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続・EYES  作者: 早村友裕
16/21

16.誓い

「何?!失敗だと?!」

「あ、はい、それが思わぬ邪魔が入りまして・・・。」

「全く何をしておるのやら…。」

アトランは眉を厳しくつり上げた。

クフトはその迫力に押されながらもアキリア王子が連れ去られた事の次第をまこと細やかに語り尽くす。

「…というわけでございます。」

「…まあ、よい。マサキはすでに手中、アキリアも少なからずショックを受け、シンジは一人。半ば成功していると言ってもいいだろう。…マサキがここにいるうちは。」

「やっぱり取り返しにきますかね?」

「10中8、9は。しかも強力な味方を連れて。」

「そうですか。」

まさか全面戦争なんてことになるんじゃ…とクフトは内心おびえていた。

「ゲルマン前王に会いに行こうか。これからのことを話したい。」

「はい。お供いたします。」

クフトとアトランは院室――前王の部屋――へとむかった。


「アキラーー!!」

シンジが大きく手を振ると、アキラもケプラーの背から身を乗り出すようにして手を振り替えした。笑顔が見えるってことは…よかった。ギオンは間に合ったようだ。

ところが、ケプラーから降りてきたギオンは・・・。

「すみませんねー、シンジさん。僕、間に合いませんでしたよ。」

「え?」

「会っちゃいました、マサキに。」

あはははー、とのんびり笑うギオン。

「じゃ、アキラ、お前・・・。」

「ああ、マサキは操られてたよ。」

「・・・。」

意外にもあっさりとそう言ったアキラに、シンジは絶句した。

「だって、落ち込んでたってしょうがないだろう?それにマサキは死んだわけじゃないし。」

「ま、それもそうだ。」

こいつ(アキラ)は、俺が・・・周囲が思っていた以上に逞しくなっている。

シンジはにやっと笑った。

「急いでギオンの住んでた村に戻ろう。テミストクレスたちも向かっているはずだ。」

「ギオン?」

「あ、僕です。僕の名前、ギオン=リフェル。よろしくね。」

ギオンはいつものように微笑わらって手を差出した。

「あ、俺、アキリ・・・アキラ。よろしく。」

「アキリア=デルタスじゃなくて?」

「ああ。今はアキラでいい。」

アキラは差出されたギオンの手を握った。

「紹介は後だ。とりあえず…ケプラー!」

――なんでしょう

「俺たち全員のれるくらいまで大きくなってくれねえか?」

――わかりました

一角妖飛馬ケプラーの体がぐんぐんと大きくなっていく。

「うわ、すっげえ…!」

アキラは思わず息を呑んだ。

ケプラーの特殊能力、身体伸縮エクスパンド。手のひらサイズからキングホエール(白鯨王)並みの巨体まで大きさは自由自在。

「すぐトラドシンへ向かおう。話はそれからだ。」

シンジの青い瞳が真剣な光を帯びた。



「少しだけ休ませてくれ。頭…いてえ。」

「大丈夫か?」

「今の所は…な。」

こんどデルタスの王子に会ったらやばいかもしれない。

あの金色の瞳を見ていると、頭の中でかってにブレーキがかかって何がなんだか分からなくなる。それを過ぎると体の中で何かが爆発しそうになる。

体調は最悪。マサキは部屋に戻るなりベッドに倒れ込んでしまった。

「死にそうだ・・・。」

大きく呼吸をしてもだめ。

「ア・・・キ・・・ラ・・・・・・」

何だろう。この言葉。人の名前・・・?

「ア・キ・リ・ア・・・・・・」

頭が痛い。割れそうだ・・・・・・



ミラジアリナで・・・いやむしろ世界で一番大きな湖、カルタリカ湖の中心に位置する島にある村、トラドシン。いつも霞がかっているため上空からも発見されにくい。

「よくこんな場所見つけたもんだ。」

「父さんが見つけたんだよ。この国の未来のために。」

「この国の未来・・・ねえ。」

シンジは辺りを見渡した。

まだ10歳前後という子供が多いだろう。21歳のギオンで年長なのだから、平均年齢はかなり低いはずだ。どうやって生活しているんだろう。

「お前、ギオンだっけ?」

「うん。」

「何でこの村は妖力者ばっかりなんだ?あんなちびですらミドルに近い力を持ってる。」

「うーん。それは企業秘密。こればっかりは村の人間以外に教えられない。」

「そうか。じゃ、質問変える。ここに今何人ぐらい住んでるんだ?」

「100人・・・ちょっと。そのうち、<戦力>になるのは・・・80人前後。」

「?!」

シンジは自分の考えていたことがギオンに見透かされてドキッとした。

「ちょっと早いけどね。別にいいよ。そろそろ潮時だと思ってたんだ。」

ギオンが相変わらず人のいい笑顔でシンジに笑いかけている。

「お前・・・とぼけた顔してるくせに意外と鋭いな。」

「僕とシンジの考え方が似てるだけじゃない?」

ギオンの言葉にシンジもにやっと笑った。

「今から準備して、実行に移すのにどのくらいかかる?」

「2週間・・・いや、10日で十分だよ。」

「10日・・・ミラジアリナがマサキのことをいつ公式発表するのか・・・。」

「発表したとしても、少なくとも1ヶ月は戴冠式はできないはずだよ。昨日ちょうど右の半月ハーフムーンだったから。伝統的に半月の日の夜以外に戴冠の儀式を行わないことになってるんだ。」

「1ヶ月後・・・。20日でミラジアリナを落とせるか?」

「分からない。でも、やってみる価値はある。混乱しているいまならうまく行くかもしれない。・・・こんなチャンス、逃したら二度と来ないよ!」

「ただし、失敗すれば・・・だろ?」

「失敗を恐れてるようじゃ何も始まらないよ。」

シンジの青い瞳と、ギオンの漆黒の瞳。

「やるしかねえな。」

「もちろん。ここまで来て後戻りはしない。」

そう。マサキに出会ったときすでにこうなることは決まっていたんだ。

ギオンは心を決めていた。絶対に、後悔はしない。

「アキラは?」

「呼んでくる。」

シンジがテミストクレスたちの所にいるアキラを呼びに駆けていった。

ギオンは青い青い空を見つめて小さく息をつく。

その視界に、一人の青年の影が入った。黒に銀のメッシュが入った髪。

「サイファ。聞いてただろう?今すぐエルギールとヒバリとアゲハに伝達してくれない?」

影は返答もなく消えた。

ギオンの黒い長髪が風になびいた。

「そろそろ切らなくっちゃね。」

ともすれば女に見られそうな、思いっきり伸びた黒髪を指でもてあそびながら、ギオンはポケットからナイフを取り出した。

長髪を束ねて持ち、ナイフで切り落とす。

「ザクッザクッ」

少しぼさぼさになるけど・・・我慢しよう。

「パサッ」

切り落とした長い黒髪を地面に落とすと、ナイフをしまった。

「ん、すっきりした。」

ぶるるん、と頭を振ると、だいぶ軽くなったのが分かる。

「あれ?ギオン?」

戻ってきたシンジの素っ頓狂な声。

「あははは、切っちゃったー。」

「へー。男前になったんじゃねえ?前はどっちかっつうと女みてーだったからな。」

「ありがとー。」

ギオンは立ち上がった。

「今、村中に伝達されてるはずだよ。とうとう決行の時が来たってね。」

「そうか。」

アキラの表情がぎゅっと引き締まった。

「今なら心強い味方もいるしね。」

ギオンが金の瞳に笑いかける。

「俺こそ、こんな強力な味方を手にいれられるとは思ってなかった。」

アキラもギオンに微笑んだ。

「これから、よろしく。・・・アキラ!」

「こっちこそ。」

二人はがっちりと握手した。

「トラドシン革命軍とデルタス国軍の連合軍・・・ミラジアリナ政府は果たしてどう対応するか…?」

シンジはにやっと笑った。

と、そこへソプラノの高い声が響いた。

「ギオン!!」

「ヒッ、ヒバリッ。」

思わずあとずさるギオン。

零れそうなくらい大きいこげ茶の瞳。髪の色も黒より少し茶色寄りで、二つにまとめて結い上げ細いみつあみでまとめてある。細い首に銀の十字架のペンダントを下げた少女。年の頃はアキラ(現在15歳)と同じくらいだろう。

「何勝手に決めてんのよぉ!少しくらい相談しなさいよ!」

「わー、ごめん、ごめんよ、ヒバリ~~。」

小さくなって謝るギオン。

「いいわよ。もう決めたんでしょ。」

ぷんっ!

口を尖らせてすねたヒバリ。が、アキラとシンジがいることに気付くと、驚いて表情を元に戻した。

「えっ?誰、この人たち、誰?」

「あれー、言わなかったっけぇ?今回連合組むんだけど。」

「え?まさか、金の瞳ってことは・・・アキリア王子?!?!」

ヒバリは飛び上がった。

「有名人だな、アキラ。」

シンジが横でにやにやしている。

こういう時に王子の称号は邪魔以外の何者でもない。

「本物ー?!」

「うん。でも、いまはアキリア王子じゃなくてアキラなんだ。」

「えっ?よく分かんない?」

「とにかくそうなんだよ。」

ギオンは苦笑しつつ言った。

「あなたがGOLDEN EYES…。噂に違わずお美しいというか・・・。」

さしものエルギールも緊張気味。

でもなんだか形容詞を間違えてるような…

「じゃあ、あなたはシンジさん?」

「ああ。・・・よく知ってるな、俺のこと。」

「…アトラン将軍が第一級危険因子として打ち出した最重要人物ですから。そうですか、あなたが・・・。」

「第一級危険因子?俺が?」

シンジは当惑した面持ちで自分の鼻先を人差し指で指した。

「要するに将来を有望視されてるんです。でも、敵国だから、危険因子・・・。」

「でもなんでその将軍は俺のことを知ってるんだ?」

シンジは首をかしげた。

「それは、アトラン将軍が交魂だからです。」

「やっぱりあいつ交魂だったんだ!」

アキラは思わず叫んだ。

「知ってるのか?」

「ああ。デルタスを攻めてきた張本人だ。」

闇の瞳。おそらく小さい頃から交魂ということで阻害されてきたせいだろう。

「でも、交魂だったらどうして俺のことが分かるんだ?」

「彼はチャクラ(多眼族)の交魂です。能力は・・・千里眼クレアボヤンス。」

「千里眼?」

感覚センス系の技の中ではプレディクト(先見)と並んで最高位に位置します。世界中どこで起きていることも見えてしまうという特殊能力で、少しならば予知の役目も果たします。彼が戦の先を読む知将と呼ばれるのも、その能力があるからこそなのです。」

「じゃあ、俺たちがここにいることも・・・。」

「いや、それは大丈夫。この島にはシールドがはってあるからね。見ようとしても見られないはずだよ。」

「そうか。」

シンジはほっと息をついた。

その様子を見てギオンはにこにこと笑った。

「何だよ。」

「いや、アトラン将軍がシンジを恐れたの、分かる気がするなあと思って。」

「はあ?」

「本当に。頭の回転が早くて、発想が機敏で、実行力もあるし、勇気もある。これほどいいリーダーは他にいないよ。」

「はは、ありがとな。でも、今はそんな事をいってるばあいじゃねえだろ。」

「そうだね。」

ギオンが珍しく表情を引き締めた。

「計画を具体化しよう。」

テミストクレスも合流し、作戦会議が始まった。

アゲハがミラジアリナ全土の地図を広げる。

「この国は、ほとんど地方自治制がないから首都のヴェル=アポートさえ落としてしまえば八割方成功したようなものだ。」

「どうやって王宮まで行く?」

「分散しよう。東西南北、4チームに別れる。一般からも参加する人たちを増やしながら、1週間前後で王宮まで行く。参加人数にもよるけど、そこから王宮を落とすのに一週間かからないと思う。」

「基本はそれでいいと思う。」

シンジはうなずいた。

「デルタス側の6人は必ず分散してほしいな。後はこちらの手勢を振り分けるからさ。」

「あら、私はどっちに入れてもらえるのかしら?」

いつのまにか参加していたキャラが横からを出す。

「キャラは飛べるから、偵察部隊だろ。エルギール一人のつもりだったけど、人員は多い方がいい。」

「分かったわ。」

「そう言えば、飛べるっていうんだったら、コロロの使い魔も…。」

トップでの話し合いが続く。


「ねえ、おうまさん。」

… 何だよ

「何であなたは色が白いの?」

… 知るかっ

全く、何なんだよ、このクソガキは。

リングはまとわり付いてきたサウィーをうざったそうに足でつついて払いのけた。

「サウィーね、知ってるの。びょーきだったおねえちゃん、わるいひとたちにつかまったの。だからおにいちゃんたちが助けようとしてるんだよ。」

… ・・・

「サウィーもおやくにたてるかな?」

黒い大きな瞳でリングを見上げるサウィー。

でもリングはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

… お前みてーなちび 邪魔になるだけだろーよ

「…。」

悲しそうにうつむいたサウィー。

が、次の瞬間にぱっと目を輝かせてもう一度リングを見あげた。

「でもねえ、サウィーねえ、おっきな<まほう>使えるの。サウィーがくるくるパってやるとねえ、死んじゃったひとがうごくんだよお!」

… 死人が動く?

まさか、死者蘇生リバイブ?いや、ありえない。治癒ヒーリング系最高位の妖力がこんなガキに使えるわけがない。

「でも疲れちゃうからあんましやんないのお。」

… お前 光の力を使うのか?

「ひかりぃ?うん、そーぉだよ。サウィー、光をつかえるんだよお!」

嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるサウィー。

… あー すげえすげえ

ぶっきらぼうな口調で受け答えに応じるリング。

一人で騒ぐサウィーをよそに、ふいと空を見上げた。

… あいつ・・・元気かな

どこまでも突き抜ける青い空。

リングの瞳に映った雲は、ゆっくりゆっくりと流れていった。



その日の夜、11歳以上の村民(43人)が集められた。

「だいたい噂で聞いたと思うけど、僕たちは一週間後、ミラジアリナに反旗を翻す。そのために、武器や食料なんかを準備しなくちゃいけない。」

ギオンの声は凛としてよく通る。

「…と、以上が当日までの動きだ。大体把握できたかな?できてない人は、後からもう一度僕たちのうちの誰かから説明を受けること。じゃあ、次の作業。」

ギオンの合図で広場にぴーんとロープがはられた。

「グループ分けするよ。北はエルギールとシンジのチーム。ここは偵察部隊も兼ねてる。西はアゲハとケティ・ベクティさん。南はヒバリとアイコット・ジャフティさん、それとテミストクレスさん。東が僕とアキラとサイファ。本隊は東のチームということにする。人数も一番多くしたい。次に重要なのは北。アルカイダを通るからね。」

リーダー決めは相当手間取った。あまり戦力が集まるのもだめだが、平坦すぎるのも困るからだ。

「まずは行きたい所のグループに入って。その後調整するから。」

ヒバリがそう言うと、ざわざわしながらも43人の子供たちは4つに分かれた。

「うー、バランス悪いっ」

それを見てギオンは思わず声を漏らした。

「本当に。もう少しくらい考えて欲しいわ。」

ヒバリも大きくため息をつく。

「アゲハぁ。調節してくれないかなあ?うまく戦力が分散するように。」

肩にかかるくらいの髪の、清楚な美少女は無言でにっこり微笑むと子供たちの輪の中へと入っていった。

アゲハは生まれつきなぜか声を出すことができなかった。テレパシーを習得してから会話に難はないが、あまりよく話す性格ではない。放っておいても騒がしいケティ・ベクティと同じチームなのは、そのことも考慮してのことだった。

「これに、あと30人ちょっと10歳以下の子供が加わるんだ。」

「本当に子供たちの集まりって感じだな。」

シンジが苦笑した。

「本当に大丈夫なのですか?王子。言ってはなんですが、あまり戦力としての期待はできませんが…。」

テミストクレスが心配そうな声を出す。

「大丈夫。ギオンを信じろって。」

アキラはにこっと笑ってかえす。

「あー。こんなことがウェスタ王に知れたら…ああ、何とおっしゃるだろう。あの方は。」

テミストクレスが頭を抱えている。

「父さんなら許してくれるって。もっともクロークさんはすーっげえ怒るかもしれねえけど。」

「そりゃあ言えてるな。叔父さんは頭かたいから。」

「御心配なさっているのですよ、あの方は。」

テミストクレスが憮然とした表情で言う。

「私だって怒りたい気分ですよ。勝手にミラジアリナに来て、革命軍に荷担して…あー。もう。失敗したらどうするんです?」

「失敗しない。」

アキラがテミストクレスの瞳を見つめた。

「絶対この革命は成功する。」

「…。」

息が詰まりそうな気迫。とても15歳の王子とは思えぬ迫力。

「分かりました。仰せのままに、私もついてゆきます。」

テミストクレスは頭を下げた。

「シンジ。」

「ん?」

「ごめんな、結局また巻き込んじまった。」

「いや、いい。こういうの、好きだし。」

シンジは空を見上げた。

「やっぱり俺、商売やってんの向かないんだよなあ。こういう風に冒険したり、戦ってたりする方が好きなんだ。とてもじゃないが親父の後は継げないよ。」

「あ。そのことなんだけど、お前がいない間に俺の所にティラが来てさ。ティラが、経済のこと勉強したいと言ってきたんだ。」

「ティラが?」

「うん。んで、シンジの父さんに仲介してやって、今シンジの父さんについて勉強してると思う。」

シンジは驚いた顔をアキラに向けた。

「本当に?」

「ああ。お前さ、商売とか嫌いなら王宮に来いよ。お前なら国を動かしていけそうな感じがする。一緒に国、創っていかないか?ティラが変わりに次いでくれると思うぜ。」

「……。」

シンジは呆気に取られたようにアキラを見ている。

「それなら今まで通りだろ?俺とマサキとシンジと。三人でやってくのは。」

「お前…。」

シンジはにやっと笑った。

「いいな、それ。面白そうだ。」

「だろ。」

アキラはにーっと笑った。

実は、ずっと前から考えていた。シンジが国家のために働いてくれること。シンジと一緒なら、やっていける気がする。

「マサキにも言おうと思ってたんだ。帰ってきたら。ティラが相談してくれた時、もうそうする運命だったんじゃないかって思った。…その前にこんなことになっちまったけどな。」

アキラは苦笑。

何でこうトラブルばっかりなんだろう。

「それより…俺こそ謝る。何だかんだ言って…マサキを守ってやれなかった。」

「そんな…もとはといえばマサキの無鉄砲さが原因なんだから、自業自得だよ。」

「いや、でも…。」

シンジはマサキから受け取ったライラの剣を握り締めた。

「それ…。」

「一番最後に会った時に、<使え>って渡された。」

最期に見たのは、心配そうな碧い瞳。

「あいつ…いつも他人のことばっか…気にかけて…。」

シンジはギリッと唇をかみ締めた。瞳が今まで見たこともないほどの怒りを帯びた。強い意志。青い瞳に炎が宿る。

「カラン」

シンジはライラの剣を鞘から抜き放った。

「俺は誓う」

左手の甲に刃を突き立てる。

「シンジ!!」

シンジは刃の切っ先で左手の甲に十文字クロイツを描いた。

「あいつを絶対に取り戻す。」

流れ出す鮮血。

その中でシンジはマサキを必ず助け出すことを心に深く誓った。



少しだけ楽になった。

「ふう。」

マサキはベッドから立ち上がる。窓の外を見ると、少しだけ膨らんだハーフムーンが見えた。

ふとベッドの脇を見ると、ペンダントが落ちていた。

「何だ…?」

拾い上げると、碧い海の色をした石だった。

「奇麗だ・・・」

月の光にかざすと、透き通った青の光がマサキの瞳に反射した。なぜか心が落ち着く。

なのに、今日の夜空を見ていると胸騒ぎがする。

「何だろう・・・。」

何か起こりそうな気がする。でも、不安はない。

マサキは窓の外のハーフムーンを目に焼き付けた。



革命実行日まであと9日…



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