尖ったくちばしは、紛れもなく鷲のもの。
… 闇有翼獅子 ですね ビルラの配下のものです
ダークグリフィンはシャラメイの姿を見ても、おびえる事なくこちらを見上げている。
「シャラメイ。王宮の庭まで飛んでくれないか?」
… わかりました
アキラの命に従って、シャラメイは王宮の中庭に着地した。
「ありがと、シャラメイ。」
マサキとアキラは飛び降りて、真っ直ぐに王の間へと向かう。
「アキリア王子!」
警備兵が真っ先に声をかける。
「どうなっている?」
「はっ、ミラジアリナより使者が参りまして、ただいまウェスタ王・アークル女王と会談されている所です。」
アキラはその言葉を最後まで聞きおわらないうちに王の間の扉を開け放った。
「バターン!」
「アキリア!」
王と女王の驚いた顔。
その目前に、座しているのは黒い髪の男が3名。
「これはこれは。王子様のお着きで。」
何だか裏ではとんでもない事を考えていそうな気味の悪い声。3人のうち、真ん中にいた一番歳をとった男が発したものだった。
振り返った男はわざとらしく声を大きくした。
「おお、われらが皇女、マサキ様もいっしょでしたか。」
「?!」
マサキの驚愕がそばにいたアキラに伝わってきた。
「てめえら…!」
「まて。」
叫びかけたマサキを押さえ、アキラは…アキリアはその黒い髪の使者たちに言った。
「この娘はデルタスの王女のヴェルナだ。<ヴェルナ>に何の用だ?」
「デルタスの…?何かの間違いでしょう。この者は、第131代ミラジアリナ帝国王ラガシュ様の御子息クローク様の御息女、マサキ=ミラジアリナ様でしょう?」
「…。」
アキリアは否定する事ができず、立ち尽くした。
「私どもはマサキ様をお連れしに参ったのです。この度クローク様の甥にあたられるクレイド様が御即位なさり、それにあたって皇女であるマサキ様をお連れしろ、との命を受けました。」
「何の…ために?」
「もちろんマサキ様に皇后となっていただくためです。」
「ばっかやろう!」
アキリアが気を抜いたすきにマサキが叫んだ。
「てめえらなあ、俺を王女だの皇女だの勝手に決め付けやがって!俺はミラジアリナには行かねえ!今すぐここから出て行きやがれ!」
碧い瞳と漆黒の瞳が怒りの炎で燃え上がった。
「マサキ!やめないか!」
ウェスタが吐き捨てるように叫んだ。
一瞬の静寂が王の間に訪れる。
「お引き取り願おう。ミラジアリナの王が即位された事に関してはこちらの祝福の念をお伝えいただきたい。だが、マサキ=ミラジアリナは即日デルタスの王女として迎え入れるつもりだ。ミラジアリナ国に渡す事はできない。」
ウェスタ王は威厳のある声でそう言った。
「…わかりました。王にはそう伝えましょう。」
黒い髪の使者は意外にもあっさりと引き下がった。
「うむ。それでは使者たちよ、今日はここで泊まっていかれるとよい。長旅でお疲れであろう。」
「お気遣い、ありがたく受けさせていただきます…。」
黒の3人は深々と王にお辞儀した。
「何だよ、あいつら!!」
部屋を出た途端、マサキの怒りが爆発。
「ガーン!」
「うわああ、おやめください!マサキ様!」
「王宮が壊れます!」
すぐそこの柱を蹴っ飛ばすマサキを必死で止める警備兵×2。
アキラはマサキを置いて中庭に出た。
… 王子
「シャラメイ…いたのか。」
… 私は人間界のことに 手出しはできません
ですが もし 貴方の仲間として 私にできる事があれば いつでも呼んでください
「わかった。ありがとう、シャラメイ。」
シャラメイが空に飛び立った。
残されたアキラは一人、ため息をついた。
「ふう。」
そして自分に言い聞かせた。
世界の危機なんかよりずっと簡単な問題だろ?
「王子!」
「アキラ!」
次の日太陽が落ちる頃、クロークとシンジが一気にアキラの部屋になだれ込んできた。
「その、<使者>ってのはどこ行った?!」
「今日の朝早くに立った。一応マサキを連れずに…もっともそんな簡単に引き下がるわけねえけど。」
「まあ、そう思っておくのが妥当だろう。」
クロークはふぅ、と息をついた。
「マサキは?」
「多分王の所。」
「何であいつが?」
「ミラジアリナに行けるように交渉中。」
「はあ?!」
マサキは昨日から考えた後、結論を出した。
「ウェスタ王。」
「何だ?マサキ。」
「俺、ミラジアリナに行く!」
「は?」
一瞬のみこめず、目を白黒させる国王。
「俺、直接ミラジアリナの王に会って断ってくる。」
「ま、待て、マサキ。それは…。」
「そうでもしなかったら向こうは納得しないだろう?」
「…。」
まったく、こいつときたら…。わざわざ敵陣に乗り込んでいく奴がどこにいる?
しかし、それもいいかもしれない。
だが…。
「うーむ。」
ウェスタ王の中で葛藤が続く。
「危険だってんなら、こっそり王だけに会ってすぐに帰ってくるから。」
「うーむ…。少し考えさせてくれ。」
「はい。」
マサキは王の間を後にした。
「ただいまあ。あ、シンジと父さんも来てたんだ。」
「マサキ!お前なあ、何考えてんだよ?!ミラジアリナに行くことがどんなに危険か分かってるんだろ?!」
突然シンジに怒鳴られて、マサキは一瞬たじろいだ。
「怒るなよ。」
「おこってねーよ!あきれてんだよ、お前のあほさ加減に!!」
「…。でも、このままだったら前に進めねーだろ?それならちょっとくらい危険を冒してでも先に進んだ方がいい。」
マサキの瞳が強い光を帯びた。碧い瞳、漆黒の瞳。何度も何度も見てきた瞳が、今はいつもと違ったふうに見える。
「だから俺は…ミラジアリナに行く!」
マサキははっきりと宣言した。
アキラの、シンジの、クロークの瞳を見つめて。
「やめておけ、マサキ。お前はミラジアリナという国についてよく分かっていないようだ。」
「行く。」
クロークの言葉も、マサキはがんとして受け付けない。
「やめろ、と言っているんだ。」
「嫌だ。ウェスタ王から許可がおりたら、俺は行く。」
「マサキ!」
「嫌だ!行く!」
「パーン!」
一瞬、時間が止まったかと思った。
クロークの手のひらがマサキの頬にあたって、むしろ気持ちいいくらいの音をたてた。
「と、父さ…?」
マサキは愕然と、ひっぱたかれた頬を押さえ、クロークを見た。
「マサキ。自分が今何をしようとしているのか、分かっているのか?」
低く押さえた声。裏に怒りをはらんでいる事は、言うまでもない。
「……」
「王には私から直々に話しておく。お前はミラジアリナへ行ってはならない。」
「何で?!」
「まだ分からないのか!」
クロークの一喝で、堰を切ったようにマサキの瞳から涙が零れ落ちた。
「何…で……。」
ぽろぽろぽろ
殴られて薄赤く染まったマサキの頬が涙でぬれていく。
「父さんのバカ…わからずや!!」
そう叫ぶとマサキはさっと部屋を出ていった。
「マサキ!」
アキラが慌てて後を追う。
その後ろ姿を見送ってから、シンジはクロークに声をかけた。
「叔父さん。ちょっときつくないですか?」
「いいんだ。ああでもしない限り、あいつはミラジアリナへ行くだろう。いや…私があの子を止めるのは無理かもしれないな。」
「…でも、確かに危険は危険ですけど、ミラジアリナはマサキを王女として欲しがっているわけだから、少なくとも殺される事はないと思うんですけど。」
「怖いのは、殺される事じゃない。操られてしまう事だ。」
クロークの表情が引き締まる。
「そうすればマサキはミラジアリナから戻らなくなる。それが一番危ない。」
「…。」
シンジは口をつぐんだ。
「子を思わない親はいないさ。」
クロークは少し寂しげにぽつりとつぶやいた。
「マサキ!」
前にもこんなようなことあったなあ…と思いつつアキラはマサキを追いかけた。
薄暗い階段を駆け降り、驚いている警備兵たちの横を駆け抜け、マサキは王宮の裏庭に出た。マサキをアキラが2度出会った場所。
アキラはなんとかマサキに追いついて、肩に手をかけた。
「アキラァ…何で父さんはわかんないのかなあ…?」
マサキは涙を拭きながらゆっくり振り向いた。
「そりゃ、お前の事心配してっからだろ?」
「じゃあ、アキラは俺のこと心配じゃないのか?」
「え?」
「だって、別に行ってもいいって言っただろ。」
「それは、危険だとは思ってないから…。だって、ビルラなんかと戦った事に比べれば、相手はただの人間だし…。」
アキラはそう思っている。
あの時の相手に比べれば、今起きている事なんてまだまだ軽い。
「そうだよな。」
マサキは吹っ切れたように言った。
「じゃあ、やっぱり俺はミラジアリナに行く!たとえ父さんに逆らう事になっても。」
マサキがにっと笑った。
やっぱりマサキは笑ってなくちゃだめだ。マサキが泣くと調子狂うよ。
「…だったら俺も行く。」
「え?」
マサキの驚いた顔。
「これは、マサキだけじゃなくて俺の問題でもあるから。やっぱり俺も行くべきだろう?」
アキラはそう言ってマサキに微笑みかけた。
マサキはまたにっこり笑った。
「ありがと。」
「シンジ。」
「アキラ。」
アキラは部屋に戻ってベッドに座り込んだ。
「マサキは?」
「ウェスタ王の所。早く許可もらうって意気込んでったぞ。」
「げ。じゃあ、叔父さんと鉢合わせだ。」
「え。」
やな予感。
アキラとシンジはそろって王の間へ向かった。
内容は良く聞き取れないが、中で言い争っている声がする。
「ギィーー」
重い扉を開け、中に入った。
「お前は二度とデルタスに戻ってこられなくなってもいいのか?!」
「よくない!でもぜったいあんな奴等に捕まったりしない!」
「それが甘いと言っているんだ!」
王は少しあきれ気味に2人の会話を聞いている。
「お前は自分の力を過信しすぎだ!まだろくに妖力も使えないのに…奴等にだって強い妖力を持つ者はたくさんいるんだぞ!」
「じゃあ強くなるよ!」
「だったら今行かなくてもいい。強くなってから行けばいい事だ。」
「だめだ!それじゃ遅いんだ!」
マサキの言っている事はめちゃくちゃだ。
アキラとシンジは玉座に近づいた。
「王はどうするおつもりですか?」
「…正直な所、迷っておる。」
ウェスタ王は小さくため息をついた。
「私はマサキを、デルタスの親善大使としてミラジアリナへ送る事を考えた。だが、考えれば今まで親善大使がミラジアリナの王宮へたどり着けた事はないのだ。」
「なぜですか?」
「ミラジアリナはライラを守護とするデルタスを敵視しておる。ミラジアリナの港へ着いたとしても上陸させてもらえんのだ。」
「ウェスタ王。」
シンジが口を開いた。
「あの…アリア経由でミラジアリナに入国できないでしょうか?」
「アリア経由で?」
「はい。アリアはミラジアリナとの間に交易があります。もしかすると、受け入れてもらえるかもしれません。」
「それは本当か?」
「はい、確実です。」
シンジははっきりと答えた。
「うーむ…それならばマサキを送っても…。」
ウェスタ王の心が動いたようだ。
が、しかし問題は…。
「捕まったらどうする気だ!そしてお前が操られたら自分の意志で帰ってこなくなるんだぞ!」
「そうなる前に逃げるよ!」
「お前にはそれができるだけの力はないだろう!」
「パンッ!」
「?!」
ウェスタ王が手を叩いた。
一瞬静まる空間。
「クローク殿。マサキを…行かせてやってはどうだ?」
「…!そんな、ウェスタ王…。」
「若い頃には少なからず冒険をするものだ。その方の娘を信じて行かせてやってはどうだ?」
「…ですが…。」
「もしミラジアリナから戻れぬような事になっても、デルタス国が総力を挙げて取り戻す。」
「……わかりました。」
マサキの顔がぱっと輝いた。
「よかった。」
ウェスタ王は玉座から立ち上がった。
「マサキ=ミラジアリナ!ウェスタ=デルタスの名の下にそなたをデルタス国の親善大使に任命する。」
「はい!」
「そして、シンジ=ヴァンドル!」
「は、はい。」
シンジは突然呼ばれて慌てて返事をした。
「同じく大使に任命する。マサキとともにミラジアリナへ向かう命を与える。」
「はい!」
シンジも小気味良く返事をした。
マサキの顔がぱっと輝く。
「アキリア。お前は残れ。」
「えっ?」
アキラはびっくりした。マサキも驚きを隠せない。
当然行かせてくれるものと考えていたからだ。
「国を空にする事はできない。お前は王宮に残るのだ。そして、シンジ。3日後までに大使のメンバーを決め、提出してくれ。お前の独断で構わないが、独りで決めるのが無理だと思ったら書記官のガーネットに手伝ってもらう事。」
「はい。」
シンジは返事をした。
「今日はこれで休みなさい。皆疲れておるだろう。」
「何でアキラは行っちゃいけねーんだ?」
「だから、アキラまで行くとあまりにも親善大使の任が重くなるだろ。その一行が危険にならないという保証もないから、リスクが高くなる。だからさ。」
「ふーん。」
マサキはわかったようなわからなかったような返事をした。
「じゃあ俺は留守番してるよ。」
「えー、アキラも行かなきゃやだ。」
マサキがほっぺたを膨らました。
「マサキ。シンジも行くんだから、いいだろ?わがままを言うな。国の事を考えるのなら、お前が行ってこい。」
「……わかったよ。」
マサキはしぶしぶ諦めた。
「でも、アキラ。メンバー決めには参加してくれよ。」
「ああ。」
シンジの言葉に、アキラは一も二もなく頷いた。
それでもマサキのほっぺたは膨らんだままだった。
ガーネット=ブラッドは35歳。もう5年以上デルタス王国の書記官をつとめている。6年前に今の夫ギレウス=ブラッドと結婚する前は副議会の議員を務めていた。当時副議会の議長だったギレウスの父、ガリレイがガーネットの才能を見出し、書記官に推薦してくれたのだ。
案の定ガーネットは書記官として、国の政治の要としての才能を発揮し、今ではガーネットより早くから書記官をやっていたぺリドット=フローを抜いて、実質デルタスでは王・皇后に次ぐ権力の持ち主である。
「ガーネットさん。」
この子は…たしかシンジ、と言ったはずだ。
コングレスメンバーのバルト=ヴァンドルの一人息子で、アキリア王子やヴェルナ王女と仲が良かったはずだ。弓兵隊長のランダム=エリルもシンジの事をえらく気に入っているらしく、ランダムの口からもよくその名を聞く。最近ではちょくちょく王宮に出入りしているらしいが、ガーネットとしては一般人が王宮内をうろちょろするのをあまり良くは思っていない。
「あのお、今度の親善大使のメンバーについてなんですけど…。」
「親善大使?……ああ、あれか。」
そう言えば今度親善大使に任命されたらしい。
メンバー決めを任せたからよろしく頼む、とウェスタ王がおっしゃっていたが、若干19歳の青年にそんな技量があるとは思えない。
ちなみにガーネットが副議会のメンバーになったのは24の時。それも父親がもと書記官だった、という事もあっての異例の若さでの抜擢だった。
「原案は考えたのか?」
「はい、一応…。でも自信がないから見てほしくて…。」
「提出期限は?」
「明日です。」
「見せてもらおう。」
ガーネットはシンジから原案を書いた紙を受け取った。
「マサキ=ミラジアリナ、シンジ=ヴァンドル…。」
ガーネットは連ねられた総勢11名の名を読み上げた。
「ハール=クリスト?なぜハールが?」
「本人の強い希望のもと、です。」
シンジはため息交じりに言った。
どうやら11名という半端な数になったのはハールのせいらしい。
「それから…ガルディー医師?!」
ガルディー=ノームはデルタスでも有数の腕を持つ医師である。しかし、今まで何度か王宮の専属医師になるようにと依頼したが、なかなか首を縦には振らない。
「どうしても彼が必要なんですよ。」
シンジは言うが、彼を引き込むのはなかなか困難だ。
「このガルディー=ノーム+1人というのは?」
「いや、ガルディー医師が助手を連れて行きたい、とおっしゃるかもしれないと思って。」
「ふむ。」
一応考えてはいるようだ。
「剣兵隊長デモクラート=オプス+剣兵2人、ハトリ=トオタカ、メシア=ミラジアリナ…この5人は護衛か?」
「はい。おばさんだったらへたな兵隊よりよっぽど頼りになりますし、過去の記録を見ると隊長達の中で一番デモクラートさんが外交に出ているようだったので慣れていると思います。ハトリさんは<影>として動いてくれると思います。」
「後は、水兵隊長ディオソニー=クライス…これは当たり前だな。船で行くのだから。」
「はい。あと、その11人の他に水兵を4~5人連れて行きたいと思います。」
いい配分だ。人数も最小限に押さえている。あまり多すぎると行動が不便だと判断したのだろう。
今まで行った事のない土地へ行く時はその方がいいだろう。正しい判断だ。
「そうだな…アドバイスするとすれば、ぺリドット書記官を連れて行くといい。旅の記録をつけねばなるまい。」
「ガーネットさんはだめですか?」
間髪入れずにシンジが聞いた。
「私にはまだやる事が残っている。今国を離れるわけにはいかない。」
「そうですか…。」
シンジはがっかりしたように首をうな垂れた。
「ペリドット書記官も優秀なお人だ。私からも頼んでみよう。」
「でも…。」
シンジが躊躇しているわけは、わかっている。
シンジはこの間ペリドットに向かって意見し、こっぴどく叱られたばかりなのだ。もっともシンジの意見はガーネットも正しいと思っている。要するにペリドットは頭が固いのだ。夫のギレウスに言わせればもう60過ぎのモーロクじじいである。
「俺…ペリドットさんと行くの嫌だ。あの人苦手だ。それに、どう考えてもガーネットさんの方が能力上だし。ペリドットさん、確かにしっかりしてるけどしっかりしすぎて、頭かたすぎだ。その点ガーネットさんは臨機応変で対応してる感じがするから好きだ。」
はっきり言う奴だな。
ガーネットは苦笑した。
「とにかく、ガーネットさんの名前で王に提出します。だめだったら王に直接断ってください。」
シンジはそう言ってガーネットに有無を言わせないうちに立ち去った。
ガーネットのシンジに対する印象は話す前とは一転していた。
「シンジ=ヴァンドル…か。」
なかなか面白い人材だ。
この約1年半後、ガーネットの推薦でシンジがペリドットの後任の書記官になることを、誰が予想しただろうか。
正式な親善大使団のメンバーが公表されたのは、それから3日後のことだった。
シンジが提出した原案通りに決定され、参加が危ぶまれていたガルディー医師も今回だけ、との条件で参加が決まった。(どうやらシンジの父親が頼み込んだらしい。)
出発は1週間後。
マサキとシンジは言葉づかいの勉強をみっちりさせられ、マサキにいたっては<王女らしい>歩きかた、動作、仕草まできっちり叩き込まれた。




